編集長のつぶやき
いま、なぜ“サードG”なのか?

昨日1月30日、新世代飲食ベンチャー経営者交流会“サードG”の旗揚げパーティーを開催した。プレーヤー(経営者)、サポーター含めて40人近いメンバーが集まった。
会場は「居酒屋のカシータを目指したい」と飲食ビジネスに入った伊藤豊和氏が経営する表参道「豊和(HO-WA)」。アパートを改造した木造の和食居酒屋だが、なかなか空気感のいいテラス席があり、そこを会場に使わせていただいた。司会進行役は国分寺で「うさぎ亭」など3店舗(2月14日に4店舗目をオープン)経営する小島直人氏(27歳)。小島氏は本拠地の国分寺を現場に任せ、今年は都心で暴れたいと鼻息が荒い。大嶋啓介氏似のイケメンで、スター性がある。「千葉の武長太郎(一家ダイニングプロジェクト=大嶋氏の子分?)、国分寺の小島。この二人の若大将が要注目」と私は見ている。
乾杯の音頭をとっていただいたのが、「とらふぐ亭」でマザーズ上場を果たした東京一番フーズの坂本大地氏。「私も16年前は新宿歌舞伎町の辺鄙な場所で苦労しながら1軒を立ち上げた。そこからです」と新世代経営者たちを励ますスピーチ。そういえば、その店、私もサラリーマン時代に使わせてもらっていた。「2000円台でふぐコース!」。いま思えば、安上がりの“口説き系和食店”だった。懐かしい。
“第三世代”を代表して最初に挨拶したのがエムグラントフードサービスの井戸実氏(30歳)。郊外でステーキ&ハンバーグの店をチェーン展開、ファミレスや焼肉店の居抜きを次から次へと取得して店を増やしていることから「ロードサイドのハイエナ」と言われている(自称?)。私は「2008年の注目株」と見ているが、本人はスピーチで「私は有名になりたいんです」。ハッキリしていて気持ちがいい。
“サードG”のリーダー役として期待しているのが東京レストランツファクトリーの渡辺仁氏。六本木で10年前、ITベンチャー経営者が集まる会員制バー「48」を開業、いまは「御曹司 きよやす亭」などセレブ和食をドミナント展開している。無借金経営とか。「今後、4,000〜6,000円単価の店を“20店舗同時出店”してみたい」などと話し、ベンチャー精神旺盛。紅一点は昨年12月に恵比寿東口五差路角に大型店「海鮮酒房 肴や 恵比寿本店」を出店し度肝を抜いた創コーポレーションの松崎陽子氏。三次会以降は彼女が主導権をとったとか。
遅れてきた代表幹事のダイヤモンドダイニングの松村厚久氏。「外食アワード2007」を受賞する(2月8日表彰式)業界のニューリーダー。私は松村氏に「第二世代から第三世代の橋渡し役」を期待しているが、松村氏はスピーチで「橋渡し役ではなく、私は潰し役になる」と問題発言。私が翻訳すると、「井戸君たちは仲間でつるみ過ぎ。そんな他力本願では成功しないぞ。1人の力で伸びて来い」とハッパをかけているのだ。そこが松村さんの本当に優しいところ。
そんな流れのなかで、自然に“サードG”の役員が決まった。代表幹事は松村氏、副代表幹事は渡辺氏。そして新世代代表で井戸氏が幹事長に就任。小島氏、ユナイテッド&コレクティブの坂井英也氏(「てけてけ」経営)が幹事となった。さらに、この交流会のもう一つの目玉が新世代店舗デザイナーたちを集めたこと。DDやエイチワイシステムのコンセプトレストランを手掛ける大阪出身のカームデザイン金澤拓也氏。そしてグルーバルダイニング出身のアッタ戸井田晃英氏、SWeeT佐野岳士氏。戸井田氏、佐野氏はHUGE新川義弘氏の店やカシータなどを手掛けてきた。二次会はその佐野氏がデザインした「カシータ ラウンジ」へ。カシータの雨宮龍氏も顔を出し、彼からカシータ流サプライズのお皿がプレゼントされた。皿にはチョコレート文字で「野望」と書かれていた。二次会も佳境に入った頃、ワンダーテーブル秋元巳智雄氏が登場した。
いま、なぜ“サードG”か?
それは、こうした交流会から新しい流れが生まれるに違いないと思ったからだ。ざっくばらんに語り合う。刺激しあう。ときには批判し、ときには褒めあう。未来を信じ、未来に賭ける若い感性と情熱を結集すれば、何かが変わり、何かが生まれるはずだ。
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【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
「ハマサイトグルメ」VS「ムーンストリート大門」“浜松町戦争”の行方

浜松町に同時期に二つの飲食施設が誕生した。さっそく両施設をパトロールしてきたので報告したい。“浜松町グルメ戦争”の勃発である。
まず1月15日、三菱地所と東急不動産が「汐留ビルディング」1・2階に飲食ゾーン「HAMASITE Gurume(ハマサイトグルメ)」をオープン。次いで1月22日、大門交差点近くに飲食ビル「Moon Street DAIMON(ムーンストリート大門)」がオープンした。事業主は香港に本拠地をもつ不動産ファンド。「サンストリート」ブランドで昼型の商業施設に実績があるが、“夜型”は初めて。浜松町・大門エリアはオフィス人口に比べて飲食店の数がまだ少なく、昼は“ランチ難民”が溢れ、夜は他のエリアへの“流失リスク”を抱える。
両施設もそうしたマーケティング上の課題を共有、オフィスワーカーを取り込むための“一味違う”“ワンクラス上の”グルメシーンを提供することが今回のミッションだった。各施設とも地元の高感度OLやビジネスマンへの訴求に重点を置き、派手なプレス向けオープンニングレセプションは控え、独自のプロモーションを行なった。「ハマサイトグルメ」はコアな“バーチャル客”としてハマちゃんならぬ「ハマさん」(浜 松男、45歳、ハマサイト・プリント・ジャパンINC 第一営業部 係長)を想定、「大門交差点から見える新しいビル」であるハマサイトグルメ各店にTPOで通うシーンを想定したショップガイドを作成して頒布している。
そのガイドがいみじくも指摘しているように、浜松町の中心は大門交差点。そのすぐ近くに立つ「ムーンストリート大門」は立地的に有利である。JRのガードをくぐり、海岸エリアに歩かなければならない「ハマサイトグルメ」までわざわざ行くには、積極的な来店動機をつくる必要がある。しかも、ビルのオフィスはまだ埋まっていない。ビルに勤めるワーカーのシャワー効果を期待できないなかでの“見切り発車オープン”である。テナントの中には昨年末に“フライングオープン”した店もあったようで、テナントの足並みの乱れや出店時期が遅れる“歯抜けスペース”も目立つ。1月25日の“オープニング祭り”が実質的なオープンセレモニーになるが、そこから“爆発”することを願いたい。
さて、テナントで私が気になった店をあげておこう。「ハマサイトグルメ」でチェックしたいのは、大衆肉割烹「ハラホロヒレハレ」、大阪梅田で50余年の老舗串揚料理「雲仙」、蕎麦とおでんの和食居酒屋「藪へゑ」、山陰料理、海鮮炉端「かば」の4店舗。「ハラホロヒレハラ」は「もつ福」ブランドを育てたアキナイの三宅茂幸氏の新業態。牛・豚を大衆割烹のスタイルで提供するという実験。「きなこ豚と草鍋」「イベリコ豚のグリルステーキ」などが目玉料理。串揚料理「雲仙」は、鉄板で焼く“串焼き”という珍しい調理法に注目。「藪へゑ」は上野の人気店「海鮮問屋磯べゑ」の新店。日本酒や焼酎の和酒の提供法がユニーク。社長は松風堂の松澤善久氏。三宅氏と松澤氏はエイチワイシステムの安田久氏らと同じ元BBAの“同窓”出身者である。
「ハマサイトグルメ」でスタートから一番人気の店は山陰海鮮・炉端「かば」である。島根県のK.Kダイニングが新宿、新橋に続く東京進出3号店。40〜50種類の鮮魚を毎日、鳥取県境港より直送し、地元出身スタッフが提供する業態。いまトレンドの「魚屋系居酒屋」スタイルのチープな内装だが、“山陰発”“地元出身スタッフ”といった地方色を強く打ち出したことが受けているようだ。店づくりは荒っぽいし、魚以外のメニューのレベルは並みながら、独特のオーラをビルに放っている。私がディベロッパーならば、この「かば」を1階の角地に入れ、通り側にオープン席を設ける。乃木坂の「魚真」スタイルだ。「磯べゑ」も1階がいい。逆に、イタリアンの「イタリアーナ・エノテカ・ドォーロ」、和食の「AEN」、宮崎地鶏の「車」などは2階にもっていき、落ち着いて食べたい客をつかみたいところだ。
一方、複合飲食ビル「Moon Street DAIMON(ムーンストリート大門)」は7業態7店舗の出店。従来の近隣の店よりもグレードを上げ、銀座エリアや六本木エリアに流出してしまっていた接待需要やデート需要に応えられる“大門のランドマーク”を目指すとのことだが、今回のテナントミックスでこだわったのは「素材」。「魚貝」「野菜」「練り物」「鶏」「牛」「豚」とそれぞれの店舗が異なる素材を訴求している点が注目されるところだ。とはいえ、鶏はチェーンの「今井屋総本店」、野菜は表参道ヒルズの「やさい家めい」のプロデュースと、珍しくはない。要チェックは地下1階は「焼きはまぐりる」(ナイツ・アンド・カンパニー)。青山一丁目で人気の焼はまぐり専門店で、盛岡わんこそばのように次々と焼きはまぐりが出てくる。まだ、マスコミにほとんど出ていないユニークな業態だけに注目したい。
それから、5階の焼肉「薩摩牛の蔵」(カミチク)にも注目。薩摩牛を使った本格焼肉店で、赤坂、西麻布に続く3店舗目。ホームページ「焼肉番付」で“横綱”に輝いた名店。特に牛たん、レバ刺しが名物。和牛のメーカーや卸業者が直営店を出す例が急増しているが、“薩摩牛”をブランド発信できるかどうかがポイント。「ムーンストリート大門」の課題は1階の“顔”が弱いこと。この好立地にありながら、今のトレンドを踏まえた“フェイスづくり”が出来ていない。渋谷SEDEの1階もそうだが、飲食ビルの1階のテナント選定、MD力がそのビルのパワーを左右することをディベロッパー側は認識すべきだろう。当初は“ゼットン誘致”という説もあったようだが、確かにゼットンあたりが出ていれば面白かったかもしれない。
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【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
「カシータ赤坂」に郷愁と期待

「青山カシータ」に「ラウンジ」がオープンしたというので、さっそく行ってみた。ラ・ポルトの地下1階にあり、看板もサインもない。
大きな木目の自動扉が目印。扉が開くとそこはマンションの一室のよう。迎えてくれたのはカシータでエグゼクティブディレクターを務める雨宮龍氏だ。私が『アリガット』誌を編集していた2000年、六本木カシータで店長をしていた。当時の編集者の松本育子が取材を拒否し続ける彼を口説き落とし、雑誌では初紹介させていただいたという経緯がある。まだ32歳とか。六本木カシータには個人的にも何度も通い、我が儘な客として迷惑もかけた。しかし、青山に移り、麻布十番に2号店を出し、オーナーの高橋滋氏が講演や出版、DVD発売を始めてから、客としてはカシータから足が遠のいていた。「行き届いたサービス」が「行き過ぎた演出ビジネス」に変ったからだ。客はサービスの形ではなく、形にならない心を求めている。
「ラウンジ」に足を踏み入れると、懐かしさが甦ってきた。六本木にあった“抜けた感じ”が戻ってきたからである。「サービスされていないようで、されている」という感覚。ときには「サービスされていないんじゃないか」と思うことも。しかし、帰るときにはなぜか気持ちいい。六本木にはそんな感覚があった。「ラウンジ」では、ラーメン、きつねうどん、カレー、ハンバーグが食べられる。「彼女と食事してお酒を飲まれたあとに、“ラーメンでも食って帰るか”と言って、ウチにお連れいただく。そんな遊び方、お洒落じゃないですか」と雨宮氏。そう、この崩し方が新しいカシータの可能性を予感させる。
3月24日には3号店目になる赤坂店を出店する。サンケイビルが建設中の地下1階、地上7階建ての飲食店ビル(仮称「一ツ木Lip」)の5階70坪、テラス20坪付き。なぜ赤坂だったのか。このビルにはHUGEの新川義弘氏、AWキッチンの渡邊明氏が出店するという話もあったそうだ。グローバルダイニング出身のカリスマたちが集えば話題は盛り上がる。しかし、彼らは赤坂という立地に自信がもてなかったのか、出店の話は消えた。“孤軍奮闘”の雨宮氏、「正直言って立地は不安ですが、六本木カシータの初期のように気軽に利用していただける店に戻します」と語る。いわば“原点回帰”の店、期待したいところだ。
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【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
本当の「シンプル志向」とは?

2008年がスタートした。今年はどんな年になるのか?いろいろなメディアや専門家が予測しているが、おおかたの見方は「素への回帰」「本質志向」である。
『日経レストラン』は1月号の特集「2008年外食大予測」で、ズバリ2008年は「飾らないが価値になる」「キーワードはシンプル」と明快に言い切っている。偽装の氾濫、複雑化した社会から抜け出すためには、「そんなの関係ない!」と裸で叫ぶ潔さが求められているのだろうか?「虚飾を廃す」「無駄を省く」といったシンプル志向も、これからの“低炭素社会”にとっては必然と言っていいだろう。そんなことを考えながら、恵比寿を歩いていたら、たまたまビルの片隅に「うどん山長」の看板を見つけ、ビルの裏側にひっそりと居を構えた店に入ってみた。
内装は実にシンプルで、木組みのテーブル以外に派手な装飾類はない。窓の外には公園や渋谷川ののどかな風景。「名物山長うどん」(850円)は特製の出汁にきんぴら、胡麻、茗荷、湯葉などをトッピングしていただく。待ち時間も苦にならない。メニュー表には「大阪日本橋の黒門市場で仲卸業を営む削節問屋の山長商店直営の店」とある。不味いはずがない。本格的な出汁でうどんを食べる贅沢。待つこと10分。店員は「まず、きんぴらと胡麻を出汁に入れてから、一口召し上がりください」と勧める。空間のシンプルさの裏で、商品、器などにもの凄いこだわりがある。850円があまりに安すぎる至福の時間だった。
「2008年はこれだ!」と思わず膝を叩いた。単に素に戻ればいい、というわけでは決してない。「当たり前のことをやればいい」「きちんとしていればいい」という識者もいるが、それも違うような気がする。見せ方はシンプルだが、中身は濃くないとダメだ。素材、調理は本物でないと見破られる。サービス、接客力のアップ? そんなことにも、もう客は飽きている。中身で驚かして欲しいと思っている。「当たり前でないこと」を「シンプルにやり遂げる」ことが、これからの差別化の方向性ではないだろうか。『MONOCLE』誌で世界のデザインシーンをリードする名物編集者タイラー・ブリュレも最近、とくに日本製品の品質と素朴でありながら伝統美を内包したデザイン性に注目しているという。彼の目利きの視点も「飾らないシンプルさ」とか。そのセンスと視点から学びたいものだ。
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【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。





