INTERVIEW
2005-10-27
「フルトシ」古里太志が動き始めた!
「フルトシ」古里太志が動き始めた!
11月15日、銀座8丁目新ホテル内に「SKY」をオープン。
「街場」が挑む「ホテル」のメインダイニングとは?
グローバルダイニングから独立、西麻布に「Furutosi(フルトシ)」をオープンさせた古里太志氏が、昨年秋から再び動き始めた。銀座8丁目に開業する「三井ガーデンホテル銀座」内に11月15日、自身3店舗目となるレストラン「SKY」をオープンさせる。麻布十番の「Pacific Currents(パシフィックカレンツ)」以来、4年ぶりとなる新店で「街場の人間として日本のホテルに新しい風を吹き込みたい」と古里氏は意気込む。オープン準備が着々と進められる中、東京都心の風景を眼下に見下せる16階のフロアで、新たなチャレンジについて話を伺った。
■「三井ガーデンホテル銀座」開業
もちろん、16階のホテルのレセプション横にできるメインダイニング「SKY」も、同氏によってデザインされた空間だ。取材を行ったのは、オープンまで約1ヶ月に迫った10月中旬。さすがにテーブルやイスはまだ設置されていなかったものの、20坪の新しいキッチン内では、すでにキッチンスタッフが試行錯誤を始めていた。飲食店の開業時はオープン前日までバタつくのが一般的。しかし、この“あり得ないほど”の順調さを見ると、やはりホテルのメインダイニングは何かが違うと感じさせてくれた。 ■銀座を見下ろす16階に「SKY」をオープン 編集部: 新しいチャレンジが始まったという印象ですね。 古里氏: なんといってもホテルのメインダイニングに“街場の店”が入るんですから。これまで前例がなかった新しい試みと言えるでしょうね。 編集部: まず、全体の空間構成から、教えていただけますか。 古里氏: ホテルのレセプションのある16階には一階から直行エレベーターで上がります。「スカイ」はレセプションと同じ16階、ロビーの隣にオープンします。まず、エントランス付近は食前酒を楽しんでいただいたり、バーとしてご利用いただけるラウンジスペースになります。カウンター席は4席のみで基本的にはスタンディングでご利用いただきます。バーカウンターの奥、都心を見下ろせる窓際がテーブル席、ソファ席を配置するメインダイニングになり、一番奥のスペースがプライベート感のある空間でブラックシャンデリア、ボックス席を設置した約30名までご利用いただけるスペースです。そのほか、10名の半個室席を2つ設置し、席数はトータルで120席、広さは120坪です。 編集部: ホテル同様、インテリアはリッソーニ氏によるデザインですね。 古里氏: 様々な面でコミュニケーションを図りながらデザインしていただきました。ブロンズガラスを用いた直線的なデザインが一番の特徴と言えるでしょうね。黒を基調にデコラティブな要素を廃した、至ってシンプルでモダンなデザインに仕上がりました。リッソーリ氏ならではのミラノらしいデザインですね。ブロンズグラスは、ラウンジに設置したDJブース、計600本貯蔵できるワインセラーにも用いています。 ■6800円のプリフィクスイタリアン 編集部: 「スカイ」のコンセプトについてお聞きしたいのですが、「オーガニック」「無農薬野菜をふんだんに使ったイタリアン」といった要素がキーワードになるそうですね。 古里氏: 今年は「スカイ」のコンセプト作りのためにすでに10数回、海外に出かけました。とりわけニューヨークにはスタッフとともに計8泊しました。8泊すべて違うデザインホテルに宿泊し、ホテルはもちろん、レストラン、バー、ラウンジなど、ニューヨークの旬な要素を見て回りました。中でも特にホテルのレストランはとても流行っていて、学ぶ点が少なくありませんでしたね。そこで改めて気付いたのはお酒の大事さ、そしてスタイルの大切さでした。これらの経験をベースに、東京初のホテルレストランのスタイルを作ろうと構想を練ったんです。 編集部: DJブースがあるということは、ニューヨークやパリにある最先端のレストランに見られるようなスタイルを意識しているのでしょうか。 古里氏: DJブースがあるからといって、決してクラブレストランのような業態をやるわけではありません。ここからレストランで食事をするのにふさわしいラウンジミュージックを流す予定です。僕は常々、日本にラウンジカルチャーを育てたいと考えているんです。一般的にはクラブ=ナンパの場所という見方をされますが、そうではなくて、大人が食と音楽を落ち着いて楽しめる場所としてラウンジを認知してもらいたいんです。これから、このマーケットは必ず大きくなると思いますから、自分としては、このマーケットをコーディネイトできればいいなと考えています。 編集部: 大人が楽しめるラウンジカルチャーを意識したレストランということになるのですね。 古里氏: 居酒屋のような業態を出店することが今の僕の役割ではないと思っていますから。僕自身は、時代のニーズをキャッチすることが役目でもあると思っていますから、それらをスパイスにしながら、「フルトシ」「パシフィックカレンツ」で培ったノウハウをもとに、よりよい商品を提供することでレストランの価値を高められればと考えています。この想いをカタチにしたのが「スカイ」であると言えます。 編集部: 料理のコンセプトには「オーガニック」を掲げていらっしゃいますね。 古里氏: 料理はオーガニックをキーワードにした野菜中心のイタリアンになります。産地直送の無農薬野菜を使い、付加価値の高い商品を提供します。麺は手打ち、6種類のパンも自家製、ワインに関しては既存店との差別化を図る意味で、カルフォルニア産は置きません。フレンチ、イタリアン、アルゼンチン、ニュージーランドワインに加え、オーガニックワインもリストに並びます。また、最も特徴的なのはコース設定にあります。 編集部: と言いますと? 古里氏: 夜は6800円のプリフィクスコースのみとなります。一般的にプリフィクスの場合、前菜、パスタ、メインの各カテゴリーの中から一品ずつお選びいただくような形になりますよね。しかし、「スカイ」ではそれぞれのポーションを近くして、カテゴリーにこだわらず、どれでもお好きなものを3品お選びいただけるように設定します。つまり、前菜3品でもメイン3品でもよいわけです。プリフィクス1コースでもお客様はニーズに合わせて様々なご利用いただけます。夜に関しては、宿泊客はもちろんですが、外からレストラン目当てに来ていただけるお客様が中心だと考えていますからね。 編集部: 客単価と売上はどの程度を想定しているのでしょうか。 古里氏: 考えている客単価は約9000円です。「フルトシ」が約8000円ですから、若干高めの設定ですね。ランチコースは2800円、3800円、5000円の3コースを予定しています。昼でも立地と景色を楽しみながら、ゆったりと食事をしていただけるレストランとして営業する予定です。売上に関しては、3000万円から6000万円の間と見ています。目標はまずは4000万円。目標を達成できるよう、当分の間は、私自身も現場に入りスタイルを作っていきます。 編集部: スタッフは既存店から移る方が多いのでしょうか。 古里氏: 「フルトシ」のマネージャーやシェフに加え、今回新たに総料理長が新店に加わる予定です。これだけの席がありますし、ホテルの朝食もこのレストランで作りますので、とにかくオペレーションは大変です。スタッフは総勢で60名になる予定です。簡単じゃないことは百も承知ですが、お客様のニーズに合わせて、変えていきますよ。 編集部: ホテルだと、ブライダル需要もある程度見込んでいるのでしょうか。 古里氏: いまのところ結婚式は一切やらない予定です。どちらかといえば、ファッション系メーカーのプレス発表会などをこのレストランでできればいいなと考えています。 ■4年振りの新店の意味 編集部: 今回は、どのような経緯で出店を決めたのでしょうか。 古里氏: 今年に入って開催されたコンペに参加したんです。ホテル側から「これまでにない個性を出したい」というニーズがありましたので、私たちなりの提案をさせていただいたところ、私たちを選んでいただき、このホテル内に出店できることになったんです。 編集部: 2店舗目の「パシフィックカレンツ」から4年ぶりの新店となりますが、4年という歳月にはどのような意味があったのでしょうか。 古里氏: いま振り返ると、グローバルダイニングを独立して「フルトシ」をオープンさせた2000年頃は、明らかにレストランバブルだったと思います。2001年に2店舗目を出店した当時、「このままいったら失敗するな」とふと感じたんですよ。 編集部: 失敗と言いますと? 古里氏: つまり、私がやりたいレストランを経営するには、マーケットとのバランスをとっていく必要があったのです。つまり、これ以上出店してもそこに客はいないと判断したわけです。僕が経営しているレストランは、いわば「オシャレに、だけど少しカジュアル」というラインのレストランです。非常に難しいんですが、高級レストランでも居酒屋でもないわけです。この4年間で客単価7000円ほどのレストランに対し、お客様は何を求めているのかを考え続けてきました。 編集部: 4年間で状況は変わったのでしょうか。 古里氏: 人材育成をはじめ、サービスレベル、料理のレベルはともに向上したことは間違いありません。それによってレストラン自体の価値を高めることができたと思います。それを表す指標の一つが客単価でしょう。「フルトシ」の客単価はオープン当初、5500円程度でしたが、現在は約8000円にまで上がっています。僕たちの努力だけではなく、このクラスのレストランの良い意味での使い勝手を理解いただけるお客様が増えたことも客単価が上がった一つの要因だと考えています。 編集部: 銀座という街にはこのスタイルのレストランを理解するお客様がいるということでしょうか。 古里氏: 銀座は西麻布や麻布十番とは違うマーケットと見ています。麻布で遊ぶ人で、銀座もよく行くという人はそもそも少ないですからね。銀座の新店のお客様は新しく開発された汐留や丸の内、日本橋を拠点にする、目的意識を持ってきていただける新しい層と見ています。 ■ホスピタリティーのコンサルティング経験 編集部: 古里さんは店舗の運営以外にもホスピタリティーに関するコンサルティング事業を手掛けていらっしゃるそうですね。 古里氏: 独立当初から外食以外の業界、例えば医療やブライダル、美容といった業界の企業と、サービスのコンサルタントという立場で接してきました。そもそも、自分の一番のウリはソフト、つまりサービスです。このソフトが売れることを知り、ビジネスとしてカタチにしてきたわけです。そして数多くの企業から声をかけていただいています。つまりそれだけ「サービス」に対する需要があるといえるでしょう。 編集部: 「売れるサービス」が新店でも一番のウリになりそうですね。今後の展開についてお聞かせ下さい。 古里氏: 「スカイ」のオープン機に、また新たなレストランを出店していこうと考えています。僕自身、あくまでレストランにこだわっていきたいですからね。海外進出も視野に入れています。業態としてはこれまで核にしてきたイタリアン以外に、客単価1万円前後の専門店的な業態も手掛けてみたいなと考えています。 編集部: 確かにこれまでにないレストランになりそうですね。 古里氏: この「スカイ」の存在によって、ホテルの価値を高めることができればいいなと考えています。繰り返しになりますが、もちろん、容易ではないことは十分理解しています。しかし、なんとかホテルレストランというジャンルを僕がつくって、日本のレストラン文化を変えて行きたいんです。現在は、食というジャンルがファッションや音楽、美容といったジャンルとクロスカルチャーする時代だと思います。DJブースなどを置くことで今までとは違うレストランの形として、お客様にそのことを理解していただければと考えています。今からどんなオープニングパーティーになるのか期待していただいているお客様も多いんです。うまく波に乗っていこうと思っていますよ、しっかりあせらずに。
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