INTERVIEW
吉祥寺のハモニカ横町を面白くする仕掛け人、
「ハモニカキッチン」名物社長・手塚一郎氏にインタビュー!
いまや吉祥寺の代名詞となっているハモニカ横町。戦後のヤミ市の匂いを色濃く残す迷路のような狭い路地には昔ながらの魚屋や洋品店に混じって、おしゃれなカフェやスタイリッシュな立ち飲み屋が軒を連ねる。横町内に輸入雑貨・家電の「VIC」や「FOOD LABO」、飲食店「ハモニカキッチン」「ヤキトリてっちゃん」などを展開する株式会社ビデオ・インフォメーション・センター社長、手塚一郎氏に話を聞いた。
「VIC」から「ハモニカキッチン」へ
そもそもビデオ・インフォメーション・センター(VIC)は手塚氏が国際キリスト教大学在学中の1972年、学生によるビデオの情報センターとして設立した。「当時は大学紛争のまっただ中。国際キリスト教大学では他大より2年ほど早くその波が訪れていました。対立する学生と教師、それぞれの言い分をインタビューし放送するという学内テレビ局をつくったのが始まりです」と手塚氏は話す。1979年には日本初となるビデオ機材、メディアソフトの販売店をオープン。ソニー社製を中心とするビデオ機器の販売とともに、機材のレンタル・ビデオ撮影や編集を手がける。手塚氏自身も70、80年代の若者の芸術のムーブメントであった“アングラ演劇”や“前衛舞踊”などの記録映像を数多く撮影(映像は世田谷パブリックシアターに寄贈)。
そして1981年には株式会社ビデオ・インフォメーション・センターを設立。現在、吉祥寺に8店舗、下北沢に2店舗を展開する。「1995年あたりから情報機器の市場は成熟期を迎え、ビデオデッキも一万円を切るなど価格競争も激化してきました。次々と消費されていくものにつまらなさを感じるようになっていったんです」。手塚氏の思いは「ハモニカキッチン」オープンへと向かっていく。
横町に「青山的カフェ」という意外性!
飲食店への着目は早かった。「カフェ」という概念すらまだなかった1995年。20代女性の漠然とした感覚的希求でしかなかった「カフェというムード」(手塚氏)をいち早くとらえている。「カフェというムード」とは、「ユックリ」できて「甘いもの」や「コーヒーと軽い食事=カフェメシ」がある「ママゴトのような空間」を求める気分だという。「カフェというムード」の具現化として1998年、ハモニカ横町内のVIC2号店(テープショップ)2階に「ハモニカキッチン」をオープンさせる。当初は週末(金・土・日)限定の営業だったという。メニューは手塚社長の“趣味”と“好み”と“直感”により和・洋・中・エスニックなんでもあり。
横町という独特のレトロ感に、青山・表参道的なおしゃれさが同居するという意外性に若者は敏感に反応した。「青山や麻布では当たり前のことでも、この横町でやれば面白いと思われるんです」。ハモニカ横町は魚屋に並んでバーがあり、おしゃれな外国家電屋と洋品店が軒を分けるという、リアルなフードテーマパーク的空間となっている。
「格差」を肯定することの意味
手塚氏は言う。「最近“格差社会”という表現をよく耳にします。その文脈で“格差”という言葉は一種の悪のようにとらえられています。しかし本来“格差”の中からしか面白いものは生まれないと思うんです」。新しいものと古いもの、若者と老人、日本的なものとインターナショナルなもの、作られたものと作られないものといった二つの相反する価値観を常に想定しているという手塚氏。その思惑通り横町内の立ち飲み屋「てっちゃん」では今どきの若者が焼くヤキトリを、仕事帰りのサラリーマンや商店主、地元のお年寄りが思い思いの酒を片手に頬張るという景色が日常化している。
キーワードは「分かりにくいからこそ消費されない」
「ハモニカキッチン」「ヤキトリてっちゃん」「カフェモスクワ」など、手塚氏の手がける飲食店はシンプルで分かりやすい。「商い」はできるかぎり“お客さんに分かりやすく簡単であること”を心がけているという。しかしハモニカ横町は分かりにくい。うかつに足をふみ入れると、迷子になったような気分を覚えるだろう。「分かりにくいからこそ飽きられないし、消費されないのではないでしょうか」と言う。“横町”という空間的な分かりにくさに、既存の生活感、そして手塚氏が提案していく新たな価値観がごく日常的に同居していることによって複雑さが増している。その「混沌とした空間」が他にはない独特の魅力として、人々を引きつけているのは間違いないだろう。
地元を巻き込んでさらに進化していく「ハモニカ横町」
「この横町は“作られたあとの残骸”のような場所なんです」。ハモニカ横町はもともと戦後のヤミ市として誕生し賑わった土地。それが国鉄民営化に伴う吉祥寺駅の駅ビル化や大型デパートの出店によって規模は縮小。いま現在商売を続けている個人商店も経営難・高齢化によって順次閉店を余儀なくされている。手塚氏の店舗展開の基本には、そのような商店主とともに、「新しい価値観を持ったコミュニケーションの場」を作っていきたいとの思いがあるようだ。近々、横町内の閉店した婦人服屋の跡(写真)、1.5坪という極狭の土地にローストチキンの店「ポヨ」を、さらにはスペインバル「モスクワ」をオープンする予定だという。手塚社長が仲間と青春を過ごした町・吉祥寺。その仲間と若者たち、地元の人々を巻き込んでハモニカ横町の進化は続いている。「小さな混沌は大きな混沌で乗り越える」という座右の銘そのままに、手塚社長は“永遠のアマチュア精神”で軽やかに挑戦を続けていく。
社名;株式会社ビデオ・インフォメーション・センター
住所;東京都武蔵野市吉祥寺本町1—1—2
電話;0422-21-7849
【店舗一覧】
ハモニカキッチン
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-1-2
ヤキトリてっちゃん
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-1-2
ヤキトリ¥105〜 お酒¥315
MISHIMA カフェ
東京都武蔵野市吉祥寺南町1-17-9
カフェモスクワ
武蔵野市吉祥寺本町1-2-3 SOCO 2F
外国家電ホームページ
:http://www.gaikokukaden.co.jp






