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【カリスマシェフの系譜(7)】新感覚の創作和食で魅する“おもてなし”のスペシャリスト!西麻布「ラ・ボンバンス」料理長・岡元 信氏
各国の食材や料理を融合した「フュージョン」料理は、今や我々の食生活にすっかり浸透している。和食における「フュージョン」化も例外ではなく、“創作和食”という一つのジャンルが確立するほど。なかには、洋の技法で和の食材を操る某日本料理店が国内外で評価されているケースもあり、料理人の数だけメニューも未知数といえる。その一つ、西麻布の日本料理「ラ・ボンバンス」を取材した。ビルの地下一階、13席ほどの店内で、和洋中のエッセンスを巧みに織り交ぜた自由闊達な料理を提供する。名料亭出身の岡元氏が料理長を務め、自ら丁寧に接客にあたる。斬新な日本料理に感じたもの、それは意外にも“おもてなしの心”だった(文・撮影 吉田 ゆり)
【プロフィール】
岡元 信 (おかもと まこと)
1973年新潟県長岡市生まれ
高校卒業後、鴨川グランドホテルに入社、日本料理「鴨川」で3年間料理の基礎を学ぶ。その後、東京新阪急ホテルに入社、日本料理「明石」と鉄板焼「ロイン」で3年半経験を積む。26歳の頃、日本屈指の名料亭・紀尾井町「福田家」で4年間日本料理の真髄を学ぶ。
2004年6月、30歳で西麻布に「La BOMBANCE( ラ・ボンバンス)」をオープン、料理長を務める。
寿司屋の家庭に育ち、伝統的な日本の文化が好きだった岡元氏は高校卒業すると同時に日本料理の道に入る。
「日本料理は、陰陽五行説や茶道の哲学により、切り方や盛り付け方がすべて決められている、そこが面白いんです」
日本料理の妙味に惹きつけられていった修行時代。
新阪急ホテルにいた頃、“鉄人ブーム”に感化され洋食にも興味を持ち始めた岡元氏は、日本料理から鉄板焼フレンチへと移る。現在と同じ13席のカウンターのこの店は、幼い頃からカウンターでの接客を見て育った氏にしっくりきたようだ。
“こういう店で和洋中問わずとにかく美味いものを出したい”そんな漠然とした思いが芽生え始めた。
料亭「福田家」で学んだこと
「本物の料理を知らないで“崩す”ことはできないと思いました」と岡元氏。
26歳の頃、料亭「福田家」に入り牧内 淳治料理長の下で日本料理を学ぶ。
昭和14年虎ノ門で旅館として創業して以来68年の歴史を持つ「福田家」は伝統と格式ある紀尾井町の名料亭。創業者の遺志で真田堀に100本の桜が植えられたことでも知られ、四季を愛する日本の伝統美が料理にも受け継がれている。
「それなりに経験は積んではいましたが、料亭の“おもてなし”というものに衝撃を受けました。例えば鯛の刺身。女性には食べやすく切ったり、脂身は若い方にお出したり、お祝いの席なら特別な器に盛り付けるなど、お客様一人一人に細かな配慮がなされていました」
“サービス”、“ホスピタリティ”を、氏はあえて“おもてなし”と表現するのは、その福田家の精神を守り続けている証拠。
西麻布交差点から六本木通りを渋谷方面に歩くと見えてくる「B」のマーク。地下へと階段を下りればこの隠れ家が現れる。
器のディスプレイが照らし出された“バー”の趣き漂うカウンターに9席と、4人掛けのテーブル席1つの計13席。これが自身の目が行き届く限界だという。
「ラ・ボンバンス」とは仏語で“ごちそう”の意。地下という立地でしかもこの店名、開店当初1年ほど、なかなかお客が来なかった。だが、次第にお客がお客を呼び、リピーターが8割を占める人気店となっていく。
「記念日に利用してくださる方がいると嬉しいです、僕もお気に入りの店には大切な人を連れていきたいですから。先日、ある方がプロポーズの場所に使ってくださいましてね」
“思いっきり楽しんで帰ってもらいたい”そんな岡元氏のさり気ない計らい一つ一つをお客はつぶさに感じ取っている。
四季折々の厳選食材が愉しめる新感覚の日本料理
料理は、月替わりの10,000円コースのみ(全8品)
◆コース内容…はじめの一品、前菜料理、フォアグラ料理、旬の料理、肉料理、魚料理、お食事、デザート(別途800円)
その中からほんの一例をご紹介。
〜前菜〜
上から「ヨモギの胡麻豆腐」、「鹿児島産トウモロコシのかき揚げ」、「高級フルーツトマト“ロッソ”のカプレーゼ・ピンチョス、パルマ生ハムで巻いた水茄子とマスカルポーネ」、「初ガツオが乗ったカツオのハンバーグ ブールブラン・ソース&粒マスタードで」
名門で培われた目利きによって全国各地から選びぬかれた旬が彩り・味ともにバランス良く並ぶ。
〜旬の料理〜
「北海道産牡蠣のムニエル 百合根と白きくらげの茶碗蒸し ポン酢ともみじおろしで」
ムニエルで引き出された牡蠣の濃厚な味わいが計算された、素朴でいて奥深い一品。和食を崩すことの“意味”を感じる。
〜フォアグラ料理〜
「フォアグラのソテーと久世茄子のオランダ煮 新ジャガのせんべい 木の芽西京味噌ソースで」
煮含められた茄子から煮汁がしみ出し、フォアグラにじんわりと絡み合う。木の芽味噌が爽やかなアクセントを添える。
料理に最も注意されている点について尋ねてみた。
「“創作”に捉われず素材の味を生かす最善の調理法をいつも考えています。鱧もいろいろ試しましたが、やはり梅酢が一番なんですよ。見てビックリ、食べてビックリじゃないと“創作”する意味がありませんからね」
さらに筆者は思う。
“食べてビックリ”する味は、かつてどこかで経験したものであることが望ましい。どこかに帰着しない料理は単なる“フュージョン”でしかないからだ。
興味深いのが、氏は自身の料理を“素材を育てる料理”と表現する。
素材が全うするのを見届けようとする姿勢は、料理人のエゴに終わりがちな創作和食には見られない新鮮なものに映った。
ワガママな友人とここを訪れた時に友人の言った「何一つ不愉快なことがない」というセリフが思い出される。
日本酒を通じて
蔵元と接する機会の多い岡元氏は、彼らのひたむきな“ものづくり”魂に心を動かされる。
蔵元を招いて「日本酒の会」を定期的に行い、国酒としての日本酒の復活を願って料理とのマリアージュを積極的に提案している。この会では司牡丹酒造の「袋吊り今搾り(純米吟醸しぼり)」など希少な利き酒も体験できるようだ。また、3周年を迎える今月、司牡丹酒造の辛口人気銘柄「船中八策」も記念品として用意。
「こうした様々な人たちに出会い感性を刺激されるたびに、店をやっていて本当に良かったと思います」と語る。
新阪急ホテル時代から現在まで、共に歩んできた右腕の渡邊 直博(わたなべ なおひろ)氏に「いずれは料理長を任せたい」と、料理人の夢も応援している。
人と夢、作り手と消費者、新旧の食文化…。
これらを繋いでいくため「ラ・ボンバンス」は今夜も、とびっきりの“ごちそう”を用意していることだろう。

店名 ラ・ボンバンス
住所 東京都港区西麻布2-25-24 BI
TEL 03-5778-6511
営業時間 18:00〜23:00
〜筆者プロフィール〜
吉田 ゆり

特集記事担当ライター
(社)日本ソムリエ協会認定
ワインエキスパート
大阪生まれ。大阪・京都を食べ歩き燃え上がった“食人魂(しょくにんだましい)”は、数年前東京に移り住みさらにヒートアップ。ワインの守護神「サン・ヴァンサン」と誕生日が同じことから、本人は化身であると信じて疑わず、布教活動と称し一人で食べ歩く日々を送る。目標一日3軒。
好評!「恵比寿時々中目黒ところにより港区」でブロガーデビュー。
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