UP FRONT
2007-03-29
3.30「東京ミッドタウン」ついにオープン!“上質な日常”を謳う、都市機能のコラボレーション。最速レストランレポート
2007年、商業施設のオープンラッシュ第一弾がついに始まった。防衛庁檜町庁舎跡地にオフィス、住宅、商業施設などから成る「複合施設」を創造すべく、三井不動産を筆頭とする6社が落札してから6年。想像力や発信力を持ち、憩いの場でもあるNYのミッドタウンにちなみ名づけられた約100ヘクタールの空間は、働く・住む・遊ぶ・憩う・アートという機能を融合させる難しい試みだ。レストランの真価はいかに?全体から追ってみる。(桜沢由紀)
アートの創造の場としての六本木
半径1マイル(1.6km)には40以上の大使館も存在する、アクセス至便な東京のコアエリア。歓楽街やビジネスの街でなく、六本木ヒルズの森美術館、今年1月にオープンした国立新美術館と、今回施設内に移転オープンするサントリー美術館とで「六本木アート・トライアングル」を形成する、インターナショナルな文化とアートの街として再生されようとしている。
サントリー美術館だけでなく、富士フィルム本社の写真ギャラリー「FUJIFILM SQUARE」や、三宅一生、佐藤卓、深澤直人の3人がディレクターとなる、安藤忠雄設計のデザインリサーチセンター「21_21 DESIGN SIGHT」など、アートを育てる場としての機能が充実しているのが特徴だ。今回ミッドタウンはそこに集い、住まう、感度の高い人々へ向けた“上質な日常”を提供することを謳う。つまり休日のテーマパークではなく、何度も訪れるひとつの都市として、新たな創造を生み出すことをコンセプトとしている。
エグゼクティブ向けのホテルやレジデンスは文句なしにトップレベル
施設内のホテル「ザ・リッツ・カールトン東京」は全てのゲストルームが58平方m以上と都内一で、スイート36室を含む248室。施設の中心である「ミッドタウン・タワー」45F〜53Fを占めている。最低宿泊料は7万円近く、最高は300平方mのスイートで1泊210万円という、選ばれし人々のためのラグジュアリーな空間だ。そしてレジデンスは、同ホテルが世界で始めて賃貸住宅のオペレーションを手がける「ザ・パーク・レジデンシィズ・アット・ザ・リッツ・カールトン東京」や、世界最大級のサービスアパートメントを供給しているオークウッドによる「オークウッドプレミア東京ミッドタウン」、ビジネスマン向けの「東京ミッドタウン・レジデンシィズ」の3棟・計517戸から成り、賃料もやはり数十万〜数百万円。六本木ヒルズに追随する希少な高級賃貸物件のマーケットを生み出す。
施設内の東側には檜町公園、その隣には防衛庁跡地から残された140本の高木を残したミッドタウン・ガーデンが広がり、ジョギング・コースも造られている。敷地内の40%をグリーンが占めており、その静寂で広大な庭園を眺めれば、ネオンが眩しい歓楽街のそばとは思えない安らぎが得られるのだ。3棟のオフィスビルと上質な銀座ブランドの商業施設
オフィスはコの字形の3棟から成り、当初疑問視されつつも全室満室という。ヤフーや富士フィルム、富士ゼロックス、コナミ、USENといった企業が移転。ヒルズ族という言葉がネガティブな意味を込めて使われるようになってしまった一連の事件の後、こちらはクリーンな企業イメージを保ちうるオフィスビルとなるか。132店ある商業テナントも、一流かつ高感度なものを集約させた。
ファッションでは、NYの高級ジュエラー「ハリー・ウインストン」や、「クロエ」「ボッテガ・ヴェネタ」「マルニ」、銀座店の坪単価売上は日本最高と言われる高級セレクトショップ「リステア」、パリの老舗紳士服ブランド「アルニス」など、銀座のマーケットを持ち込んでいるのが特徴的だ。またインテリア関連も「Time & Style」や「IDEE」「MUJI」を始め、国内外からファブリックや漆器、箸に至る雑貨店など数多く揃えた。
「TSUTAYA」では全てのCDが視聴可能なほか、今後は音楽ファイルのダウンロードなどネットとリアルを融合させたサービスを展開予定。
アメリカの情報誌、Billboardのライブハウス「Billboard Live TOKYO」も8月にオープンし、多くの著名アーティストの来日を予定している。
日本初出店、料理人の挑戦は成功するか?
“ハレの日”の豪華なレストラン群
では、ようやく本題に入ろう。
32のレストラン&バーと34のフード&カフェから構成される飲食事情は、この複合都市の中でどのように展開しているのか。三井不動産は担当者自らが食べ歩き、入れたい店は賃料を下げて説得したと聞く。住居やファッションと同様、世界から集うエグゼクティブへ重きを置き、新しい業態やシェフのチャレンジの場を提供している。
32のレストラン&バーと34のフード&カフェから構成される飲食事情は、この複合都市の中でどのように展開しているのか。三井不動産は担当者自らが食べ歩き、入れたい店は賃料を下げて説得したと聞く。住居やファッションと同様、世界から集うエグゼクティブへ重きを置き、新しい業態やシェフのチャレンジの場を提供している。
(1)日本初出店
日本初出店となる4店舗では、NYで33年間もの間人々を魅了し続け、「地上の天国」とも呼ばれたインド料理店を復活させた、スタイリッシュな「NIRVANA New York」、フランシス・F・コッポラ監督が所有するカリフォルニア・ナパバレーのワイナリーのワインを味わえる「COPPOLA’S vinoteca」の2つが意外な盲点であった。「NIRVANA」はイタリアのニットブランド「ミッソーニ」の家具を用い、多彩な色使いのイスやカーテンで個性を打ち出す。タイの「コカレストラン」や丸ビル「マンゴツリー東京」を展開するマルハレストランシステムズにより実現した、今までになかったインド料理店だ。
「COPPOLA'S vinoteca」は四方をワインボトルで囲んだトンネルのような通路の先に、流曲線を描いた木目のカウンターが広がる。コッポラワインはナパバレーのワイナリーの中でもその質の高さに定評があり、アメリカでは多くのレストランでお目見えするが、コッポラ自身のプロデュースで初のレストランを仕上げた。
ワンダーテーブルが持ち込んだNYナンバーワンのレストラン「Union Square Tokyo」、ひらまつの日本初コンランレストラン「Botanica」は、そのブランドネームによる期待度の高さから顧客の評価が分かれるところであろう。
(2)若手料理人・山下春幸氏の挑戦に注目
日本から発信する若手料理人の代表は、神戸・元町からの“ジャパン・フュージョン”スタイル「HAL YAMASHITA」山下春幸シェフ。日本酒をよりスタイリッシュに、洋のエッセンスを取り入れた新和食は、客単価としては同等の西洋料理店群 −表参道のピッツェリア「ナプレ」や麻布十番のスペインバル「ミヤカワ」による「Bodega Santa Rita」、スティルフーズ「ROTI」など−より明らかに注目株だ。ガーデンを一望できるテラス席やカウンター席など、内装も申し分ない。当初は14皿18種で5,800円のコースを提供するという同店、成否はこのコースにかかっていると言っても過言ではなさそう。
この他、90年代のイタリアンブームを牽引した西麻布「ダノイ」小野清彦氏、世田谷の中華「SILIN 火龍園」唐朱興氏、そして青山「レストラン・ジョエル」から「cuisine francais JJ」ジョエル・ブリュアン氏も新たな挑戦を試みる。
(3)「山の上」和食の老舗登場、 クリエイターらの「可不可」は?
“文化人のホテル”と称される神田駿河台の山の上ホテルから「てんぷら山の上 Roppongi」、人形町・今半初の業態となる「鉄板焼ステーキ 喜扇亭」、江戸前割烹「淡悦」と並ぶ。中でも「山の上」の登場は食通らを驚かせた。
同フロアには「暗闇坂 宮下」の宮下大輔氏×佐藤可士和氏×ワンダーウォール片山正道氏プロデュース、と業界内で話題をさらった懐石料理「可不可」があるが、老舗に打ち勝つにはやはり料理の完成度も問われるだろう。クリエイターによる食×文化×空間というコンセプトをどこまでアピールできるか。
(4)回転率の高い外苑東通り沿いと地下
外苑東通りに面するゼットンのシャンパンビストロ「オランジェ」や、カフェカンパニーの2フロア・計100坪を越える和バール「A971 GARDEN<>HOUSE」は、オープンテラスで日祝以外は朝5時まで営業と、深夜族が吸い寄せられそうだ。
入口がちょっと分かりづらいが、2F
にあるシンクロニシティ「SALON BAR YOL」はなんと朝9時まで。西陣織のソファや中国・清朝時代のアンティークの扉など、独特のインテリアが角章氏らしいが、企業のパーティや商品お披露目会などの需要に応えるべく設計やディスプレイに細かな工夫がなされている。
入口がちょっと分かりづらいが、2F
にあるシンクロニシティ「SALON BAR YOL」はなんと朝9時まで。西陣織のソファや中国・清朝時代のアンティークの扉など、独特のインテリアが角章氏らしいが、企業のパーティや商品お披露目会などの需要に応えるべく設計やディスプレイに細かな工夫がなされている。
ソルト・コンソーシアムの巨大フードコート「OKAWARI.JP」やCPCセンターのガストロパブ、シドニースタイルの「yao_ESTAbLISH」といった、オフィスワーカーのランチや帰りがけの1杯を提供する場は、地下に集合する。フードコートはペストリーやベーグルから中華、和食まで幅広く揃い、ガストロパブはDJブースを擁してグルーヴィな社交の場と化す。「上質な日常」とは?そしてここが発信や創造の場となるか?
これぞ“上質な日常”と言いたいが、ミッドタウンのレストランは多くの人々にとっては非日常の世界だ。前出したハレの日レストランもオフィスワーカー向けレストランも、六本木という街で“(裕福な)外国人に受け入れられる”業態や空間を打ち出す必要があった。そして新たな発信を要する施設において、純然たる日本人がホッとする、ベタな日本の居酒屋スタイルや定食屋スタイルなどは切り捨てられてしまった。保守的な趣は新しいもの好きな日本人にも受け入れられ難い。しかし各レストランの料理も空間も、アメリカン・スタンダードに傾向しすぎた感もある。日本酒や焼酎より、ワインを飲める店の方が圧倒的に多い。
格差社会が広がりつつある日本において、高所得者層のミーハー心はしっかり掴んだであろうこの集合体、胸を張って「日本の最先端だ」と世界に発信することを、善しとするかどうか。発信や創造でなく、単に消費で終わらないかどうか。
ここで本当の日本人の感性と価値観が問われる。
とはいえ、ヒルズと並ぶ巨大商業施設は、当面煌きが褪せることはなさそうだ。
【施設概要】
名称;東京ミッドタウン
所在地;東京都港区赤坂9-7-1
敷地面積;約68,891平方m
地区計画面積;約102,000平方m
延床面積;563,801平方m
(内、商業面積 約70,993平方m(132店))
デザイン;マスタープランデザインアーキテクト SOM
ランドスケープデザインアーキテクト WDAW Inc.
商業デザインアーキテクト Communication Arts, Inc.
統括設計・監理;日建設計
施工者;竹中・大成建設工事共同企業体、大成・竹中建設工事共同企業体
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