編集長のつぶやき

【VOICE FROM EDITOR】2007-12-27

2007年“マイ流行語”

2007年“マイ流行語”

ちょっと古い話題だが、今年の「流行語大賞」は“そんなの関係ない”とか“どんだけ〜”、そして“宮崎をどげんかせんといけん”だったが、私の記憶に残ったのは次の三つの言葉だった。

まずは、産地偽装や期限改ざんが明らかになり、世間から袋叩きに遭った高級料亭「船場吉兆」のテレビニュースを見ていたら、ある解説者が創業者の故湯木貞一がこんな言葉を残していたという。「料理屋とできものは大きくなれば必ず潰れる。料理屋と屏風は広げれば必ず倒れる」。この教訓は飲食店経営者にとって耳が痛いはずだ。あるいは商業施設のディベロッパーやベンチャーキャピタル、証券会社にとっても自戒すべきと言葉ではないか。飲食店出店のスピードは、その会社の経営者の能力と思想に従うべきだ。「企業はその経営者の器以上は大きくはならない」という言葉もある。

次は、以前このコラムでも紹介したが、幻冬舎の見城徹社長の一言。これもテレビの「情熱大陸」を見ていてたまたま耳にした。「いい作品を書く作家は自分で“世界”を創れる人。でも、どこかいびつで異常な人たち。そういう人たちと本気で付き合うのが編集者の役割」。飲食業界を日々取材している編集者の私としては、「ベストセラー作家=繁盛店経営者」ではないかと直感した。変人オーナーこそが面白い飲食店を創る。偏執狂オーナーこそが魅力的なレストランを創る。幕末、「面白くこともなき世を面白く…」と辞世の句を残した高杉晋作も狂の人だった。彼らを育てた吉田松陰は「狂」を肯定してこう言っている。
「『狂』とは病める心のことではない。壮大で純粋な心である。代償を求めない大儀に生きる精神である。闇を裂き、星の如く生きる精神である。地位も名誉も金も、彼らの前には、塵ほどの意味を持たない。『狂』を生きる、それは爽やかな男達の生きかたである」。飲食店経営で他を一歩でも抜く覚悟のあるオーナーは“狂”の思想を持たなければならない。

最後は「気合いを入れて力を抜く」。これは何かのスポーツ番組(すべてテレビからの情報ですみません)で某解説者が語っていた言葉。居酒屋甲子園の人たちは「気合い」ばかりで「力を抜く」ことを知らない若者が多い。だから「宗教みたい」と揶揄される。しかし、居酒屋甲子園出身の吉田将紀さん経営の「絶好調てっぺん」へ行って、「あっ、力が抜けているな〜」と思った。気合いの感じられない店はつまらないが、力の抜けていない店は居心地が悪い。実は「気合いを入れて力を抜く」という言葉には続きがある。「…打ち気を見せずゆるりと腹を出す」である。これは剣道の用語なのだ。この境地に至れば八段といわれる。合気道でも「押しより引き」である。“引き技”こそが相手(客)を倒す武器となる。2008年は「本物」「本気」「本性」がキーワード。「オーセンティック」への回帰が始まる。「店格」「品性」が問われる。気合いを入れて、肩の力を抜いて行きましょう! 

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【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、レストランビジネス・プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。日本ショッピングセンター協会発行の『SC JAPAN TODAY』4月号より「食のマーケット&トレンド」を連載開始。
2007年5月、有限会社カシェットから「フードスタジアム」を分社独立、渋谷区代々木にフードスタジアム株式会社を設立。業界トップのWEBニュースとして、現在月間PV600,000を超える東京レレストラン&グルメニュース「フードスタジアム」の拡大、全国展開に乗り出す。『ARIgATT』の復刊も模索中。


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【VOICE FROM EDITOR】2007-12-20

2008年“エリア・ホッピング”のすすめ!

2008年“エリア・ホッピング”のすすめ!

2007年は“東高西低”と言われたように、丸の内、有楽町、銀座、東京駅などの大型商業施設オープンにスポットが当たったが、2008年はどうなるのだろうか? 大型開発が一巡し、“街場”が再び見直されるのではないか。

2008年1月は“浜松町”に注目が集まる。1月15日には、三菱地所と東急不動産による汐留再開発の“最後の高層ビル”となる「汐留ビルディング」に飲食中心の20店舗が入る商業施設「ハマサイトグルメ」がオープン。1月22日には、大門交差点近くに“ちょっとアッパーな”7店舗が入る複合飲食ビル「ムーンストリート大門」が開業する。「ハマサイトグルメ」には、東京初や商業施設初出店の業態がいくつか登場、「ムーンストリート大門」にも“焼きはぐり専門店”や“薩摩牛”などの話題店が出店する。文化放送が昨年移転、来年には羽田空港に国際線が就航するなど、街としてのポテンシャルが上がりつつある。新しい施設や飲食ビルが、銀座エリアや六本木エリアに流出していた地域オフィスワーカーたちの足を引き止めることができるかどうか…。

3月は“赤坂”である。6日に開業する「赤坂サカス」の目玉商業施設「赤坂Bizタワー SHOPS & DINING」に46店舗がオープンする。東京メトロ千代田線赤坂駅付近はBizタワーの飲食店が放つエネルギーで様変わりする。「サカス」の開業で注目されるのは、東京ミッドタウンとの回遊性が生まれ、これまで商売するには厳しいとされてきた「赤坂通り」が活性化するのではないかということ。この通り沿いには“TBS関係者御用達”の隠れ家店が点在しているが、最近は立ち飲みやワインバーなど気軽に立ち寄れる店も増えている。また、赤坂駅から溜池山王駅方面へ抜けるエリアも軽いフレンチやバールなどの新店が増えており、“サカス効果”が周辺の街場に及び始めている。

6月は“渋谷”が熱くなる。東京メトロ副都心線(13号線)「渋谷駅」が東急文化会館跡地の地下に開業する。一年後には地下商業施設「エチカ」がオープン。2012年には東急東横線と直結し、文化会館跡地には地下4階、地上33階建ての高層ビルが建ち、地下3階から地上7階までが商業施設となる。17年にはJR渋谷駅と空中デッキでつながる計画だが、そんな大きな開発の起点となるのが副都心線開業。地上は工事現場で殺風景だが、その背後の宮益坂や桜ヶ丘エリアがこれから盛り上がりそうだ。これまで道玄坂、井の頭通り、文化村通りのある西口が渋谷の中心だったが、これからは東口にも注目が集まるに違いない。

2007年はミッドタウン開業で「六本木エリア」、新丸ビルやマロニエゲート、イトシア開業で「丸の内・有楽町・銀座エリア」がスポットライトを浴びた。2008年は商業施設同士の競争ではなく、街場が見直され、“エリア間競争”が激しくなるだろう。ただ、それは競争だけには終わらない。街と街が競争しながらも連携して、“エリア”としての価値向上を目指す。その鍵を握るのが“回遊性”である。「赤坂」が浮上すれば、「赤坂からミッドタウンまで歩こう」「乃木坂まで足を伸ばしてみたい」という動機が生まれる。“回遊”のポイントになるのは店である。カフェでもバールでも立ち飲みでもいい。もちろん飲食に限らないが、街と街をつなぐ“峠の茶屋”機能が増えてくれば通りが活性化する。ハイネケンが進めている「アペリティーボ」なども一つの方法だろう。エリア内の店舗で“ビールと小皿料理”を楽しめる。店をはしごする“バーホッピング”のスタイルも提案している。
2008年は“エリア・ホッピング”を提唱したい。

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【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、レストランビジネス・プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。日本ショッピングセンター協会発行の『SC JAPAN TODAY』4月号より「食のマーケット&トレンド」を連載開始。
2007年5月、有限会社カシェットから「フードスタジアム」を分社独立、渋谷区代々木にフードスタジアム株式会社を設立。業界トップのWEBニュースとして、現在月間PV600,000を超える東京レレストラン&グルメニュース「フードスタジアム」の拡大、全国展開に乗り出す。『ARIgATT』の復刊も模索中。


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【VOICE FROM EDITOR】2007-12-13

「赤坂Bizタワー」のテナントチェック!

「赤坂Bizタワー」のテナントチェック!

業界が注目していた“最後の都心型大規模商業施設”「赤坂Bizタワー」に出店する飲食テナントが明らかになった。名称は「赤坂Bizタワー SHOPS & DINING」、オープンは来年3月6日である。

赤坂Bizタワー(地上39階、地下3階、高さ約180m)」は、TBS放送センター(既存棟)とBizタワーに挟まれた2つの劇場「赤坂BLITZ」「赤坂ACTシアター」や「TBSギャラリー」からなる「akasaka Sacas(赤坂サカス)」のランドマークタワーとなる。高級賃貸住宅や「Sacas広場」などもあり、「完成後は文化施設や「Sacas広場」を中心に多彩なイベントも開催され、六本木ヒルズ、東京ミッドタウンと並ぶ新名所となることは間違いない。オフィス棟には大手広告代理店の博報堂がまるごと田町から引っ越してくる。これで“日テレ×電通村”「汐留」VS“TBS×博報堂村”「赤坂」の構図がくっきりと浮かび上がる。赤坂は“歓楽の街”から“ギョーカイの街”に進化を遂げるに違いない。

「赤坂Bizタワー」の商業施設には46店舗が出店するが、そのほとんどは飲食。物販もエグゼクティブなメンズ“セレメンズ(セレブなメンズ)”をターゲットとした店舗が出る。丸の内や銀座の新商業施設がほとんどどこも同じように“大人の女性”をターゲットとしたのと対照的。飲食もバブルを経験した“セレメンズ”が歓喜するラインナップとなっている。バブル時代を彷彿とさせる高級店が目白押しだ。例えば、「赤坂璃宮」が赤坂本店を移転。譚彦彬(タンヒコアキ)総料理長と香港から招いた一流シェフのコラボレーションが楽しめるという。旧「TBS会館」時代から40年以上商売を続けてきた“地権者”ざくろグループは、日本料理「ざくろ」、しゃぶしゃぶ「しゃぶせん」など4店舗の飲食店とケーキショップを出店。あの懐かしの“トップス”も戻ってくる。さらに高級フレンチの「マキシム・ド・パリ」が新業態のビストロとカフェ・バー、日本初となるパリの高級ブーランジェの3店舗を出店するというから、これも「フレンチといえばマキシム」というセレメンズには待ち遠しいのではないか。

さて、ここまではフードスタジアムらしからぬネタであるが、私がチェックしたいのは新興ベンチャーたちの出店。なんとラムラが初のフードコート「DO-ZO(ドーゾ)」に挑戦するのも気にはなるが、和、中華、韓国に比べ洋系は外しまくっているだけに今回もヘルシーな和食が中心になるようだ。“新感覚スタイルを提案する”とリリースにはあるが、ラムラ的新感覚とは何かを注目したい。フォーシーズがやはり来たか、スペインバルに挑戦。これまでのスペインバルとどう変えてくるかが見もの。スペイン料理の名匠・ジョセフ・バラオナ・ビニョス氏監修とあるが、オザミワールドの「バニュルス」を超えられるかどうか。カーディナルも丸の内TOKIA「P.C.M」、大丸東京新店「B.C.T」に続き、「P.C.A」を出店。1階の“顔”を目指す。また、P.C.Mよろしく、キリンの島田新一さんが外国人好みのスタンディングスタイルを仕掛けるのだろうか。

私が最も注目する“新外食第2世代”勢からは、稲本健一・ゼットンが1階角地にシャンパンバーとワインレストランの2店舗、松村厚久・ダイヤモンドダイニングが51店舗目となるスタンディングバースタイルの中華業態「爆麺闇雲堂」を出店する。ゼットンは東京ミッドタウン「Orange」、霞ダイニング「カスミガセキ」に続く“大型商業施設の角地”ゲット。稲本さんは私に「もう東京では商業施設の1階角地にしか出ませんよ」と霞ダイニングレセプションで語っていたが、いずれも三井不動産案件への出店を果たし“上場効果”を発揮したということだろうか。ただ、角地を取る限り、美味しい食事を期待したい。

“新外食第1世代”の巻き返しも面白い。吉本隆彦・ミュープランニング&オペレーターズがマロニエゲートに続き「ジムトンプソンテーブル」、中島武・際コーポレーションが久々の大型商業施設出店となる中華料理「DORAGON RED RIVER」を出す。この両雄の対決も見ものである。そのほか、新興勢力だが、“トップの顔”が見えないメイセイトレーディングがベルギービール「デリリウムカフェ」、ペッカリイがポルトガル料理「カステル・ブランコ」を出店。ベルギービールブームは定着したが、“ポスト・スペインブーム”を狙い“ポルトガルブーム”を仕掛けているペッカリイの力量がここで問われることになろう。私の印象では、ペッカリイが目指すポジションではなく、もっとカジュアルライン、思い切って“ポルトガルバル”ぐらいのポジションシフトを期待したいのだが…。

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(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
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日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、レストランビジネス・プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。日本ショッピングセンター協会発行の『SC JAPAN TODAY』4月号より「食のマーケット&トレンド」を連載開始。
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【VOICE FROM EDITOR】2007-12-06

神楽坂・飲食店“出世物語”

神楽坂・飲食店“出世物語”

テレビドラマ「拝啓、父上様」の放映の影響で、今年の春頃から神楽坂が盛り上がっている。さらに『ミシュランガイド』で、神楽坂エリアから8店が「星付き」レストランとなり、花町情緒の残る街はさらに活気づいている。

『ミシュランガイド』で星が付いたのは、2つ星が「石かわ」「一文字」「ル・マンジュ・トゥー」、1つ星が「うを徳」「小室」「山さき」「ラ・トゥーエル」「ラリアンス」の8店である。和食とフレンチが融合するこのラインアップは、神楽坂の街の特色をそのまま映し出している。花街情緒が残る石畳の路地裏には料亭や隠れ家和食が密集する一方で、東京一在住スランス人の多い街でもある神楽坂は20店を越えるフレンチレストランがある。「和とフレンチ」が時を超えて混在するユニークな街なのである。

また、古き良き「旧」の店が残る一方、目抜き通りにはガラス張りのモダンなビルが建ち、新しいレストランも急増している“新旧混在”の街でもある。その神楽坂で、“出世”した飲食店も少なくない。 池袋で創業した株式会社てしごとや(代表取締役・金原伸好氏)は神楽坂で「霽月(せいげつ)」「蛍の火(ほのか)」を出してブレークした。そこで修業したユナイテッド&コレクティブ株式会社(代表取締役・坂井英也氏)は「心」「てけてけ」で独自のブランド展開を始めた。急成長したのは「神楽坂 SHUN」「神楽坂 茶寮」「紺屋」「かみくら」など“隠れ家レストラン”をコンセプトに創作料理やスイーツを提供する文商事株式会社。同社の渡辺さとし外食部長は神楽坂の新興勢力のキーマンである。

本多横丁の路地裏で一軒屋を改造した居酒屋「 MASUMASU 」、炉端焼きの「肴町五合」、しゃぶしゃぶ専門の「しゃぶ屋」と3店舗の個性的な飲食店を経営する有限会社DADDY FINGERの志小田亨氏も独特なオーラを街に放っている。楽コーポレーションの DNAが見事に神楽坂に根付いている。本多横丁から7月に2号店を表の神楽坂通りに出して話題となっているのが「ろばたの炉」。経営は株式会社麹村総合企画だが、神楽坂通りに「わしょくや」「だいこんや」も運営、炉端焼きブーム到来で、「ろばたの炉」は大繁盛店となっている。本多横丁では、今年6月にオープンした魚系スペインバルの「エル・プルポ」がオープンと同時に“予約の取れない店”になったのに続き、ソフィテル東京元料理長だったクリストフ ポコ氏が2階建てのフレンチ「ルグドゥノム プション リヨネ」をオープンし、瞬く間に人気店となった。

フレンチ系では、ガレットとシードル、フランスビールも飲めるラーシェベルトラン氏の「ル・ブルターニュ」 が新宿タカシマヤなど商業施設出店を果たしているし、「メゾン・ド・ラ・ブルゴーニュ」も最近、系列店の「ラ キャパス」を出した。大久保通りを超えた“ノースエリア”では、茅場町の「ランブイエ」の池田シェフが2006年5月に独立してオープンした「ラ・マティエール」が話題。変り種では、低価格を売りにした居酒屋「竹ちゃん」。“サウスエリア”にも姉妹店「竹子」を運営。“180円生ビール”が売りだが、六本木にも進出した「松ちゃん」も人気。また、赤城神社の境内にある和食店「赤城亭」「akagi cafe」もユニークである。

私も2年前、“ノースエリア”の将来性に目を付け、隠れ家立地に和食とワインの店「HAP」をプロデュースしたが、この店も来年は新宿3丁目でワンバーを展開する大竹信子氏の力を借りてイタリアンに衣替えする。そして、12月3日“サウスエリア”のコアとなる本多横丁角の近江屋ビル2階に“鉄板バル”「ラ・クッチャーラ」をデビューさせた。両店を拠点に神楽坂飲食業界の“新旧戦争”“和仏戦争”そして“南北戦争”の盛衰を見とどけていきたい。それはテレビドラマよりもずっと面白いに違いない。

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(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
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現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
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