編集長のつぶやき
新しい仕掛け人たちが蠢き始めた…

新しくオープンする店を訪ね、新しく誕生する商業施設や街を歩いていると、まったく次元の違う磁場や空気感を感じるときがある。時代を先取りする仕掛け人たちの新しい企みに出会う瞬間である。
次世代飲食ベンチャークラブ“サードG”を立ち上げたせいだろうか。私のところに、最近まったく新しい感覚の飲食人たちの“仕掛け”ネタは飛び込んでくるようになった。それは取材で街を歩いているとき、あるいは自然に人ヅテに飛び込んでくるのだ。時代が動いている。業界の旧秩序が崩れ、新しい息吹が台頭し始めた。銀座八丁目の新築ビルJEWEL BOX 11階に3月28日オープンする「AURUM」。スワロフスキーの入るビルに80坪を超える広さ。ファーストクラブのサービスを目指したインターナショナル料理で、朝5時まで営業するという。経営は株式会社ANALOG、社長は音楽会社を経営する中垣健さん(34)、実際に店を仕切るのは、パークハイアット、スティルフーズで経験を積んだ副社長の稲塚晃裕さん(34)。未来志向の二人の話を聞いているとワクワクする。
恵比寿の裏通りを歩いていて偶然見つけた「MERCER CAFE」。昨年12月25日、ひっそりとオープン。大阪の“飲食仕掛け人”たちが東京に進出した1号店で、「お茶が飲めて、食事もできて、お酒も飲める」という気軽な“大人のファミレススタイル”を提案。仕掛けたのは、「カフェガーブ」のバルニバービで飲食の世界に入り、北新地の伝説のラウンジ「ノースクラブ」の店長をつとめたこともある森野成貴さん(31歳)。東京でカフェ文化を再興したい、と真顔で言う。山本宇一さんや中村貞裕さんを超えたい、と言う。その森野さん、早くも東京2号店の物件を見つけた模様。今度は「ノースクラブ」のような店をつくりたいと息巻く。彼もパッションがビリビリと伝わってくる。私も武者震いしてしまう。
青山のラ・ポルト地下に3月11日オープンした海老ダイニング「Preeeat-Aoyama-」。メニューの6〜7割が海老づくし。世界中の海老をいろいろな調理法で楽しめる。この店を仕掛けたのもバルニバービ出身の上浦さん。所属していた不動産会社の「yzcorp(ワイズコーポレーション)」で飲食事業部を立ち上げ、分社化させてのスタートだ。「業態ではなく、素材から店づくりを考えた」という。既成概念にとらわれない発想。それがありそうでなかった業態を結果として生み出すことになる。未来はブレイクスルーから生まれる。いや、未来を創る芽は時代の裂け目からしか生えてこない。その種を彼ら新しい仕掛け人たちが蒔き始めたということか。面白い時代が来そうだ。
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【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
“郷土料理ブーム”の次は“マイナーグルメ”が来る?

F-1、R-1ならぬ“B-1グランプリ”というのをご存知だろうか?全国のご当地グルメのメジャー級に対抗するB級のご当地料理を推進し、地域おこしをしようとする団体が主催するもの。
“メジャーグルメ”が大阪・広島のお好み焼き、仙台の牛タン、札幌ラーメン、名古屋のきしめんなどとすると、B-1グランプリが推す“B級グルメ”は八戸せんべい汁、富良野オムカレー、北九州市小倉焼きうどん、久留米やきとりなどの“マイナーグルメ”のこと。主催団体は「B級ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会」、通称「愛Bリーグ」(アメリカの私立大学のアイビー・リーグをもじった)。第1回B-1グランプリに出展した団体が中心となって2006年7月に設立された。以降、B-1グランプリに参加するには、この「愛Bリーグ」に加盟することが条件となっている。
現在、「愛Bリーグ」に加盟しているのはまだ30足らずだが、「青森生姜味噌おでん」「「横手やきそば」(秋田)「行田ゼリーフライ」(埼玉)「厚木シロコロ・ホルモン」「各務原キムチ鍋」(岐阜)「高砂にくてん」(兵庫)など、まだ聞きなれないユニークな料理がエントリーしている。来場者が1膳2本の箸で2票ずつ投票する仕組みだが、昨年開かれた第2回のグランプリは、1位「富士宮やきそば」(1回目に続き連覇)、2位「八戸せんべい汁」、3位「静岡おでん」が選ばれた。これらは東京の飲食店でも目に入る機会が増えている。第3回は2回目で9位だった「久留米やきとり」の久留米市で11月に開催される。
一方、農水省が地方活性化施策として推進している「郷土料理百選」も盛り上がっている。昨年12月、服部幸應氏を委員長とする選定委員が全国1,700点の候補から「農山漁村の郷土料理百選」「御当地人気料理百選」99点を選び出した。こうした官民両サイドから盛り上がってきている“ご当地グルメ”推進の動きは、飲食店にとって大きなチャンスである。いち早く情報をキャッチし、メニュー開発の参考にしてはどうだろうか?“マイナーグルメ”の中にこそ、ヒットを仕掛けるヒントが潜んでいるに違いない。
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【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
地方に“宝”あり!

たまに地方に来ると発見が多い。今日はこのつぶやきを高松で書いているが、昨晩会った香川中心に16店舗展開する「平井料理システム」オーナーには圧倒された。
「平井料理システム」は1984年創業、高松・福田町に居酒屋「吾割安」を開いたのがスタート。現在、大衆食堂、大衆酒場、料理屋、酒と飯、イタリアンビストロなど地元に根付いた個性的な店を16店舗展開している。名物“徳島ギョーザ”のインターネット販売も行なう。社長の平井利彦さんは50歳。幼いとき両親を亡くし、祖父母の家で小学生の頃から鶏糞の清掃や新聞配達などのアルバイトを重ね、中学からはもう自活していたという。高校でバイク免許を取るや暴走族に。やがて飲食の世界に流れ、27歳のとき3,000万の借金して1号店を開業した。
その平井さんの原点となった「吾割安」は大箱で家賃30万ながら創業当時は月商1,800万円を稼ぎ出した。「10年その状態が続きました。毎月500万の粗利です。打ったボールは絶対落ちないものだと錯覚してしまいました」と懐古する。材木倉庫を改造した店で、最近流行りまくった“レトロ&ノスタルジック”スタイル。これを平井さんは25年前に始めていた。人気メニューは焼き餃子や生レバー、コロッケ、焼き鳥、そして〆のラーメン。業態ではなく一品一品、この店でしか食べられない名物をつくってきたことが勝ってきた理由だ。実際、平井さんの掲げるスローガンは“1店1名物”。要は客がそれを食べたいために通う必然性、“旨いものをつくる”ことである。
高松で基礎をつくり、いまや徳島、松山、岡山、そして神戸にも進出した。しかし、平井さんは「東京には絶対出ません」と言う。その理由は、地元では勝てるセオリーが確立できても、それが東京で通用する保証がないから、ということ。だからといって、東京的なものを否定しているわけではない。空間づくりはミュープランニング&オペレーターズに頼み、サービスはグローバルダイニングから学んでいる。その平井さんが飲食業を通じて目指すのは「教育」。社是は「いいオトナに、なろう」。自らの体験から築き上げたものだが、スタッフの育成に関しては現場に入り、手を上げてまで厳しく教育する。そして、「出来の悪いヤツほど辞めさせない」と言い切る。従業員の両親にまで一人一人盆暮れに贈り物をする心配り。平井さん本人は出なくとも、その“平井学校”で育った人間から東京進出を果たす者が出てくるに違いない。それにしても、地方には“宝”が隠れている。香川は讃岐うどん、一鶴だけではありません。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
「赤坂サカス・レストラン街」の歩き方

今日オープンの「赤坂Bizタワー」。3日、4日に連続して下見、試食してきたが、第一印象は悪くない。ミッドタウンより“使える”ことは間違いないのだが…
「赤坂Bizタワー」。まずこの名称がよくない。「赤坂サカス・レストラン街」でいいではないか。あるいは“サカス・グルメ”とか。TBSの遊び心と三井不動産の温度差が、この施設のちぐはぐなところだろう。確かに“Bizワーカー”をサポートする機能はわかる。これは三井不動産がこだわったのだろう。地下1階にワーカーのランチ需要を狙ったラムラの“和食フードコート”がドカンと幅をきかす。これがダサい。遊びがない。TBSマンや博報堂の遊び人たちは敬遠するに違いない。1階のすぐ角に閉鎖的なフォサードのペッカリイ・ポルトガル料理「カステル・ブランコ」をもって来たのもどうか。重たい。フォーシーズがスペインバルをやるということで期待していた「Modern Cataran Spanish "BIKINI" (モダン カタラン スパニッシュ ”ビキニ”) 」もがっかり。どうみてもレストラン、狭いスペースだから客単を上げざるを得ないのだろうか。新丸ビルの「ソバキチ」で見せたあの開き直りが欲しかった。これでは、いま勢いのあるベルギービール「デリリウムカフェ」の独り勝ちだろう。もちろん、ミュープランニング&オペレーターズの「ジムトンプソンテーブル」はオレンジカラーが効き過ぎのような気もするが、女性人気は確実に取っていくに違いない。
大家さんのTBSが今回はかなり力を入れている。ライブハウスや劇場はもちろんだが、商業施設にもかなり口を出したと聞く。しかし、リーシングを担当した三井不動産としては確実に数字を上げなければばらないから、そう遊べない。それはわかる。最大の地権者「ざくろグループ」への配慮もある。三井不動産・商業施設本部アーバン事業部小島浩史事業推進グループ長は記者説明会で「老舗業態と新業態をバランスよく配置した」と言っていたが、もう少し“新しい赤坂”の花を咲かす艶気が欲しかった。成功は、一ツ木通りと赤坂通りをつなぐ“仲通り”と名付けた路面をつくったこと。この角と角を取ったのはゼットン・稲本健一さんととカーディナル・三好康弘さんだ。さすが感度が高い。ゼットンは今度こそ“美味しいメシ”をとイタリアン「grigio la tavola」で勝負。しかし隣のシガー&ワインバー「b&r」のほうがよくできている。「P.C.A. Pub Cardinal Akasaka」も新川義弘さんが広めている“スパニッシュイタリン”料理を前面に出し、丸の内「TOKIA」の「P.C.M.」と差別化した。スタンディングやバールにも確実に“料理回帰現象”が起きているということか。
この個性の強い2店の真ん中にちょっと力の抜けた“クレープリー(そばガレット)”「プレッツカフェ」をもってきたのも悪くない。この店は神楽坂の「ル・ブルターニュ」のFC業態。ジーとなっているのはなんとグルメ杵屋のともえ商事。内装や家具がイケてないが、“そばガレットとシードル&フレンチビール”のスタイルは必ずブレイクするに違いない。これらの仲通りチームは、いずれもオープンテラスを活かせる造り。ここで深夜営業して夜の賑わいを演出できれば成功だ。一ツ木通り沿いの2層のアネックスに出店した「マキシム・ド・パリ」は微妙。2階のビストロ「Vieille Vigne MAXIM'S de Paris」はマキシムのディフュージョンで内装はいいが、サービスがどうか。堅さが抜けなければ若い人は行かない。50種類のグラスワインを提供するというカフェ・ワインバー「Côte de Rouge」も一見入りやすい気はするが、どうか。それをチェックしてみたい。地下1階で8坪を取ったダイヤモンドダイニングのチャイニーズバール「爆麺 闇雲堂」。鳴り物入りの“爆麺(バオメン)”が果たして爆発するかどうか注目だが、ともかくこの赤坂サカスに出店した“宣伝効果”で投資はすぐに回収できるだろう。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。






