UP FRONT

2008-03-01

【直撃レポート!】中目黒高架下の「村上製作所」が耐震工事で3月29日に閉店、繁盛店のその後は?有限会社イイコ横山貴子社長を直撃取材。

2007年12月17日より開始された国交省の耐震補強工事と中目黒駅の延伸工事に伴い、昭和の名残ある数十件の飲食店はほぼ閉店し、ネオンの消えた高架下はすっかり寂しくなった。すでにほとんどの飲食店が移転オープンする中で未だ営業をし続けている店、それが「村上製作所」である。特徴的な外観、メディアに登場しない店として根強いファンを抱えた同店もついに立ち退き3月末に閉店する。村上製作所のこれまでとこれからを徹底取材した。 (撮影・文 山本なほ)

村上製作所の入り口

 看板はない、ネオンもない。あるのは引き戸の「村上製作所」の文字だけだ。勇気を出して扉を開けたものだけが知っている特別な空間

それが「村上製作所」である。

今でこそ看板を出さない店は珍しくないが、開店した7年前はその斬新さに多くの業界人が店を訪れたそうだ。運営を手掛けるの中村玄、club小羊、月世界、豚鍋研究室(昨年9月末閉店)など現在7店舗を展開する有限会社イイコ(代表取締役横山貴子)。これら全店に共通するのがこの分かりづらい入り口である。

10年前に「201号室」(現中村玄)をオープンし、当時では珍しい”マンションの一室で営業する飲食店”として注目を集めたことから、看板を出さない店(隠れ家)ブームの火付け役だとも言われている。

 
不思議な特別感を客が感じるワケ

何故こんな分かりづらい場所に?と疑問を抱くのも当然かもしれないが、横山社長には勝算があった。

訪れた客は自分だけが知っているという特別感を持ち、まるで秘密基地を自慢する子供のようにやがて誰かを引きつれやってくる。数年前のネット普及した頃からブロガーが紹介するようになり、少しずつ客層も変化してきたというが、この連鎖は続いてきた。長年の常連客が紹介して広がった口コミの力が今も店を支えている。大々的な宣伝が必ずしも必要なわけではない。ということを証明したよい例であろう。面白い店は頼まずとも誰かが宣伝してくれるのだ。

 

 

「大人の遊び心をくすぐり、望んでいたことを引き出すことが目的。」

と語る横山社長の思惑通りと言ったところだろうか。この場所に足を踏み入れたものが感じる妙な高揚感、つい誰かに教えたくなってしまう人の心理、これらをうまく利用し村上製作所は多くのファンを得る繁盛店に成長したのだった。

 

気取らず手をかけすぎない和食の居酒屋メニュー

 

 外観もさることながら店内も町工場の雰囲気を残したつくりで、むき出しのコンクリ壁にブルーシート、電車のガタンゴトンという音をBGMにし、気取らない空間で美味いものを食べさせるというのが村上製作所のスタイルだ。旬の素材を生かした四季の和食メニューのオススメは、今時期なら焼き白子、帆立と椎茸の自家製薩摩揚げ、鰆の西京焼きが人気。ドリンクは焼酎や日本酒を中心にこだわりの銘柄が揃えられており、酒のあても充実している。

  

 

村上名物の蛤の小鍋「蛤風呂」は口がパカッと開いたら食べごろだ。濃い豆乳を使用した自家製豆腐はにがりをテーブルで入れてくれるのでできたてのトロトロが味わえる。今は昨年9月末で閉店した豚鍋研究室の豚鍋がメニューに加えられているのでこちらも要チェック。

 

立ち退きもきっかけの一つ。中目黒のこれから

 

オープン当初から任されてきた河合浩店長は閉店の悔しさがあるなか、潔い姿勢でこう答える。

「立ち退きの話はずいぶん前からありました。今回の撤退についてもお客さんから心配され知ったくらいであまりびっくりはしなかった。築年数がかなり経っている高架下は補強が必要だと思うし、これも一つのきっかけでしょう。場所が変わっても、また自分たちのやりたい事をするだけです。」

 

 

東急建設株式会社による高架下解体工事は5月末までの予定。今後の高架下がどのように変わるかもまだよく分からないというのが現状だ。

同時期に進められている道路向かいの東急ストア側でも上目黒一丁目再開発計画による高層マンション建設が進捗中、駅周辺の風景は大きく変化することが予測できる。

「住みたい地区NO1」として最も注目を浴びる人気エリアに成長した中目黒。今後も目が離せないエリアであることは間違いない 。

 

 

 

その後のその後。閉店後について聞いてみた。

 村上製作所と豚鍋研究室のDNAを一部引き継いだ店が、4月中に祐天寺にオープンすることが決定した。2階建ての古い民家を改造した新しい隠れ家では一体どんな戦略を思案しているのだろうか。

「祐天寺は新コンセプトで勝負します。他がやっていない新しい何かをテーマに必ずあっと言わせるようなことをやりたい。今までは追求してきたことが真似され一つの流行で終わることを懸念していた部分がありました。しかしこれからは流行をつくる側として、新しさを発信し続けていきたい。地元密着型という軸は変えず、イイコ独自のブランド力を構築していきます。」

普段は控えめな横山社長の内に秘めた志を垣間見る言葉だった。

立ち退き宣告を受けた飲食店の中で、最後の一店となるまで粘りの営業を続けた村上製作所も、残り1ヶ月で丸7年の歴史に終止符を打つ。

名残惜しむ常連客に交じり、これまでの高架下の最後の見届け人となってみてはどうだろう。

運がよければ祐天寺の謎もこっそり教えてもらえるかも?しれない。

 

 

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有限会社イイコ

【店舗データ】
店名;村上製作所
住所;東京都目黒区上目黒3-5-19
電話;03-3710-9804
坪数;15坪
席数;25〜30席
営業;3月29日土曜日まで

 

〜著者プロフィール〜
ライター&コーディネーター 
         山本なほ
 調理師 中医国際薬膳師  野菜ソムリエ
 
食べて健康、キレイになれるをモットーに
欲深く食を追求してます。
レストラン、企業向けの
薬膳コーディネーターとしても活動中。
 

 

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