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【カリスマシェフの系譜(10)】フレンチの名門、六本木「オー・シザーブル」に新シェフ・石澤 和美氏が就任!
六本木駅近く、路地裏に佇むフレンチレストラン「オー・シザーブル」を取材した。日本のフランス料理界を牽引する名料理人たちが、代々シェフを務めてきた名店だ。接客を担当するのはマダムの関根 葉子氏。六本木の街の変遷を見続けながら、老舗の心で長年常連客をもてなしてきた。創業29年の伝統を、浜中 良和シェフに代わり、フランスから帰国したばかりの33歳、石澤 和美シェフが引き継ぐ(文・撮影 吉田 ゆり)
<プロフィール>
石澤 和美(いしざわ かずみ) 1974年北海道生まれ
18歳の頃「札幌ロイヤルホテル」で2年半修行した後、小樽「オーベルジュ・セ・ラ・セゾン」、札幌「ロテル・ド・ロテル」札幌「トワザミ」を経て、22歳西麻布「ビストロ・ド・ラ・シテ」で6年間信国シェフの下で働く。その後「稚内全日空ホテル」を経て28歳で渡仏。パリにある日本人シェフの「レストラン タイラ」ほか、「クロ・デ・グルメ」、「オテル・ド・ラ・トゥール」、1ツ星「ランブロワジー」など、「シェ・カトリーヌ」では女性シェフの下で学ぶ。3年半のフランス滞在終え帰国、2007年7月「オー・シザーブル」シェフに就任。名門「オー・シザーブル」とは
六本木駅からミッドタウン向かい側の路地裏を入り、ベルファーレ跡地のマンション工事を横目に見ながらさらに小道を右折。するとそこには喧騒から隔絶した小さなレストランが現れる。緑の植物に囲まれた奥ゆかしいエントランス。足を踏み入れるとすぐ脇のレセプションでマダムが温かく出迎えてくれる。テーブル20席と決して広くない店内だが、使いこんだアール・ヌーボーの家具が優しい間接照明と調和し、空間に心地よい重みをもたらす。「オー・シザーブル」とはフランス語で“六本の木の元”。六本木の街に29年間根を下ろしてきた老舗の風格がそこにある。
元々同店を開業したのは“ビストロ”の日本第一人者といわれる勝沼 登氏。
同氏は‘73年西麻布「ビストロ・ド・ラ・シテ」を開業した後、’78年2号店「オー・シザーブル」を開業する。
勝沼氏が現在シェフを務める箱根「オーベルジュ・オー・ミラドー」を’86年に開業するにあたり、関根 進・葉子夫妻がこの2店舗の経営を引き継ぎ現在に至る。
関根 進氏は姉妹店「ビストロ・ド・ラ・シテ」のサービスを担当、同じく歴代シェフを育ててきた。
「オー・シザーブル」は初代シェフ・勝又 登氏を筆頭に、これまで名立たる料理人を輩出してきたことでも知られる。「ラ・プリムール」高橋 祐二氏、「マノアール・ダスティン」五十嵐 安雄氏、「アラジン」川崎 誠也氏、「ル・マンジュ・トゥー」谷 昇氏、など、街場のフレンチのいわば“総本山”なのだ。
「ル・ブルギニオン」菊地 美升氏もスタッフとして働いていた。
マダムは言う。
「新人スタッフにはまず接客を経験してもらいます。ここで良いサービスをした人は後に素晴らしい料理人として活躍しています」
そして今年7月から、浜中 良和シェフに代わりフランスから帰国した石澤 和美氏がシェフに就任した。
高校生の頃アルバイトしていた洋食屋で料理に目覚め、18歳で「札幌ロイヤルホテル」レストラン部でフランス料理の道を決意した石澤氏。その後、オーベルジュやビストロなど北海道の名店を経て、22歳に西麻布「ビストロ・ド・ラ・シテ」信国シェフの下で6年間学んだ。
その後28歳で渡仏、日本人シェフ「レストラン タイラ」、1ツ星「ランブロワジー」、女性シェフ「シェ・カトリーヌ」など、パリで3年半修行を積む。
西麻布にいた頃からその実力を認めてられていた石澤氏、後任に迎え入れられたのは自然の流れだった。
謙虚で礼儀正しい若き新シェフ、一体どんな料理を見せてくれるのか。
伝統と革新
ここへ来たら必ず食べたいのが、創業当時から受け継がれるスペシャリテ「フォアグラのソテー マデラワインソース」4,500円。石澤シェフは、一度も口にしたことがなかったというこの逸品を、試行錯誤を重ね見事に再現した。
丁寧にソテーされた最高級フォアグラのほろ苦い甘味が、マデラソースのまろやかな酸味と融け合う。ソースはほど良く塩を効かせ、フォン・ド・ヴォライユ(鶏の出汁)と少量のバターで仕上げた。すりおろし玉ねぎの爽やかなマリネを周りに添えた、シンプルでいて奥深い究極の一皿。
このスペシャリテと並んで、常連客の8割がオーダーするという「冷製いくらのスパゲッティー トマトのコンソメ風味」4,400円も人気。谷シェフが考案して以来15年間守り続けている看板メニューだ。
そして、石澤シェフが新たに加えたメニューのうち二品をご紹介。一品目は「自家製ハムとソーセージの盛合わせ」4,800円〜。手前から燻製したパセリ&荒挽き肉のソーセージ、5種類の茸のブーダン・ブラン、フォアグラと豚足入りソーセージ、ハムの左はピスタチオ入りニンニク風味。なかでも柔らかなブーダン・ブランを頬張ればシェフの実力が窺える。
もう一品はランチにも登場する「ブルターニュのクレープ」2,200円。塩だけでもいける香ばしい国産そば粉の生地に、ラタトゥイユ・チーズ・玉子を載せた贅沢なクレープ。穏やかな午後の陽射しの中で冷えたシードルと味わいたい。
同店では、これまでプリフィクスコースで提供していたが、大皿で豪快にシェアできるアラカルトに変更していくという。
「好みの量やメニューにない料理など、どんどんリクエストしてほしい。一緒にお話しながらコース作っていく楽しさをお客様に味わってもらいたいんです」と。
厨房の横に設けたワインカーブには、高価なグランヴァンをはじめ約400本以上のワインがストックされている。
「グランヴァンは特別な日に飲んでいただきたいので敢えて値下げしません。でもこれからは、気軽に楽しめる新世界のワインも積極的に取り揃えていきます」
老舗の誇りがあるからこそ、新たな試みにもチャレンジする。
そんな逞しいマダムは、
「この業界はまだまだ女性の活躍の場が多い。3Kという厳しい職業ですがもっと女性に頑張ってもらいたい」とエールを送る。
「シテ丼」ならぬ「フォアグラDON」もランチメニューにお目見えする。
創業34年の「ビストロ・ド・ラ・シテ」は古屋 壮一シェフにより大胆な変身を遂げた。
目覚しく躍進する六本木の街で、伝統を守りながら石澤シェフがどう“料理”していくのか見ものである。
オー・シザーブル
東京都港区六本木7−13−10 宮下ビル1F
03−3479−2888
ランチ12:00〜14:00(L.O.)、ディナー18:00〜22:00(L.O.)
日休(オープン可能・応相談)
〜筆者プロフィール〜
吉田 ゆり

特集記事担当ライター
(社)日本ソムリエ協会認定
ワインエキスパート
大阪生まれ。大阪・京都を食べ歩き燃え上がった“食人魂(しょくにんだましい)”は、数年前東京に移り住みさらにヒートアップ。ワインの守護神「サン・ヴァンサン」と誕生日が同じことから、本人は化身であると信じて疑わず、布教活動と称し一人で食べ歩く日々を送る。目標一日3軒。
好評!「恵比寿時々中目黒ところにより港区」でブロガーデビュー。
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