編集長のつぶやき
“二匹の虎”が飲食業界を元気にする

この一週間は“虎まみれ”だった。先週19〜20日は“マネーの虎”こと安田久エイチワイシステム社長と札幌一泊“食材探しのツアー”に同行した。昨日は、“飲食業の虎”中島武際コーポレーション社長と恵比寿にできたグッチ裕三の「うまいぞお」で痛飲。虎はあくまで元気である。
“マネーの虎”安田久さんはいま、11月にオープンする銀座の大箱の新業態「北海道料理」のネタの仕込みでいま走り回っている。なにしろ、“47都道府県47店舗”と郷土料理店を銀座中心に次々に出店することを打ち出して、いまや“地方の虎”として全国を飛び回る日々。そのことは彼のブログ「虎の一攫千金」を読めばわかるが、今回の北海道料理店については、「今年最後にして最大の勝負」(安田さん)を賭けている。それは札幌への“随行取材”でひしひしと伝わってきた。
北海道の何を切り取って差別化し、安田さん的インパクトを打ち出すか、そこが私の興味だったが、「7メートルの水槽に活きた蟹やホタテなどの甲殻類を陳列、客が食べたいものをその場で選んで新鮮なまま提供する」という今回の業態の軸が固まったようだ。銀座5丁目に150坪を超える物件を取得、11月のオープンがいまから楽しみである。
“飲食業の虎”中島武さんは、「『ARIgTT』誌創刊を共にした“朋友”」(中島武公式blog)だが、そのブログの最近の日記で私のことをなぜか“ホメ殺し”攻撃している。そのことをダイヤモンドダイニングの松村厚久社長が面白がって、昨日“中島武×佐藤こうぞう会談”の場を仕掛けたのだが、なぜかそこに20代若手業界人のホープといわれるエムグランドフードサービスの井戸実社長も同席して、まさに“業界リーダー3世代”が揃い、気がつけば“業界VSフードスタジアム対決”となった。
分が悪い。ふだん歯に衣着せず辛口批評を書いている私は肝を冷やしたが、詰められることなく3時間みっちりと“ナマ武の飲食業論”を伺う場となった。フードスタジアムについても、概ねバッサリ斬ったあと「期待しているよ」と最後には優しい言葉。「“グッチ裕三”よりも“エルメス中島”のほうがちょっとは食をわかってるよ」と、ジョークの切れもいい。“ホメ殺し”で返すわけではないが、かつて私は中島さんのことを“飲食業界の北野武”と称したが、いまやまさに“武監督”の領域に上がったのかもしれない。
それにしても、安田久さん、中島武さんという“二匹の虎”が業界を面白くしていることだけは事実だ。二人とも飲食店経営が大変なわりに儲からないことを熟知している。ともに昔は人生の崖っぷちに立たたされた強烈な失敗体験もある。しかし、いまやベンツとベントレーで業界を駆け抜ける。二人とも“チョイ悪オヤジの色気”を放つ。業界に必要なのはこの“色気”なのだろう。
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【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
“MYG(丸の内・有楽町・銀座)ライン”完成の意味

銀座ベルビア館、新丸ビル、仲通り「KUNIGIWA」、マロニエゲートと続いた“MG(丸の内・銀座)開発”が10月12日の「有楽町イトシア」開業で一つに結ばれる。街の“東高西低”人気に拍車がかかりそうだ。
9月1日、銀座マロニエゲートが開業したかと思うと、9月14日にはプランタン銀座が“食”ゾーンの充実を打ち出しリニューアルオープン、さらに10月12日、今度は有楽町駅前に45店舗の商業テナントを有するマルイを核とした「有楽町イトシア」がグランドオープンする。飲食施設そのものは話題の「クリスピー・クリーム・ドーナツ」ぐらいが売りで、チェーン店の新業態に頼るリーシングだったが、この位置に巨大複合商業施設が誕生する意味は大きい。
「有楽町イトシア」の登場によって、丸の内と銀座を繋ぐ街の“回遊性”が高まることだ。東京駅の丸の内口から新丸ビル、丸ビル、TOKIAを経由して、「KUNIGIWA」や新東京ビルの地下街に立ち寄りながら仲通りを歩く。ペニンシュラでアフタヌーンティーを楽しんだ後、有楽町に出る。イトシアを経由して外堀通りを渡ればマロニエ通りを挟み、マロニエゲートとプランタン銀座がある。ベルビア館やZOEを抜けて最後は、ブランドビルがひしめく銀座4丁目に抜ける。東京駅丸の内口からここまでの“MYG(丸の内・有楽町・銀座)ライン”が出来上がる。そして、銀座8丁目には9月20日ニッタビルがオープン。コリドー街を散歩して、汐留・シオサイトに抜ければ“MYGSライン”へと拡大する。
そして、11月になればもう一つのラインも出来上がることになる。東京駅北口で進んでいる「エキナカ GranSta(グランスタ)」が10月25日に開業。エキナカに45店舗の商業テナントがオープン。さらに11月5日には現在の大丸を南北に挟む形で、「GRAN TOKYO」のノースタワーとサウスタワーが開業、それを繋ぐ巨大な通路「GRAN ROOF」にも多くの店舗が集積することになる。ノースタワーには大箱の天空レストラン「XEX」がお目見えする。この東京駅八重洲側からマンダリンホテルのある日本橋三井タワー、COLEDO日本橋と東に広がるライン、そしてノースタワーからPCPビル、外堀通りを銀座に入ると有楽町イトシア、マロニエに繋がる。
こう俯瞰して見ると、先日の日経新聞調査で明らかになった「都内の人気の街が西から東にシフトする“東高西低”現象」に拍車がかかるのではないかと想像できる。その意味でも、“MYG(丸の内・有楽町・銀座)ライン”の構築は注目すべきであろう。今後、霞が関、赤坂、浜松町と“都心型商業施設”ラッシュとなるが、まさに東京は“店VS店”から“商業施設VS商業施設”そして“街(エリア)VS街(エリア)”の競争の色を濃くしてきた。
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【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
“物件至上主義”批判

飲食店経営の難しいところは、人気エリア、好立地に店を出したからといって、必ずしも成功しないということである。“物件至上主義”を唱える業界人が増えているが、肝心なことはエリアや物件に依存しない覚悟をもつことではないか。
毎日、新規オープンの個人開業店がやたらと増えているが、中には「こんないいエリアのこんないい場所によく出店できたな?」と感心するケースもある。しかし、よくよく話しを聞くと、店舗サブリース会社や店舗オークション会社から融資付きで話しを持ち込まれ、居抜きをそのまま借りてしまい、余裕資金もないままスタートしたものの、なかなか損益分岐に届かないで悩んでいたりする。「物件」に一目惚れし、安易に開業に走った失敗例だ。以前、つぶやきで「居抜きで業態をつくることは相当難しい」と書いた。もちろん、中には成功例もあるが、よほど“業態開発力”やオーナー、シェフの“発信力”がないと好スタートは難しい。
昨日は“物件よりも開発力”という成功例を2店歩いた。まず、19時に予約を入れていた「京橋BRICKS」の鉄板カウンターの前に座る。12坪18席の小さな店はたちまち満席になった。ここも半年前にオープン、フードスタジアムのヘッドラインで“業界発信”した店だが、場所柄すぐには火が付かなかった。しかし、キハチ出身の実力派シェフ3人組が、探しに探してやっと見つけた物件、「ここで勝負するしかない!」と覚悟で臨んだ“鉄板焼バル”業態。いまや土曜日も2回転、平日は予約を取るのが難しいほど繁盛している。BRICKSで千葉県浅野ファームのイタリア野菜と岩手産SFP豚の鉄板焼き料理を堪能したあと、やはり21時に予約していた八丁堀「maru3階」に向かった。伝説のスペインバル「maru」がやはり昨年新規で出した“鉄板焼ワインバー”である。
「maru」は1階が酒屋兼立ち飲み、2階がスペインバル、そして同じビルの3階に鉄板焼バーがある。水曜日の21時。1階も2階もいつもの通り超満席。3階も同じように空席がない。本当にこの店は“お化け”と言うしかない。なぜ、この場所で、こんなに流行るのか。肝心の鉄板料理はちょっとがっかりしたが、“鉄板”という新しいフックを利用して、店舗を拡張したに過ぎないことがわかった。次は“寿司”とかをフックにして「maru4階」が誕生するかもしれない。わずか10坪足らずの“角打ち”からスタートした「maru」。物件至上主義がナンセンスであることを思い知らされる成功例である。
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【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
「トレンド」は悪なのか?

都心では商業施設オープンラッシュを迎え、街場でも次から次に新しいレストランが産声を上げている。にもかかわらず、業界では「先が見えない」と五里霧中のマーケットの先行きを嘆く声が多い…。
9月3日、アクシュ・ネット主催で行なわれた、飲食店開業企画に“最大1億円を投資する”というイベント、「伝説への扉」のファイナリスト発表会に顔を出した。4月にキックオフしたこのイベント、要はWEB版“マネーの虎”なのだが、バックの大手酒販会社の努力もあって全国から342企画の応募があり、その中からこの日は最終選考に残った5名の“ライブプレゼン”があったのだ。グランプリを獲得したのは、フードスタジアムの記事で企画を知って応募したという25歳の富田將人氏。企画内容はヨーロッパの土鍋料理「LaGoo 土鍋食堂」だった。
ファイナリストたちのプレゼンもそれなりに楽しめたが、さらに面白かったのは、J-WAVEのパーソナリティ・ショーンKの司会で行なわれた審査委員4名によるパネルディスカッション。パネリストは、際コーポレーション代表・中島武氏、マーケッティングコンサルタント・西川りゅうじん氏、ユニマットキャラバン カフェ&レストラン事業本部取締役本部長・金井伸作氏、ダイヤモンドダイニング代表・松村厚久氏。テーマは飲食トレンドやマーケットの先を読むというものだったが、彼らの話を聞く限り、業界がこの先どうなるのか、それがまったく見えないディスカッションであった。
彼らの議論を総括すると、飲食マーケットは「トレンド」に走りすぎ、客に迎合する店、ディスカウント癖の店が増えた。「オンリーワン」も行き着いた。仕掛け側の企画(釣り針の針)が見えてしまうと客はしらける。このオーバーストア状態のなかで勝ち残るためには「人づくり」しなかい。「客に媚びない店」「マイクロレストラン」が最後に勝つ。結局、中島氏の「これから100人の経営者をつくる」という“人づくり宣言”で幕を閉じた。議論を聞いていて、私は業界が本当に先が見えない一種の閉塞状況に陥っていることを実感した。仕掛け人たちが「仕掛けがバレたら終わり」と自ら“白旗”を掲げるマーケットとは何か?「トレンド」を悪として、「結局、人ありき」と結論づけていいのか?
トレンドと言えば、「立ち飲み」「スペインバル」、いまや「増えすぎた」業態も、このフードスタジアムでは、3年前の神泉「BUCHI」、新宿3丁目「日本再生酒場」、恵比寿「立呑」、銀座「バニュルス」、恵比寿「18番」、恵比寿「buri」から取り上げてきた。それが、立ち飲みはいまや各駅の一等地には必ずあるし、商業施設にも出現するようになった。スペインバルも大手居酒屋チェーン店が新業態として出店攻勢をかけるありさま。ラムラもついにカレッタ汐留に「VENGA VENGA」を出店。私は、新丸ビルに「再生酒場」が出たとき「立ち飲みは終わった」と思ったが、ラムラがが出たことで「スペインバルも終わった」と感じた。「終わった」という言葉は刺激が強いが、要は、トレンドのピークアウト現象であり、業態としての定着である。ただ、これから整理淘汰が加速することは言うまでもない。
それでは、生き残るにはどうしたらいいのか?それは“ダーウィンの法則”しかない。進化するしかない。マーケットには必ず目に見えない隙間がある。その隙間に切り込んで進化を遂げるしかない。例えば、新宿3丁目のスタンディングワインバー「マルゴー」は隣の再生酒場のブームにあやかって出店したのだが、立ち飲みにこだわっている間、店は閑散としていた。しかし、椅子を置くことによって、「スタンディング」以上「ビストロ」未満の「カジュアルワインバー」という隙間業態を新たに創造することができた。いまや、毎日満席である。「業態にこだわるから業態が見えなくなる」「コンセプトに頼りすぎるからコンセプトが見えなくなる」。逆に言えば、まだ目に見えていない業態はいくらでもある。それを見つけるには「トレンド」から目を背けてはならない。
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【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。






