INTERVIEW

2006-08-15

IT業界から飲食業界へ 人間らしい、リアルな愛ときっかけを生み出す場を提供する 株式会社Zeel代表取締役・西麻布「Birth」オーナー 尾関 茂雄氏

2004年6月、西麻布に生まれたダイニングバー「Birth」。ある時はテレビにも数多く取り上げられ、許可が得られた人のみが入れるVIPルームには、芸能人が数多く通うと噂された。しかしオーナー・尾関氏に話からは、そんな下世話な噂とは全くレベルの異なる、純粋で真摯な想いを伺えた。

尾関氏は1999年、それまでいたネットベンチャーを退社し独立、株式会社アクシブドットコムを創業する。同社を自らバイアウト(企業売却)後、2004年に株式会社Zeelを創業する。同年6月には、西麻布のダイニングバー「Birth」のオーナーにも就任した。IT業界から飲食業界へ −一見、不思議にも思えるが、ITというバーチャルな場を作り上げる中で、IT起業家たちが集まるリアルな場を運営したい、と思ったのがきっかけだという。尾関氏が独立した1999年頃には、IT関連のベンチャー企業が集まる渋谷を「渋(=Bitter)」と「谷(=Valley)」を併せて「ビットバレー」と呼んでいたが、次第にIT・ベンチャー企業は2003年にできた六本木ヒルズに移っていく。翌年に、西麻布という土地に「Birth」を誕生させたのは、その意味では非常によいタイミングだったと言えるのかもしれない。
 
 
“愛ときっかけが生まれる場”に
 
店名の「Birth(=誕生)」という名の通り、コンセプトは「愛ときっかけが“生まれる”場にしたい」という想い。「愛ときっかけ」とは、別に男女の恋愛に限ったことではない。新たなビジネスの出会い、仲間の誕生日を祝う気持ち、新しい出会いや気遣いが生まれる場という意味だ。客層は30代が中心。男女比は半々で、女性同士のお客も多い。内装はホテルのラウンジ。全体的に、中東・モロッコ風のインテリアだが、VIPルームはもう少しゴージャスに、赤いカーテンとソファでテーブルが仕切られている。「2人」よりソファで大勢で、「出会い」を生んで欲しいからあえて個室ではなく、さりげなくカーテンで仕切るのだ。
 

面白いのが、VIPルームに入るには、尾関氏との面接が必要という点。面接と言っても大そうなことをする訳ではなく、単にどんな人なのか、会って話してみるのだという。現在会員は30〜40人程だが、皆来店する時は大勢か、2〜3人。お客様がいつ、何人で来られても、必ず座れるようにしておく、というのがこのVIPルームのモットーだ。今年2月には、16名が入れる個室のカラオケルームも併設した。

 

料理はフレンチを中心に、色々なエッセンスを加えた創作料理が揃う。牛テールの煮込み、有機野菜、ベーグルとバター、お客様に好評な手打ちうどんもあれば、VIPのお客様のオーダーなら何でも応じる。フランスのショコラティエ「パスカルカフェ」のトリュフを1粒からオーダーできたり、恵比寿のカリフォルニア料理店「cabana」の濃厚なレアチーズケーキを、同店から直接仕入れている。理由は「美味しいから」。自分が美味しいと思うもの、お客様の欲するものを取り入れてメニューにしていくという、素直で自由な発想だ。
 
 
さまざまなイベントとサプライズで、お客様に楽しんでもらう
 
「Birth」を更に人々に愛される店にしているのが、店長・宮永氏を始めとするスタッフの“愛のある”接客と言えるだろう。宮永氏は尾関氏と意見を交わしながら、様々な新しい試みを積極的に行っている。まずは、お客様の仲間うちのお誕生日会。幹事と事前に打合せし、サプライズ満載のサービスをとことん行う。お客様の誕生日を素晴らしい日にしていただこう、という精神はもはやプロ。スタッフ全員が、Birthday Plannerという肩書きを持つ。だからこそ数多くのお客様がリピーターとなり、再びお誕生日会を「Birth」で開くのだ。詳細は教えて頂けなかったが、筆者が少しお伺いしただけでも、自分の誕生日にそこまでされたら本当に嬉しいだろうな、と容易にイメージできた。
 
そして今年から、月1回の立食パーティ「CALIENTE(カリエンテ)」を実施。こちらはその月に誕生日の人をまとめてお祝いしよう、という企画で、様々なグループが集まり、そのグループ同士の出会いの場となるよう工夫している。多いときは90人も集まっている。
 
女性客や経営者に人気のもう1つのアクセントは、占い師が週4日来店し、予約制で20分3,000円から、各自の手相や易占いを見てもらえるというサービスだ。占いを楽しみに通う女性客も多く、企業家も自分の会社の今後を占いに来る。ニーズにぴったりと合ったこのようなサービスを、もっと増やしていくことを考えている。単に食事をする、会話をする、というだけの場でなく、プラスアルファの何かが生まれる場にしていくのが、Birth流と言えるだろう。
 
 
「Birth」沖縄店が8月・名護にオープン!
 
実は尾関氏は、さらに大きな夢を企てている。自ら沖縄に出向き、関係者たちと計画中なのが、60万坪の土地を街として開発するというプロジェクト。自給自足の生活を営み、様々なジャンルの人が集まる場所にしたい。将来、人々が「こんな街に住みたい」と思えるような空間を生み出す。そしてその土地に、「Birth」2号店となる沖縄店を誕生させるべく、現在ボランティアで募ったスタッフが基礎工事に取り組んでいる。ZeelでファッションのECサイトを立ち上げ(衣)、Birthでダイニングバーをオープン(食)させた尾関氏の目指すところは、「住」-ホテルや家を作ることだという。西麻布の「Birth」ではこのプロジェクトにちなんで、毎月第三日曜に「いちゃりばちょうDay」(沖縄の言葉で「行き合えば兄弟」という意味)として、沖縄料理と泡盛、そして東京にいる沖縄出身の人々と本土の人々との交流、相互理解を深めるイベントを行っている。
 
 
3年目を迎えた「Birth」と尾関氏の展望は
 
「2年間、飲食業というサービス業に携わり、ホスピタリティや愛のあるサービスとは、人間の一番大事な部分を試されることだと分かった。ITはロジックがメインとなるが、例えばファッションはロジックでは説明できない“感覚”が大事。飲食業もそれと同じで、『サービスがいいから行く』と言ってもらえる、愛されるお店にしたい。ここにしかないものを生み出していきたい。今も週2~3回、リアルなものに投資したいと考える投資家たちと、まだ小さいベンチャー社長を集めて、シリコンバレーカフェのような場にしている。」
 

東京での店舗展開は考えていない、という。10年後になくなってもいい、あの店はよかったと人々に語り継がれるような店にしていきたい 自らの名刺に「代表取締られ役」と記載し、ブログは「お気楽、極楽日記」と名乗る。そんな尾関氏の、物腰やわらかで肩肘張らない、そして自分の求めるものに素直に忠実に、徹底して取り組む姿勢が、数多くの友人を呼び、魅了し、このお店を愛で満たしている。

■プロフィール

尾関 茂雄(おぜき しげお)
1974年生まれ。専修大学法学部卒・早稲田大学大学院経営管理学修士卒。サイバーエージェント、ネットエイジを経て1999年、アクシブドットコムを創業。2003年同社をバイアウトし、2004年1月株式会社Zeel創業、現在も代表取締役。同年6月に西麻布「Birth」開店、オーナーに就任。
■店舗データ
店名 Birth(バース)
住所 東京都港区西麻布2-24-12 B1F
電話番号 03-3486-0330
営業時間 19:00〜4:00 無休
URL

http://www.e-birth.jp/

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