編集長のつぶやき

【VOICE FROM EDITOR】2008-11-27

2009年「飲食トレンド」を予測する!(前編)

2009年「飲食トレンド」を予測する!(前編)

今週と来週のつぶやきは、2009年の飲食トレンド予測についてまとめた原稿を掲載する。講演や飲食トレンドに関する原稿依頼、取材などで下書きしたものを、整理して2回に分けて発表したい。今回は2008年の総括。前編をお届けする。

  なぜトレンドなのか?
トレンドは時代の変化、人々の空気を映す鏡。それを無視して、いまの消費者を満足させる店はつくれない。トレンドとブームは違う。トレンドは時代のニースの変化。ブームは一過性の現象だ。ブームを追いかけてはならない。ジンギスカンともつ鍋の違いは何だったか?「もつ鍋」は美食健康というニーズが背景にあり、ブームからトレンドとして定着した。
トレンドには波と軸がある。時代のニーズが背景にあるのが“軸とトレンド”、一過性の流行に終わるのが波トレンドだ。変化の時代に勝つには、この“軸トレンド”を押さえ、それをMDにうまく取り入れていくことが大事。映画やTV番組をつくるときに、時代にあったシナリオやキャストを使うのと同じ。まずヒットさせて、波を起こさなければ始まらない。
 
2008年の飲食トレンドを総括してみよう。
今年は前半浜松町や五反田、赤坂、銀座などでミニ商業施設のオープンが相次いだ。旧来のチェーン居酒屋など大手が出店を控える傍ら、新興のニューチェーン企業の新業態出店が集中した。大型商業施設だけでなく、街場でもオープンが相次ぎ、駅前の商店街、隠れ立地などで、ベタな横丁や個店が次々に生まれ、“こだわりの”あるベタ業態。がトレンドとなった。
しかし、9月のリーマンショックで潮の流れは激変した。出店計画を見直す企業が増え、ディベロッパーやビルオーナーにとっては、厳しい買い手市場への転換を余儀なくされている。坪1万を切る大型商業施設の入れ替え物件が出るなど、成長している元気な企業にとっては逆にチャンスとなっている。2003年の第一次レストランバブル、2007年の第二次レストランバブルが崩壊し、2009年はマーケットの破壊と再生、外食大再編、経営者盛大交代の節目の年になるだろう。
今年の商業施設オープンを振り返ってみる。
・3月7日〜4月 六本木ヒルズShop&Restaurants大幅リニューアル・
・3月19日 東京ドームシティMEETS PORT(ミーツポート)」
・3月29日 銀座八丁目「JEWEL BOX GINZA」(竹中工務店)
  ・4月10日 「三井入間アウトレットパーク」(三井不動産)
・4月17日 「AKIBA TOLIM(アキバ トリム)」(阪急電鉄)
424日 「チョムチョム秋葉原」(アトリウム)
・5月30日 「恵比寿横丁
・9月3日 「横浜モアーズ
・ 9月11日、13日恵比寿「Q PLAZA」
9月13日 「GINZA g CUBE」(三井不動産)
9月「銀座888」
10月28日 「SUNAMO」(三菱地所)
 
今年前半の話題の締めくくりは何といっても5月30日の「恵比寿横丁」の誕生だった。おしゃれエリアで敢えてベタコテ、超アナログ開発をやったわけだが、これが大成功。連日、活況を呈している。
 
秋の陣は横浜、恵比寿と銀座。9月3日 、「横浜モアーズ」のリニューアルが完成。8月22日に先行オープンした8階「the DINING(ザ・ダイニング)」に続き、9月3日、9階のレストラン街「MOST」がオープンした。稲本健一氏がプロデュース、神谷利徳氏が環境デザインを担当し、ゼットン、ダイヤモンドダイニング、ジェイプロジェクトの“第二世代”勢揃いした。
東京では、恵比寿駅の西口改札を右に出てすぐのところに、東急不動産が建てていた駅前ビル「EBISU Q PLAZA」が9月オープンした。1〜2階はもともとあったアウトドア総合ブランド「Montbell」。3〜5階には、東急不動産グループ直営のフィットネスクラブ「東急スポーツオアシス」が入った。飲食は地下1階と6階の2層。これが160坪を超える大箱。地下に恵比寿ドミナントの焼鳥「ももたろう」「SACRA」「LUXES」などを展開するジャパンチキンフードサービスが300席の「MEDUSA」、6階には関西新興勢力きちりの「KICHIRI」が恵比寿初上陸。超大箱での出店は話題を呼んだ。
銀座では、中央通り7丁目、8丁目で新築ビル、新店オープンが相次いだ。まずは、9月13日にオープンした「GINZA g CUBE」。7〜12階に8店舗が入る。三井不動産の開発だが、最初は地方ブームに乗って地方初の“郷土料理専門店”でまとめたかったらしいのだが、結局、郷土料理らしいのは10階の「郷土・松江の味 銀座皆美」と11階の「隠(おん)」ぐらい。あとは、柿安、大庄の「ととや市場」、台湾火鍋など。施設的にも、表に向いた「H&M」が目立ち、飲食店が裏通りからしか入れない。三井不動産もブランドの“奢り病”に陥ったのだろうか。ベルビア館の二の舞にならなければいいが。
銀座8丁目には「888(スリーエイト)」ビルがオープン。こちらは、住宅専門の仲介会社がリーシングを担当したためか、オープンの足並みが揃わない。先行して開店したのが、地下の新宿からやってきた「銀座矢部」とイタリアン「RICETTA LIETO」、7階「のど黒屋」、ゴルフバー「GMA8 GINZA」と芝公園の高級ステーキ鉄板の姉妹店で高級網焼き「KOSO GINZA」が入った。

こうしたなかで、唯一明るい材料として注目したいのが、「六本木ビルズ」のリニューアルである。「都市生活者が欲しい店」をターゲットに決め、夜遊び族や周辺の主婦層などが“使える店”を積極的に誘致した。WESTWALK5階の「RIGOLETTO」などはまさにその象徴。夜遊び族が戻ってきて、毎夜活況を呈している。ランチには周辺の主婦やワーカーも多く利用するようになった。有名商業施設だからといって、ホテル並みの割高な単価を取れる時代ではない。観光客しか行かないような店に、飲食好きの夜遊び族が行くわけがない。今回の六本木ヒルズリニューアルは、今後の都心型大型商業施設リニューアルの好例になるだろう。かといって、新宿ルミネエスト「7・8ダイナー」のような極端なターゲットの差別化はいかがなものだろう。駅上というパブリック的な施設をいかにも「私企業の勝手だ」という論理を振りかざしてやりたい放題していいわけがない。
いずれにしろ、商業施設、飲食ビルは企画コンセプが決まるのが1年前、リーシングが決まるのが最短半年。だから、企画を決めて、テナントを決めるまでにタイムラグがある。トレンドや経済環境がめまぐるしく動くなかで、この時間のギャップがネックになってきている。そればかりか、9月のリーマンショックによって、新興不動産が開発したファンド物件やリート物件は軒並み計画の見直しを迫られている。株式相場低迷で、上場を狙っていた新規企業も出店見直しやリストラを迫られている。信用収縮による飲食出店に環境への影響は甚大だ。家賃破壊現象も起きており、この半年、一年は出店も止まるだろう。一方で、閉店、廃業が進み、2007年をピークとした“レストラン第二次バブル”は完全に崩壊し、東京マーケットは大波乱時代に突入したと言っていいだろう。
 

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【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、レストランビジネス・プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。日本ショッピングセンター協会発行の『SC JAPAN TODAY』4月号より「食のマーケット&トレンド」を連載開始。
2007年5月、有限会社カシェットから「フードスタジアム」を分社独立、渋谷区代々木にフードスタジアム株式会社を設立。業界トップのWEBニュースとして、現在月間PV600,000を超える東京レレストラン&グルメニュース「フードスタジアム」の拡大、全国展開に乗り出す。『ARIgATT』の復刊も模索中。
佐藤こうぞうブログ「つぶやき編集長の『毒にも薬にも…』」も開始。“裏つぶやき”として話題に。

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【VOICE FROM EDITOR】2008-11-20

“ビル一棟借り”が増えている!

“ビル一棟借り”が増えている!

金融不況の影響で、都心の商業ビルのテナントがなかなか埋まらないという現象が起きているが、3〜4階建ての小型ビルを一棟ごと一括して借り受ける動きが最近にわかに増えている。飲食業界は個店主義の波を迎えているが、個性を強烈に打ち出せるこの出店方法、ブームにさえなりそうだ。

もちろん、昔から一軒家や2階建てのビルを飲食店として丸ごと借りるケースは多い。しかし、最近は3階建て、4階建てのビルを一括して一業態で借りたり、業態を分けて出店する例が増えているのだ。最近のケースだけでもこれだけある。
・「根室食堂」(渋谷、4階建て、立ち飲み)
・「焼きもん屋 炉端かば」(五反田、4階建て、炉端居酒屋)
・「手前みそ」「三三八」(五反田、3階建て、串焼き、魚串)
・「銀蔵」(銀座、4階建て、寿司)
・「魚がし日本一」「のぶちゃん」(新橋、3階建て、立ち食い寿司、もつ焼き)
そして、11月18日にオープンしたばかりの「薩摩八郎」(九州料理)は9階建てビルを一括して借りて出店し、業界を唖然とさせている。関西で40店舗展開するHASSINの東京進出第1号店だが、デザインを若手のカームデザイン・金澤拓也氏に依頼し、この点でも話題を呼んでいる。

こうした“ビル一棟借り”は、「フェイスを作りやすい」「ビルそのものが看板になる」「エリアや通りのランドマークになる」「企業パワーを誇示できる」などのメリットがある。そして、何よりもディベロッパーや家主、他のテナントを意識しないで、大胆なプレゼンテーションができることが大きい。飲食マーケットトレンドが1業態多店舗化のチェーン主義から多業態少店舗化のニューチェーン主義、そしてオンリーワン志向の個店主義にシフトしている中で、この一棟借りはいわば“究極の個性化”と言える。

これまで“大型店”といえば、大型の商業ビルのワンフロア100坪以上、あるいは50坪以上の2層借りというのが一般的だったが、それが「1階は家賃が高い」「空中階は集客が難しい」という判断が広がり、さらに他のテナントと看板を共有し、客を奪い合う形の“没個性”型の出店は、もはや魅力を失ってきた。一方で、パワーのある大型店志向の外食企業が個店主義の走る一つの方向性として一棟ビルに目をつけたと言えるのではないだろうか。

そして、ここにきての“家賃破壊”による借り手有利への市場環境の変化。“脱・商業ビル”“脱・ディベロッパー”の動きはますます強まるのではないか。今後は、一業態一括借りから、一棟ビルで複数業態を出す「手前みそ」「三三八」のサザビーリーグのようなケースが増えそうだ。横(ヨコ)丁ならぬ“タテ丁”ブームが来るかもしれない。

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【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、レストランビジネス・プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。日本ショッピングセンター協会発行の『SC JAPAN TODAY』4月号より「食のマーケット&トレンド」を連載開始。
2007年5月、有限会社カシェットから「フードスタジアム」を分社独立、渋谷区代々木にフードスタジアム株式会社を設立。業界トップのWEBニュースとして、現在月間PV600,000を超える東京レレストラン&グルメニュース「フードスタジアム」の拡大、全国展開に乗り出す。『ARIgATT』の復刊も模索中。
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【VOICE FROM EDITOR】2008-11-13

“家賃破壊”が始まった…

“家賃破壊”が始まった…

「ついに」というか、「やっと」というか、飲食店舗物件賃貸家賃の相場が値崩れを起こし始めた。オフィス賃貸に比べ、閉鎖的な店舗物件流通の世界だけに、ある意味“タブー”な発言だが、あえて書く。

なぜならば、それは飲食プレーヤーにとって“千載一隅のチャンス”だからだ。店舗の家賃はこれまで、あまりにもサプライサイド、つまりディベロッパーやビルオーナー、不動産仲介業者、リーシングブローカー、サブリース業者の側に主導権があり過ぎた。とくに東京の都心部、中央区、港区、渋谷区では、坪家賃30,000円以上が当たり前、1階路面物件になると40,000〜60,000円という物件も少なくなかった。2003年、2007年の二度のレストランバブルを経て、まだ都心に大型商業施設開発余地があったうちはいいが、もはや残された物件は中小型ビルで、ちょうどファンドやリートなどの金融のしくみを導入した利回り目的、転売目的の新興不動産企業の成長ビジネスモデルの道具だった。これが9月の“リーマンショック”を機に、その道具は玩具でしかなかったことが明らかになった。彼らを支えていた外資や投資ファンドはマネー供給の蛇口を止め、はしごを降ろして去っていった。

もう、“砂上の楼閣”は崩壊した。そして“家賃崩壊”“店舗流通ビッグバン”が起きる。その兆候は現れている。大手ディベロッパーでさえ、都心のブランドの高い商業施設を坪20,000円前半、ところにより10,000円台でリーシングを始めている。新興不動産企業の新築商業ビルも、坪35,000〜40,000円を目論んで利回りを弾いていたが、その見直しを迫られ、「いくらで貸していいのかわからない」とリーシングスタンスの足元さえ揺らぎ始めた。その結果、「ビルは建てどもテナント決まらず」という、“新築ビル空洞化現象”があちこちで起きている。ただでさえオーバーストアー現象を引き起こしていた飲食店舗マーケットである。これはタダゴトではすまないだろう。こうした情報は、すでに業界筋の間では半ば常識で、水面下では貸し手と借り手の腹の探りあいや駆け引きが始まっている。そして、彼らの共通の関心事は「いったい適正相場をどのあたりで着地させるべきか」ということである。

私は常々、店舗家賃については、月坪売上げが30万円上げられる物件なら坪30,000円、20万円なら20,000円が適正ではないかと思う。つまり、対売上げ家賃比率10%である。あとはテナント側の努力で売上げがそれ以上いけばFLRコストのR(家賃)コストは8%にも7%にもなる。こう考えると、貸し手側も借り手側も、「この物件はいったい月坪売上げをどのくらいに想定すべきか」という問題設定をすべきであって、貸し手側が一方的に、あるいはビジネス上の事情で家賃を決めるのはおかしいのではないか、と思うのだ。両方がその物件についての価値を共有し、適正利益をシェアし、長くディールを続けることこそ重要なのではないか。

貸し手側が家賃を下げたくなければ、その物件の付加価値を上げるために、真剣にリーシングコンセプトを企画し、テナント選定の基準をマーケットオリエンテッドにシフトしなければダメだ。ディベロッパーや不動産仲介会社はもっと「マーケットの声」を聞くべきなのだ。“家賃崩壊”時代の到来は確実。物件のサプライサイドの大きな転換期がやってきたといえよう。テナント側もアクションを起こすべきだ。適正家賃に戻すために、既存の契約条件の変更やリスケジュールを迫ってもいいという環境がやってきたと言うのは、言い過ぎだろうか。

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【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
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【VOICE FROM EDITOR】2008-11-06

外食企業も「ダイバーシティ経営」を学べ!

外食企業も「ダイバーシティ経営」を学べ!

「いま元気な外食企業を挙げよ」と言われれば、おそらく多くの人が「ダイヤモンドダイニング」と答えるに違いない。11月はなんと8店舗の集中出店。しかも商業施設あり駅前ビル物件ありの好立地ばかりを押さえている。改めて、同社の強みとは何なのか考えてみたい。

11月の出店概要はこうだ。
・11月5日、食・酒「蔵仕込み夢膳」(愛宕グリーンヒルズ)
・11月6日、Belgian Beer & Tapas「BEER GARAGE」(カレッタ汐留)
・11月11日、九州料理・焼酎「博多黒太鼓」(浜松町)
・11月13日、手羽先専門店「真骨鳥」(新橋)
・11月14日、「絵本の国のアリス」(新宿)
・11月25日、かつお藁焼き・土佐料理「竜馬が如く」(新橋)
・11月25日、土佐串焼き・地鶏料理「土佐ジロー」(新橋)
・11月28日、Pizzeria & Belgian Beer「Dear MARBLE」(吉祥寺)

エリアといえ、業態といえ、物件形状といえ、実に多様である。この出店が予定通り進めば、通算75店舗である。ご存知のようにダイヤモンドダイニングは、社長の松村厚久氏が創業当初から「100店舗100業態」の展開を打ち出し、その“公約”通りに展開を続けてきた。このままいけば、来期には100店舗達成も不可能ではないだろう。いま振り返ってみて、同社の経営を評するならば、私は「ダイバーシティ経営の成功」と言いたい。それまでの外食チェーンが1業態多店舗化、単一カルチャー経営だとすれば、ダイヤモンドダイニングはダイバーシティ(多様性重視の経営)によるニューチェーンオペレーションと言っていいからだ。

ダイバーシティ経営とは、グローバル化に対応して、企業が国籍や人種、性別に関わりなく幅広い人材を登用していくスタイルとして、2003年頃からIBMなどのアメリカの企業の間で導入されてきたマネジメント手法だ。日本でも、ソニーや松下電器(現パナソニック)がいち早く導入し、日本型の「個を重視する経営へのパラダイムシフト」を完成させていった。しだいに「ダイバーシティ」という経営用語は拡大解釈され、「多様な価値観、異質なカルチャーを重視する経営」という意味に変わってきた。さらに、変化するマーケット、多様化する顧客ニースに対応するためにマネジメント手法として注目されるようになったのだ。

私はずっと身近でダイヤモンドダイニングの経営を見てきて、「これこそダイバーシティ経営ではないか」と膝を打った。顧客の価値観の大きな変化により、いままでのような小手先のマイナーチェンジではなく、思い切った業態再構築やMDの特化が必要となってきている。そのためには、変化対応力やボトムアップ型の多様なアイデア採用などが不可欠となってきている。トップダウン型、単一カルチャー型のマネジメントでは、もはやこのマーケットの構造変化の時代を乗り切ることはできないだろう。いまこそ、外食企業は「ダイバーシティ経営」に学ぶべきだ。

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【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
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