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【カリスマシェフの系譜(3)】“本気で本当の”美食を奏でるアーティスト!南青山「アブソルートゥリーtetsu」オーナーシェフ・谷口 哲也氏。
カリスマシェフ”をリレー方式で紹介していく新連載企画【カリスマシェフの系譜】第3回目。前回の「花冠(はなかんむり)」松本料理長からのご紹介で今回取材したのは、南青山「アブソルートゥリーtetsu」谷口 哲也オーナーシェフ。英国の人気シェフ、ジェイミー・オリバー氏(注1)とのコラボで人気を集めた「Afternoon Tea BAKER & DINER(アフタヌーンティー・ベイカー&ダイナー)」をはじめ、数々の名店でシェフを経験。現在、「クラブミストラル」(注2)会長や専門学校講師も兼務。バイタリティー溢れるシェフの体験談に元気を一杯いただいた。(文・撮影 吉田 ゆり)
【プロフィール】
オーナーシェフ 谷口 哲也(たにぐち てつや)
1960年生まれ。高校卒業後、プロのギタリスト目指して、伊豆大島から上京。フランス料理に魅せられ料理の道を志す。日本フランス料理界の重鎮、上村時夫シェフのもとで修行。1986年渡仏、1つ星「オテルドゥフランス」、2つ星「ダニエル・レオン」で研鑽を積み、帰国後「ティファニー」でスーシェフに。「ピアション」、「芙蓉亭」を経て、「ビストロ・ダルブル」シェフを11年間務める。2001年に「アフタヌーンティー・ベイカー&ダイナー」シェフに就任。“イギリスのカリスマシェフ”ジェイミー・オリバー氏ともコラボレーションで話題を呼ぶ。2005年9月独立、「アブソルートゥリーtetsu」をオープン。現在「クラブミストラル」会長、食の専門校レコールバンタンで講師も務める。
ハードロックから突如料理の世界へ
卵焼きが食べたい一心で、大事なプラモデルの部品で壊れたフライパンを修理したという7歳の頃から、すでに資質は備えていた谷口シェフ。
焼き鳥屋を営む家庭で育つが、高校卒業後、プロのギタリストを目指しギターひとつで上京する。20歳の頃はハードロック・バンドで活動、プロとして通用するほどの腕前だった。
「ひょんなことがきっかけでした。ある日、新宿の紀伊國屋に楽譜を買いに行ったら、色鮮やかに並べられた料理本にふと目を奪われたんです。その中で一際目を引いたのが“シェ・イノ”の井上シェフの本でした。それだけを買って楽譜は買わずに帰りました」
血液型を聞いてみるとAB型とのこと、納得である。
料理の道を決意した氏は、ある人の紹介で外資大手企業のゲストハウスでシェフをしていた“日本フランス料理界の重鎮”上村 時夫氏の下で働くことになる。
厳しい修行時代
「とにかく親父は怖かったです。怒鳴られるわ、手は飛んでくるわ、料理と礼儀にはとにかく厳しい人でした。頭に棚の物が落ちてこようが構わず、一心不乱に料理する姿は凄まじいものがありましたね」
氏が親父と慕う上村シェフとは、わずか27歳で、「ホテルオークラ」のスープ作りのシェフに抜擢されたという前代未聞の記録保持者。その師匠にソースや煮込み料理などフランス料理の基礎を徹底的に教わったという。
「僕たち40歳代が古典料理を学べた最後の世代じゃないでしょうか」
今の若手料理人は、古典料理を学ばないまま創作料理をやっているように見えると氏は指摘する。
その後、料理長として招かれた上村シェフと共に原宿のレストラン「ティファニー」へ、名だたるシェフを輩出した名店だ。
夜1時に終業した後、3時には起きてパン屋でも働いたという過酷な生活を1年半続け、資金100万円を手にフランスへ渡った。25歳の時である。
フランスでの豊かな経験
パリの知り合いのアパートに転がりこんでパリを食べ歩く日々を送る。
「“ブーダン・ノワール”や“子羊の脳みそ”など、最初食べた時は何だこりゃと思いました。でもしばらく経つと何故かまた食べたくなる、それがフランス料理の魅力なんですよ」
その後、南仏イゼール県、ラ・コート・サンタンドレにある「オテル・ド・フランス」でメインを仕切るシェフ・ソシエを務める。と同時に、ショコラティエ、ソーセージ屋のほか、田舎料理を学ぶため食堂でも働き、その傍らフランス語の勉強にも励んだという、その器用さもまたAB型ゆえか。
当時、「オテル・ド・フランス」は星無し。「ある日のこと、突然ミシュランの審査が入ったんです。覆面とはいえ店にはバレてるものなんですよ。シェフ以下全員に緊張が走りましたねぇ、今でも覚えてます」それぞれの持ち場をこなし、全員のチームワークで見事星を獲得する。
その後、2つ星「ダニエル・レオン」を経て帰国、「ティファニー」に戻りスーシェフとして閉店まで7年間務め上げる。
その後、西麻布の高級店「ピアション」、代官山「タブローズ」の総料理長を経て「ビストロ・ダルブル」のシェフに就任。
「この本に載るのが夢だったんです。」と見せてくれたのが“シェフのバイブル”「シェフ・シリーズ」(中央公論社/1998年8月号に掲載)。
「料理はギターと似ています。人より良いものを作りたければ、人より練習しないといけない」
こうして着実に夢を実現させていった。
スターシェフとの共演、その舞台裏
まだまだ新しいことをやりたいと思っていた40歳の頃、ある店のシェフを任される。英国の超人気シェフ、ジェイミー・オリバー氏とのコラボレーションで話題を呼んだ銀座「Afternoon Tea BAKER & DINER(アフタヌーンティー・ベイカー&ダイナー)」だ。
「最初は27歳の若造ぐらいにしか思ってませんでした。ところが、試作の為にロンドンを訪れた際に、彼のポスターが街の至るところに貼られてあるのを目にし、初めてすごい奴なんだと知ったんです」
英国BBCテレビの人気料理番組で一躍時の人となり、料理におけるイギリスのイメージを大きく変えたとも言われるスター・シェフ。その彼のレシピコースが銀座でいただけるとあって、連日多くの女性客が詰め掛けた。だが、素材を知り尽くした質の高い谷口シェフのオリジナルメニューは、それ以上に訪れる客を魅了していった。
「彼の店には本当にいろんな子達がいて、みんな生き生きと働いています。彼らとの出会いは生涯の宝物ですね。それがなければもっと堅苦しい店をやっていたと思います」
現在、食の専門校レコールバンタン講師も務める氏は、ご自身の店で生徒たちに実践的な課外授業を行うこともあるという。
改めて店内を見渡してみる。まるでおもちゃ箱のように遊び心たっぷりのレストラン「アブソルートゥリーtetsu(テツ)」。
「恋人、家族、友人たちと服装・テーブルマナーなど気にせず楽しめるとにかくうまい店を」と乃木坂駅すぐの閑静な住宅街に2005年9月に開店した。
店名“Absolutely(アブソルートゥリー)”の意味は「本気で ! 本当に !」。有機野菜、天然水、粉すべてこだわる“本気で本当の料理”を提供する。30秒で作るアペタイザーから、8時間煮込んだ肉料理まで昼夜共に日替わりで提供。「フランスエスプリ」、「ロンドンモダン」、「アメリカの自由」を学んだ氏の集大成がまるごと頂ける店だ。
こちらは冬の定番「Tetsu流 ブイヤベース」。

幼少の頃から、毛の生えたトマトやトゲのあるキュウリを食べて育ったという氏、野菜への妥協は許さない。扱うのは舌と足で長年探し当てた全国各地の有機野菜。栽培まで細かく契約農家に注文し、ヨーロッパ原産種においては、日本のどの地域がその品種の栽培に適しているか徹底比較するというこだわりよう。
「有機野菜はもちろん、今年からは僕の得意とする定番のハムや煮込み料理を本格的に出していこうと思っています」
谷口シェフの夢は?の質問に、
「パン屋とケーキ屋を開くこと」
そのシェフが13年間作り続けているという「レンズ豆黒みつグラス」。
香ばしいピスタチオのプラリネと贅沢な口どけを是非。

「アブソルートゥリーtetsu」
東京都港区南青山1-19-7 クラインシュロス101
03-5770-6228
ランチ:12:00〜14:30(L.O.)
ディナー:17:30〜21:00(L.O.)
月曜日休み
注1)英国BBCテレビの料理番組で一躍有名シェフになる。その後レストラン「Fifteen(フィフティーン)」を開業。年間15人の若者を雇い更正させ、一人前のシェフに育て上げるという職業訓練も行っている。また、ファーストフード化傾向にある公立学校給食の改善に取り組んだ功績も認められ、名誉大英勲章第五位が授与された。
注2)1995年3月に40名の会員で発足。昭和30年代生まれであること、調理経験が10年以上であること、シェフ、オーナーシェフ、もしくはそれに準ずる立場の人を入会資格とし、料理業界を通じての文化交流、人材育成、人材紹介、技術向上、社会貢献活動を目的としている組織。
〜 筆者プロフィール 〜
吉田 ゆり
特集記事担当ライター
(社)日本ソムリエ協会認定
ワインエキスパート
大阪生まれ。大阪・京都を食べ歩き燃え上がった“食人魂(しょくにんだましい)”は、数年前東京に移り住みさらにヒートアップ。ワインの守護神「サン・ヴァンサン」と誕生日が同じことから、本人は化身であると信じて疑わず、“布教活動”と称し一人で食べ歩く日々を送る。目標一日3軒。
好評!「恵比寿時々中目黒ところにより港区」でブロガーデビュー。
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