UP FRONT

2005-11-17

神楽坂が熱い!
神楽坂の今と最新飲食店事情

花街としての歴史が培った古きよき日本の伝統が街の至るところに色濃く香る、独特の魅力を携えた街、神楽坂。ここ数年、その神楽坂の表情が徐々に変わり始めている。カギは近隣で続々と進む再開発にありそうだ。開発の波と波長を合わせるように、メインストリートである神楽坂通り沿いには大手資本のチェーン店が増加、逆に神楽坂通りから一本入った裏路地には個性溢れる飲食店があちこちに急増している。話題の飲食店や施設、神楽坂を知る人々にスポットを当て、神楽坂飲食事情の旬を探った。

■『かぐらむら』編集人に聞く神楽坂の今


『かぐらむら』編集人
長岡弘志氏

石かわ

石かわ

器 うす沢

器 うす沢

こまち

こまち

HAP

HAP
『かぐらむら』編集人 長岡弘志氏

いま、神楽坂に何が起きているのか。神楽坂情報誌『かぐらむら』を発行している発行人、長岡氏に、神楽坂の現在をお聞きした。

高層マンションが建ち、人口が増加中

最近、神楽坂やその周辺の人口は新築マンションが建ったことで急増しています。平成15年に神楽坂5丁目に建った総戸数276戸、地上26階の都内でも最大級の高層マンション「アインスタワー」がよい例です。付近には他にも多くのマンションの計画が進んでいますが、これまでの神楽坂の変遷を見る上で、節目節目に再開発があったことは間違いないようです。

交通の便もよく、治安もいい
さらに、神楽坂3丁目付近の東京理科大学の大規模開発など、神楽坂には今後も大小様々な開発が控えています。そもそもここは飯田橋駅と合わせると地下鉄が4系統乗り入れる交通の便のよい街。大通りから少し路地に入れば静かな住宅街が広がり、街の雰囲気は落ち着いている。さらに治安もいいとくれば、開発ブームになるのもある意味、当然のことと言えます。

その一方で、文豪たちが愛した洋食屋「田原屋」、江戸時代創業の老舗酒屋「万長」など百年を超える老舗が姿を消しています。名物が消え、その代わりに近年では資本のある大手チェーンが展開する飲食店やドラッグストア、コンビニが神楽坂通り沿いに目立ち始め、確かに街の表情は変わりつつあります。

大通りには大手チェーン、路地には個人開業者

家賃が高騰した大通りに反して、路地、横丁、脇道などには個性的な小さな店がかなり増えています。個人経営の店、中でも特に女性オーナーの店が目立っています。ありきたりの価値ではなく、自分のセンスを全面に押し出した店が少なくありません。飲食店も多いのですが、特に大久保通りの北町周辺は、自分の好きな作家の器だけを並べたギャラリーや蜂蜜の専門店など、こだわりの専門店が目立っています。ギャラリーをはじめ、ここ4、5年で街の周辺は相当変化しましたね。また、大久保通りから牛込中央通りにも、個性的な飲食店ができ始めています。最近では江戸川橋近くにできる新築マンションにも「神楽坂」という名前がついたりしているようですから、「神楽坂」ブランドが付近のエリアに拡散している印象を受けます。

長岡氏が注目する飲食店、ギャラリー

最近、注目している飲食店を挙げるとすれば、まずは割烹の「石かわ」。まだオープンして2、3年の16席ほどの小さな店ですが、40歳ちょっとの石川氏の気合が十二分に伝わるお店です。出版関係者や食通の間に根強いファンが多い店として注目です。骨董バーの立ち飲み店「時代屋TIMES」やモダンアートとワインが楽しめる「HAP」など、ギャラリーと飲食店が融合した店舗も新しい傾向です。ギャラリーでは大久保通り沿いの「器 うす沢」、蒔絵作家がオーナーの「こまち」などが注目です。

町並みを守ろうとする動きも

いま、神楽坂には町並みを守ろうという動きがあります。東京都の条例では路地は消防車が入れるよう4メートル以上なくてはなりません。しかし、それでは神楽坂らしい貴重な財産である路地は残せない。そこで、例えば特区に認定してもらい、昔からの路地を残すことでこの町並み、景観を守ろうという動きがあります。様々な開発が進んでもこのような動きがある限り、そう簡単に神楽坂の街の魅力が変わってしまうことはないだろうと考えています。

『かぐらむら』
平成13年の2月に発行し始めた神楽坂情報誌。発行は隔月刊。インターネットでも街情報を発信している。最近、媒体に対する注目度が日に日に上がっているとのこと。


■[ TOPIC 2 ] 神楽坂・最新注目店チェック

南と北でキャラが二分化?
神楽坂・最新注目店チェック


神楽坂は大きく分けて南北の二つのエリアに分けられる。飯田橋駅近くの外堀通りから神楽坂通りを上がり、大久保通りとぶつかるまでの南側エリアと大久保通りから赤城神社付近にかけた北側エリアだ。二つのエリアで注目の飲食店を見ていこう。


石畳の狭い路地

本多横町

ZIO

HAP外観

HAP

鳥居横にある赤城亭

赤城プロジェクト
大里幸生氏
南側エリア

神楽坂通りを上り、右側の路地に入ると石畳が敷き詰められたいかにも神楽坂らしい場所が見えてくる。ここには六本木のホテルアイビス2階から移転した「イタリアンZio」が11月にオープンしたばかり。さらに先にすすむと「神楽坂SHUN・本家」が見えてくる。同店は文商事株式会社が経営するSHUNブランドの1号店。同社は他にも「神楽坂SHUN・分家」「神楽坂SEASON DINING SHUN」、「馳走 紺屋」「神楽坂茶寮」と神楽坂で5店を展開する神楽坂に基盤を持つ外食企業の代表的存在だ。料亭だった物件を生かした店づくりが話題となり、どの店舗も人気を博している。
神楽坂通りを進むと神楽坂のランドマーク、毘沙門天が見えてくる。11月、この毘沙門天の向かい側に新しい飲食ビルが建った。地下1階から5階までが飲食店になるが、2階にはカレーうどんで知られる「古奈屋」が12月にオープンする。ワインとともにカレーうどんとスープカレーの両方が楽しめる新業態の古奈屋がお目見えする。その他、順次店舗がオープンする予定というから注目だ。
神楽坂通りを右に曲がった本多横町沿いにも思わず気になってしまう飲食店が少なくない。その代表が住宅を改装したダイニング「MASU MASU」。経営するダディーフィンガーは他にも「ろばた肴町五合」、まぐろのしゃぶしゃぶが味わえる「しゃぶ屋」を神楽坂で展開しており、注目だ。
また 、毘沙門天裏にも伊豆のホテル「海」が経営する「うまい魚海」をはじめ、数店の飲食店が入るビル神楽坂館ができている。どちらかと言えば、神楽坂通りの右側が注目を浴びていたが、この左側にも個性的な店舗が増加中と言えそうだ。

北側エリア

大久保通り沿いを渡りさらに北に上がると北側エリアになる。大久保通り沿いにはこの9月、「ジンギスカン専門店 麻布羊屋」店が開店している。11月には南側エリアの神楽坂通り沿いにも「究極の生ラムジンギスカン やまじん」もオープンしているから、粋な町にもジンギスカンブームの波がやや遅れて押し寄せているようだ。
通り沿いの右側には、八王子で高級料亭を経営する株式会社名和商事が9月にオープンさせた「時代屋TIMES」がある。立ち飲み店ながら、オーナーの趣味で集めた骨董品が店内を飾り、どこか神楽坂らしさを感じさせる。さらに上へと足を進め、右側の路地に入ると、11月21日にオープンするワインと和食とアートをコンセプトにした「HAP」が見えてくる。同店は花王でハウスデザイナーを務めていた小嶋佳子氏がオーナー。ワインに合う和食とこだわりのワインリスト、そして築40年の民家を改装した店内に飾るモダンアートがウリとなるようだ。さらに奥に進むと、こちらも民家を改装した和カフェ「KADO」が見えてくる。昼間はカフェでありながら、夜は土間が立ち飲みスペースにもなるユニークな店舗である。このエリアには小さなギャラリーが増加中で、南側とは違ったキャラクターを持ちつつあるようだ。
北側のランドマークは赤城神社。この赤城神社内にもユニークな飲食店がオープンしている。日本古式の神饌(お供え物)料理が楽しめる「赤城亭」だ。オーナーであり、赤城神社を中心に日本文化を見直すカルチャープロジェクト「赤城神社プロジェクト」の代表である大里氏に同店を開いた背景を聞いた。
「普段、私たちは神社とはほとんど縁のない生活を送っていますよね。しかし、もっと多くの人にとって神社が身近な存在になり、この赤城神社とこの地域を活性化させることができたらいいなと考え、赤城神社プロジェクトを立ち上げました。赤城神社の宮司とは昔からの古い付き合いだったんですよ。まずは木を植えるなどして境内を整備しました。それに加え、これまで長い間フランス人に貸していた一軒家があったのでそこで飲食店を開こうと考え、『赤城亭』をオープンさせました。
現在、境内では落語会や雅楽など、いわゆる江戸情報を発信するための様々なイベントを開催しています。神社にはそもそも細かい戒律がないですから、やろうと思えばなんでもできるんですよ。日本人が忘れかけたことを思い出し、寄り合いの場としてこの赤城神社が認知されていけばいいなと思っているんです。そもそもこの北側のエリアは、南側に比べ、あまり活性化していなかったエリア。赤城神社は神楽坂の奥座敷のような存在。将来は、ここが高齢者の方々にとってのスタバになればいいなと考えているんです。かっこよい溜まり場ですね。境内というステージはすでにありますから、ここからいろんな価値を発信していきたいですね」

商業エリア的な発展を遂げる南側エリアとは一味違った"文化的な発展"を遂げようとする北側エリア。北側と南側でそれぞれの個性が発揮され、より神楽坂が魅力ある街になっていきそうだ。

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