HOT ISSUE

2006-11-16

【カリスマシェフの系譜(1)】料理人も目を瞠るジビエ料理の大サーカス!中目黒「トロワピエロ」オーナーシェフ・神谷英生氏。

 猪のパテ”、“馬の内臓煮込み”、“ミルクラムの生ハム”、“網獲り真鴨の内臓焼き盛合せ”、“金華豚のロースト”、“カジキマグロのトロ刺し”…。 筆者がこの店で頂いた衝撃メニューの中のほんの一例である。他店ではまず出会えない独創性溢れる料理と、厳選された豊富なワインが手頃に楽しめる中目黒の隠れ家的ワインバー「トロワピエロ」。辺鄙な立地にありながら、錚々たる有名シェフ、業界人が数多く訪れるここを訪れるという。その秘密を探るべく今回取材をお願いした。(文・撮影 吉田 ゆり)

 

【プロフィール】

オーナーシェフ 神谷 英生(かみや ひでお) 

1967年新潟生まれ。野菜農家の傍ら和食割烹で働く母上の影響で、10歳から料理を始める。偶然テレビで観た“三國シェフ”の特番でフランス料理の道を志す。18歳に新潟のシャルキュトリのレストランで5年間修行、六本木・泉ガーデン「住友迎賓館」で7年間古典フレンチと“ブッフェ・ケータリング”を学ぶ。その後、広尾「トラットリア・ヴォーノ」シェフに就任。レストランコンサルティング業を5年、六本木「センシス」のウェディングシェフ1年を経て、2004年12月独立、中目黒「トロワピエロ」のオーナーシェフとなる。

 

前代未聞の“ジビエレストラン”

取材を予定していたこの日、神谷シェフより突然のメール。

「猟師から猪が入ったと連絡があり伊豆に来ています。取材は明日にしてもらえますか。」翌日店を訪ねると、猪の解体作業を終えホッとした様子の神谷シェフが迎えてくれた。獲物は西伊豆の山林で捕獲された80kgの雄イノシシ、男3人がかりで作業は深夜にまで及んだという。
そう、ここは“シャルキュトリ(食肉加工店)”のワインバーなのだ。
「ラッキーですよ、今日なら猪のレバーをお召し上がりいただけます」と厨房から取り出したのは、なんと人の頭ぐらい大きな“猪のレバー”。そうそう拝めるものではない。こんなシェフの行動は日常茶飯事、その磊落な人柄がいつもお客を楽しませている。


その真っ赤に輝く新鮮なレバーを甘酸っぱい赤ワインソース仕立てのステーキにしてくれた。頬張ってみると、まるでカカオのようなほろ苦いコク、脂の甘味が口に広がりまさに極上の味わい。
「ジビエなら都内じゃどこにも負けない」と豪語する神谷シェフ、“野鳥獣たち”をてなずけ昇華させるその料理は、常に驚きとエンターテイメント性に満ちている。自信の中に、時折垣間見せる屈託のなさもまた氏の魅力の一つだろう。

全国のブランド豚を制覇

“パテ”や“ハム”を得意とする神谷氏の豚肉へのこだわりは特筆に値する。全国の生産者を片っ端から当たり、仕入れたその数ざっと20銘柄。山形の「桃園豚」、「金華豚」、山梨の「フジザクラポーク」、鹿児島の「あすく黒豚」、今でこそ見かけるようになった広島の霜降り豚「幻霜ポーク」もいち早く仕入れていた氏の素材を見る目は常に先鋭だ。
「開店資金の短期回収は大前提でしたから、その意味でも豚肉は面白い食材だと思いました」仕入れは全て半頭買いで行い、余すことの無い加工の技術で低コストを可能にしていった。初めてここで“出来たてハム”を頂いた時の衝撃は今も鮮明である。
この店では“岩手産短角牛”も開店当初から当たり前のようにメニューに載っていた。

こちらは「野鴨のパイ包み」。

その原動力を生む多彩な経歴

18歳で新潟にある“本格ジビエ料理”のレストランで約5年間修行する。左はその店の名物“子豚の丸焼き”。
その後は大きく一変、六本木・泉ガーデン「住友迎賓館」でおよそ7年間、総料理長・成川シェフのもと“フランスの古典料理”と“ブッフェ・ケータリング”を学ぶ。
「財界著名人がここを利用していましたから、扱うのは全て最高食材でした。ここでは“本物”を見る目が養えましたよ。ケータリングの技術もトップクラスでしたから、大使館のパーティーや大企業の“杮落とし”、ビッグサイトの2千食パーティーも経験しました」
 対照的な料理を習得していった氏は、その後ある社長の誘いでレストランコンサルティング業に転身する。東宝グループ系列を中心に5年間で手掛けた全国の飲食店の業態は多岐に渡った。クライアントの多様なニーズに応じて、メニュー開発、厨房設計、オペレーションもこなしていく神谷氏は、“レストラン”の髄まで究めていく。この時の研修で、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの数カ国を視察するが、なかでもアメリカで訪れたレストランで強い衝撃を受ける。
「サンフランシスコの『アクア』、ナパの『テラ』、ロスの『パティーナ』など、“質の高さ”に唖然としました。料理の歴史は自分たちで創るんだという彼らの自由なスタイルに感動しました」
 独立への夢を具体化していくきっかけとなった。

“飲食店のプロ”は賢く開業

開業資金は「3年」で回収が当初からの目標、辺鄙な場所でも通用する“夜型の街”中目黒に決めた。駅徒歩15分、地下1階で家賃は坪1万円の造作譲渡物件、その分食材に投資。カウンターにはデコラ板、ディスプレイ棚にアクリルを使用するなど、内装費も抑えつつ店内にはレトロな空気も生み出していった。26坪にゆったり28席を設け、開店資金はわずか1,000万円。亡くなられた先輩の店の名を受け継ぎ2004年12月「トロワピエロ」が開店した。ワインとサービスを担当するのはマネージャーの山崎氏。豪快な神谷氏を裏で冷静に舵を取る。
「住友迎賓館にいた頃、彼とは寮が一緒だったんですよ。信頼もしていましたので」と神谷氏。
山崎氏が取り揃えるワインは“ヴィオディナミ”(有機農法の一種)を中心に世界各国100種類以上。樽出しボジョレー・ヌーボーや食後酒にもこだわる。持ち前のウンチクで暗示にかかるのか、ワインはどれも造り手の主張が感じられ、個性的なジビエ料理に負けていない。

 

取材中、カウンターの隅にじっくり料理を味わう若いコックの姿があった。
神谷氏は言う、
「彼らの質問には何でもオープンに答えてやるんです、自分がかつてそう教わったように。だって手にいる食材でしか作ってないんですから。若い彼らに伝えたいのは手間だけではない“時間が作る美味しさ”なんです」
そんな神谷氏を訪ねて、日曜日はお客の全員が若手料理人で占めることもあるという。


“神谷シェフの夢は?”の質問に、
「そうですねぇ、内臓料理の専門店なんかやってみたいなぁ。ワインをもっと気軽に楽しんでもらえるような。最後はやっぱり“ナパ”でレストランやりたいですね」
人を楽しませる宿命を背負ったピエロの、飽くなき探求はこれからも続くのだろう。

 レストラン「トロワピエロ」

東京都目黒区祐天寺1-1-1 リベルタ祐天寺B1

03-3793-9090

火〜土/18:00〜03:00(L.O.02:00)、

日/18:00〜24:00(L.O.23:00)

定休日:月

 

 

〜 筆者プロフィール 〜

    吉田 ゆり   

特集記事担当ライター

(社)日本ソムリエ協会認定

ワインエキスパート

大阪生まれ。大阪・京都を食べ歩き燃え上がった“食人魂(しょくにんだましい)”は、数年前東京に移り住みさらにヒートアップ。ワインの守護神「サン・ヴァンサン」と誕生日が同じことから、本人は化身であると信じて疑わず、“布教活動”と称し一人で食べ歩く日々を送る。目標一日3軒。

好評!「恵比寿時々中目黒ところにより港区」でブロガーデビュー。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://www.food-stadium.com/column/54/trackback.html

トラックバック一覧(2)

HOT ISSUE一覧

飲食店PRスタッフ急募!

いろんな業態の飲食店を
メディアにPRする仕事です。

http://www.food-stadium.com

出店・業態開発の相談は

物件探しのお手伝いから
開業、販促プロデュースまで

www.cachette.co.jp