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【カリスマシェフの系譜(9)】業界初“デザートレストラン”に挑む!駒場「ミラヴィル」オーナーシェフ・都志見セイジ氏
渋谷駅からタクシーで1メーター、喧騒から外れた駒場・松見坂にある白い瀟洒なフレンチレストラン「ミラヴィル」。わざわざこの場所に足を運んでしまうのは、オーナーシェフ・都志見セイジ氏のアーティスティックな世界に引き寄せられるからなのか。店内に飾られた自作絵画のように、白い皿に描かれるのは独創的かつ繊細な料理。同氏は今秋開業の銀座マロニエゲートに“デザートレストラン”「ミラヴィル・インパクト」を出店する。この業界注目の新業態でも、どうやら“都志見ズム”が炸裂するようだ(文・吉田 ゆり)
<プロフィール>
都志見 セイジ(つしみ せいじ)
1962年広島県生まれ
22歳で広島から上京し、ふとしたきっかけでフレンチの世界へ。
「プチマルシェ」、「グルマン亭」等で基礎を学び、27歳で渡仏。
「ミラヴィル」、「デュケノワ」、「ジャンバルデ」をはじめ、三ッ星レストラン「コートドール」、「ジョルジュブラン」などで約6年間フランスで修行を重ねる。パリ7区にある「オ・ボン・アクイユ」では料理長を務める。
'94年に帰国、「ヌキテパ」を経て、「白金亭」、「トラント・トワ」で料理長を務める。
2000年8月、目黒区駒場に「ミラヴィル」をオープン。今秋開業の銀座マロニエゲートに出店する“デザートレストラン”「ミラヴィル・インパクト」が業界の注目を集めている。
かつてプロのミュージシャンを目指していたこともある都志見氏。
22歳の時の大失恋で人生を見つめ直した氏は、得意の料理で喫茶店のマスターでもやろうと上京。ところがある人の紹介で自由が丘「プチ・マルシェ」で下働きをすることになる。ここで生まれて初めてフランス料理というものに触れ衝撃を受ける。
「この料理に人生をかけてみるか。やるなら日本一、いや世界一を目指そう」
石嶋シェフのもとで基本の大切さを学んだ氏は遅咲きながら好調なスタートを切る。
一ツ星「ミラヴィル」を皮切りに、「デュノケア」「ジャンバルデ」、三ツ星「コートドール」「ジョルジュブラン」など、通算約6年フランスで研鑽を積んだ。
人種差別の壁に直面するたびに、料理よりもコミュニケーションが先決と“言語”の習得に明け暮れたという。
店名に冠するほど影響を受けた一ツ星「ミラヴィル」シェフ、ジル・エピエ氏も日本人を雇うことを好まなかったそうだ。
それでも氏は頼み込んでタダで働かせてもらった。数ヵ月後には認められ雇い入れてもらう。
その後パリのビストロ「オ・ボン・アクユイ」では一転、日本人びいきのオーナーに買われ、仕入れからメニューづくりまで店の一切を任される。店の評判も上がり売上げにも貢献。どんな星付きでも得ることの出来ない貴重な経験を得た。
念願の独立
帰国後、白金台「白金亭」、「トロント・トワ」のシェフを経た都志見氏は満を持して独立を果たす。
賑やかな渋谷の街を抜け、閑静な駒場の松見坂に2000年8月小さな白亜のレストランが誕生した。13.5坪の店内は、白を基調としクラシカルで気品が漂う。全席からガラス越しに厨房が見えるよう18席を配置した。
このステージで創り出されるのは、バターやクリームを多用せず、素材の滋味を開花させる緻密かつ軽やかな料理。
自慢の魚介は出身地である広島県・糸崎港より毎日直送されるもの。
「小さい頃から食べ親しんでいますし、地元直送だから安くて鮮度も良い。築地にはない美味い小魚も豊富なのでレパートリーも広がります」
左は開店当初から信頼関係を築いている静岡県「ビオファームまつき」の完全無農薬野菜を使った『松木さんが富士山麓で丹精こめて育てた完全無農薬の温野菜サラダ』
山ウドは揚げ、オクラは炙るなど、約20種類の野菜個々に適した調理法でその本来の味を引き出していく。鶏のブイヨンにニンニクを効かせたバターソースで素材の味は最大限に。
修行時代、仕込み中に閃いたというシェフのスペシャリテ『和牛舌とフォアグラのサンマルク仕立て セミドライイチジクのソース』
噛むほどに広がる柔らかな牛タンの旨みとフォアグラのコク。トリュフと香ばしいパイ生地がそれらを引き立てる。牛タンの煮汁とセミドライイチジクを煮詰めたソースを添えて。
氏が自身のオリジナリティとして打ち出す“異素材のマッチング”は、コースを締めくくるデザートで最高潮に達する。身近な旬の素材を斬新にアレンジしつつ、決して華美になり過ぎない洗練されたテイスト、それはまさに大人のデザートなのだ。
今秋登場「ミラヴィル・インパクト」とは
「ミラヴィル」のもう一つの名物が都志見氏の自作絵画のコレクション。
風景画、人物画、なかには抽象画が伸びやかな色彩で描かれ、白で統一された店内に強烈なインパクトを放っている。気ままに手に取ったと思われる画材で表現したこれらの作品は、実にユニークでそのモチーフに愛着すら感じるほど。
都志見氏は、2007年9月開業の銀座マロニエゲート10階に「ミラヴィル・インパクト」を出店する。同店はフレンチシェフが手掛ける本邦初“デザートレストラン”として早くも話題を呼んでいる。
さらに、同店のファサード・壁に、自らが絵を描くというから驚きだ。
「特に絵の構想は練っていません。その場に行った時点で僕の脳内にあるものを爆発させます」
好きな言葉は、岡本太郎の“キャンバスをはみ出せ”。絵は料理と違って消えて行かないのが良いと氏はいう。
一方、同店で提供するのは、“皿で登場し皿で消えていく”レストランでしか味わえないテイクアウト不可のデザートコース。デザート3皿を基本コース(1,890円を想定)とし、野菜のオードブル、メイン料理とを組み合わせ、3種類のコースを用意する予定だ。
何より興味深いのが、世界のお茶&お酒とのマリアージュ。
「食材の組み合わせ、温度の組み合わせなど、ここでもオリジナリティを追求していくつもりです。昼はアジア各国の銘茶と共に、夜は世界のワイン、リキュール、蒸留酒などと共に提供します。“焼酎”に例えば“焼酎のゼリー”を合わせたり、今までにない、いろんなインパクトをきっと感じてもらえるはず」と意気込みを語る。
同店シェフを務めるのは、フランスでの修行を終えまもなく帰国する大塚 恵子氏(30歳)。
業界初の試みに不安はないのだろうか?ずばり本心を尋ねてみた。
「プレッシャーも感じるし不安もあります。いろんな人が協力してくれるので前に進むだけです。皆が興味を示してくれるから、きっと良いものができると信じています」
また氏はいう。
「再現しているだけではだめ。後に残していくために、自分が新しいことをやらなくては」
そんな都志見氏の趣味は、ポルシェとハーレー。仕事を終えたら“男子厨房に入らず”なのだとか。プライベートを謳歌するシェフに筆者は初めて出会ったかもしれない。
厨房の中で全力を出し切る、その徹底したプロ意識は取材中に幾度も感じた。
職業の違う仲間たちと月2、3回出かけるツーリングが生活のビタミン剤だという都志見氏。
とはいえ、ツーリングの向かう先には、やはり美味しいものがあるようだ。

ミラヴィル
東京都目黒区駒場1−16−9
片桐ビル1F
03−5738−0418
12:00〜15:00 18:30〜23:00
水曜休
〜筆者プロフィール〜
吉田 ゆり

特集記事担当ライター
(社)日本ソムリエ協会認定
ワインエキスパート
大阪生まれ。大阪・京都を食べ歩き燃え上がった“食人魂(しょくにんだましい)”は、数年前東京に移り住みさらにヒートアップ。ワインの守護神「サン・ヴァンサン」と誕生日が同じことから、本人は化身であると信じて疑わず、布教活動と称し一人で食べ歩く日々を送る。目標一日3軒。
好評!「恵比寿時々中目黒ところにより港区」でブロガーデビュー。






