INTERVIEW

2006-09-28

和食の新業態「銀座大野」の開店で注目されるオザミワールド。 10周年を迎える来秋には、パリへも出店予定 株式会社オザミワールド 代表取締役・丸山宏人氏

「遅れてすみません」シャネルのネクタイをさらりと締め、胸ポケットにピンクのチーフをのぞかせて登場した丸山宏人氏。上質で、清潔感があり、モダン。8月21日にオープンした日本料理店「銀座大野」の印象と相通じる、清新な紳士だ。

丸山氏の願望がきっかけとなった日本料理店「銀座大野」
 
丸山氏が経営するオザミワールド株式会社は、「オザミデヴァン」を皮切りに、「ヴァンピックル」、「オザミトーキョー」、「ブラッスリーオザミ」とフレンチを中心とした業態を増やし、2005年には、それまでの店とはワインの提供スタイルを変えたスペインバール「バニュルス」を開店。「銀座大野」は、オザミワールド株式会社が初めて挑戦する和食業態である。
 
 「4年前から構想していました。和食を食べに行っても、自分の好きなワインを置いている店は、ほとんどありませんでしたからね。好きなワインを飲みながら和食を楽しめる店が欲しい、そんな願望からスタートした店なんです」
 
 料理長は大野敏彦氏。日本料理研究会で田中吉郎氏に師事し、伝統的な懐石料理を学んだ人物だ。二人の出会いはパリ。日本のフランス料理店を辞め、渡仏して勉強していた丸山氏は、「世界の視点で日本料理を見つめ直したい」と日本を離れ、パリの日本料理店で働いていた大野氏と出会った。今から15年前、オザミワールドが設立される前のことである。
 
「僕は結婚して夫婦で渡仏したし、ビザもないしで、お金は全然ありませんでしたよ。大野さんの家へ行って、グランヴァン(高級ワイン)を見つけては、飲ませてもらってましたねぇ…」丸山氏が大野氏と懇意になったのは、大野氏の料理がきっかけ。彼の作る料理はどれもおいしく、伝統的な純和食であることに丸山氏は惹かれていた。この「銀座大野」の料理長は彼以外に考えられなかった。看板に「大野」の名を冠したことにも、丸山氏の信頼性がうかがえる。
 
 
 
オザミワールドが提案する和食店とは
 
料理は6,300円、8,400円、12,600円の3コース。オープン時は2コースであったが、その後6,300円のコースを加えた。
 
 「銀座の懐石和食店とはいえ、8,400円、12,600円のコースだけでは、アッパーな印象を与えてしまうかと思って。これまでのオザミファンのことを考えると、既存店と似た価格設定をしたほうがこの新しい店に親しんでもらいやすいだろうと、6,300円のコースを新設しました」
 
 21時以降は基本的にアラカルトを中心とし、気軽なワインバーとしての利用を提案している。 
 
 ワインは約200種。和食に合う白をメインとし、鶏や牛の肉料理に合う赤も用意している。 価格は4,000円〜。グラスワインは白3種類800円〜、赤4種類800円〜。
 
 「アルザス、シャンパーニュ、ブルゴーニュといった、フランス北部のものが多いです。完熟味と酸味が、一本筋の通った和食のダシとよく合うんですよ。ビオワインもあります」
 
 和食と合わせるワインは徹底的に考え抜かれているが、いわゆるマリア−ジュコースのように、料理ごとに合うワインを提案することは考えていない。「ワインを飲まなくてはいけない店」とお客に思わせたくないからである。純和食を楽しむ傍らに、さりげなくワインがある店…これが丸山氏の考える、オザミワールドらしい和食店の姿だ。
 
 
 
イメージと合う物件をとことん探し、生まれた各名店
 
 オザミワールドの店舗は、東京と名古屋に9店舗。東京の店舗は、丸の内と銀座に集中している。
 
 「このエリアに特にこだわっているわけではなく、自分のイメージする店をつくれる物件を求めた結果、そうなりました。物件探しはいつもしています。店づくりがスタートできるのは、自分のイメージと合致する物件が見つかったときですね」
 
 自分のイメージ、自分らしさを大切にする丸山氏。そのため、店舗は路面店が必然的に多くなる。「施設の個性に左右されて、自分らしさがなくなってしまうような気がするから」と、商業施設への出店には控えめな姿勢だ。
 
 「銀座大野」は構想4年。暖簾をくぐり、引き戸を開けると白木のカウンターが迎えてくれる店。純和風の正統派な印象でありながら、どこか家庭的な雰囲気を生み出したかった。
 
 「私の場合、店舗づくりにおいては、自分の描くイメージを限りなく表現します。デザインするのは自分です。デザイナーまかせにはしません。私のイメージを設計図に落とし込んでくれるのが、設計者。「オザミトーキョー」以来、彼とタッグを組んでいます」
 
1つ前の業態である「バニュルス」は、訪れたスペインで出合ったバルのように、陽気にワインを飲んでほしいと発想した店だ。構想から開店までに5年もの月日を要したのは、一度決まりかけた物件があったものの、それが白紙に戻ったため。「本来なら、もっと早くオープンできるはずだった」と、悔しそうに語る丸山氏。しかし、オープンを急ぐあまり、物件選びを妥協しては、いい店はつくれない。レストランが生まれるのは、店舗イメージ、物件、タイミングが一致したときなのである。
 
 
 
パリ出店や社内整備…10周年を迎えた経営者のけじめ
 
 フレンチの4業態、スペインバールに次ぎ、和食業態を加えたオザミワールド。来年は、オザミワールド株式会社の前身である有限会社ペデスの設立から10年を迎える。
 
 「10周年のけじめとして、2007年秋、パリ出店を予定しています」
 
パリで学び、フランスワインを核とするレストランづくりを続けてきた丸山氏にとって、パリ出店は、10年間の集大成ともいえるのだろう。準備は着々と進んでいる。
 
 パリ出店の前には、都内でもブラッスリーを出店予定だ。これまで中心であった丸の内・銀座から離れ、新たなエリアでの構想を進めている。また、「銀座大野」を基盤とした、新たな和食業態も模索していきたいという。いずれも共通するのは、流行に左右されない、息の長い店。ロケーションや雰囲気の印象が強く残る、いわゆるテーマパーク的な店とは無縁だ。店の主役は料理。おいしい料理と吟味したワイン、心地よいサービスでお客を喜ばせる店づくりは、店舗がいくつ増えようとも変わらない。
 
丸山氏がどんな事業展開を進めていくのかに注目が集まる一方だが、氏は社内の環境整備に尽力したいと語る。
 
 「がんばっている社員たちのために、オザミワールドを働きやすい組織に変えたい。大手レストランなどを見習って、社内の制度や体制を整えているところです。今年から休日を増やしたり、健闘賞制度を設けたりしています。オザミワールドの社員は、現在75名。彼らが一生働き続けられる環境をつくることこそ、自分の使命。経営者の仕事は、事業拡大だけではないと思います」
 
 経営者としても、自分らしさを発揮し、社員を大切にする丸山氏。これからも、スタッフによる心地よいサービスで満たされた店が生まれていくのだろう。
 
 
 
 
◆プロフィール
 
丸山 宏人(まるやま ひろと)
 
1963年、東京・立川生まれ。1997年に前身である有限会社ペデスを設立、2002年にオザミワールド株式会社へと改名。初出店は、1997年9月開店のレストラン&ワインバー「オザミデヴァン」。その後、フレンチバーベキューをコンセプトとした「ヴァンピックル」、丸ビル35階の「オザミトーキョー」、パリのカフェを意識した「ブラッスリーオザミ」、スペインバール「バニュルス」を立ち上げ、今年8月「銀座大野」の開店によって、東京・名古屋で6業態・9店舗の経営者となる。来年は会社設立10周年。その節目としてパリへの出店を計画中。社員からは「ムッシュ」と呼ばれ、慕われている。
 

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