編集長のつぶやき

【VOICE FROM EDITOR】2007-02-22

新生「NOBU東京」誕生と“レストラン・ビッグバン”

新生「NOBU東京」誕生と“レストラン・ビッグバン”

1月に虎ノ門タワーズにシークレット・オープンしていた新生「NOBU東京」が2月20日、“ロバート・デ・ニーロ緊急来日”という演出でオープニングレセプションを開催、派手なデビューを飾った。

昨年、道路拡張を理由に閉鎖した「NOBU東京」。ノブ・マツヒサ(松久信幸氏)とロバート・デニーロの共同経営で、いまやニューヨークをはじめ、パリ、ミラノ、シドニー等、世界19ヶ国に展開しているレストランだけに、閉鎖したままというのはおかしいと思っていたら、意外な場所に移転オープンしていた。ノブ側の日本での経営母体は、六本木ヒルズ集中出店がたたって倒産、民事再生中のソーホーズだった。その影響が懸念されていたが、さすが世界のNOBUである、満を持してファンの前に「新生NOBU」の華やかなお披露目を行なった。

新しい場所はなんと虎ノ門。ホテルオークラの目の前に昨年11月竣工した41階建ての「虎ノ門タワーズレジデンス」。そのオフィス棟の1階に1月にこっそりとオープンしていたのだ。「NOBU東京」は1998年10月に南青山にオープンして以来、フュージョン和食のフラッグシップとして話題を集めてきた。私は2000年6月の「アリガット」創刊号でノブ松久さんのロング・インタビューをした。表紙にはノブの顔、地下鉄の中刷り広告のキービジュアルには「ノブの手」を使わせてもらった。オーナーが自由にクリエイティブな飲食スタイルを発信していくノブスタイルは、まさに“レストラン・ビッグバン”の象徴でもあった。

時代は回って2007年、いま東京は「バブルへGO!!」の応援歌に乗って、第二次“レストランバブル”(私論だが、“第一次”は丸ビル、六本木ヒルズが誕生した2002〜2003年)入り口にあるといってよい。しかし、現実は勝ち組と負け組が交錯する凄まじいサバイバルゲームが展開されている。勝ち組の“共通項”は「スピードと大胆なスクラップ・アンド・ビルド」である。小さな成功や失敗にこだわらず、思い切って“コンセプト・チェンジ”をする蛮勇こそが求められているのではないか。

5年前には斬新で元気だった中堅チェーン店でさえ、組織に前例主義や官僚主義(いま流行りの“しがらみ”)がはびこるとすぐにマーケット感覚を失ってしまう。コロワイドやラムラ、際コーポレーションなどが成功体験に苦しんでいるのはそのいい例だろう。一方で、ダイヤモンドダイニングや一六堂、未知コーポレーション、きちりといったフットワークのいい30代経営者たちが新勢力となりつつある。今こそ、宮崎県の東国原知事のような「上を下にするような、とらわれない発想」こそが時代を勝ち抜く武器になるのではないか。その意味で、10年ぶりに“レストラン・ビッグバン”の波が押し寄せてきている、と言えるかもしれない。

【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、飲食店プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。

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【VOICE FROM EDITOR】2007-02-14

「バブルへGO!!」と「大衆グルメ社会」

「バブルへGO!!」と「大衆グルメ社会」

「バブル時代」をテーマにした映画「バブルへGO!!」が封切られ、人気を集めているという。あの時代の“残り火”がいまなぜか甦り始めた。

「外食」の本質は“エピキュリアニズム=快楽至上主義”である。かつて、日本にもその快楽主義が解放された時代があった。それが「バブル期」1986〜91年のわずか5年間である。その時代にタイムスリップし、思いっきり当時のバブルライフを懐古させてくれる映画「バブルでGO!!」が話題になっている。筆者もその時代、“サラリーマン編集者”としてピーク・パラダイスを謳歌した。その後のジェットコースターの急降下のような“バブル崩壊”も体験した。

映画配給のフジテレビの思惑はわからないが、製作がバブル時代にキーマン集団の一つだった「ホイチョイ・プロダクションズ」というのは、当時もそうだったように、かなり綿密な“流行マーケティング”分析に基づいたカルチャー発信の仕掛けなのだろう。景気回復の最後の“寄る辺”は「バブルの残り火」に油を注ぐことしかないという深慮遠謀であろう。それが“隠された国策”であることを暴露している。格差社会への傾斜を正当化する文脈さえ感じる。

バブル時代、外食といえば、「鉄人」「イタ飯」「ディスコ」「ディープブルー」。ホイチョイが著した『東京いい店やれる店』はベストセラーになった。20年を経て、いまや「グルメ大衆社会」である。ネットで検索すれば、食べたいもの、行きたい店が溢れている。「いい店やれる店」も巷に氾濫している。こうした“大衆化”したグルメ社会はもう飽き飽き。「バブルへGO!!」は、それと一線を画す“再バブル”を求める新富裕層の心理を、果たしてくすぐることができるのだろうか。あのバブルは、私には「巨大なテーマパーク」でしかないと思えるのだが…。

【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、飲食店プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。

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【VOICE FROM EDITOR】2007-02-08

「フードファディズム」と「無印レストラン」

「フードファディズム」と「無印レストラン」

最近、「フードファディズム」という言葉が業界のキーワードになってきた。食材に対する“安全・安心神話”、あるいは“健康神話”が行き過ぎることに対する戒めである。

おそらくBSEがきっかけなのだろう。「食の安全・安心」が厳しく問われ、「トレーサビリティ」(食材の生産履歴)なる言葉が重きをなしてきた。そして「ロハス」(健康と環境を考えたライフスタイル)である。どこのレストランも「ドコソコ産○×牛」とか「○×農家の朝摘み野菜」などと、食材の氏素性を明確に示すことがステイタスという時代が続いてきた。挙句の果てに「食育」である。教育まで食が変えようとしている。

しかし、ここにきて「フードファディズム」という強烈な切れ味のキーワードが食ビジネスの世界に飛び込んできた。まるで、「自民党を壊す」と言って政権を獲った元首相の小泉純一郎のような痛快な用語である。food faddismとは、特定の食品を食べるだけですっかり健康になる、などという宣伝をそのまま信じ、バランスを欠いた偏執的な食生活をすることである。「あるある大辞典」で問題になった“納豆がダイエットに効く”という捏造番組がまさにその典型である。

健全なテーマも行き過ぎると、文字通り「faddism」(一時的な熱中、気まぐれな熱狂)に陥る。食は身近なテーマだからこそ、マスメディアがこぞって一つの話題に焦点を当てると、“ファディズム現象”が生じることになる。最近の「産地表示ブーム」はそのいい例である。「○×産」というブランドに熱中してしまうのだ。美味しい素材は、名もなくても美味しい。遠い産地の食材よりも、近場の食材を早く食べる方が美味しい。「無名な食材」でもレストランの仕入れ、提供方法しだいでは、「名に勝る」こともある。

乃木坂にある石鍋のレストラン。マンションの一室にあり、看板はない。メニューもない。初めて訪れる客は、値段がわからないからビビる。鶏ガラベースの白濁スープの出汁。具は牛と豚、白菜をはじめとした鍋の定番野菜。店員は食材について何の説明もしない。しかし、肉も野菜も見れば新鮮で美味しそうなツラをしている。名前なんかどうでもいい、と思う。で、「この鍋はいくら?」と聞くと、「台湾から輸入した特製の石鍋で、その昔は韓国の宮廷で使われていました。値段はわかりません」(料理の値段ではなく、鍋容器の値段について解説する)などとかわされてしまう。ミステリアスな「無印レストラン」だが、食材の能書きに飽きてくると、これが痛快で気持ちいい。そして美味しい。そろそろ、食材に対する価値観を変えてもいいのではないか。

【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、飲食店プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。

 

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【VOICE FROM EDITOR】2007-02-01

松村厚久「渾身の作」に秘めた想い

松村厚久「渾身の作」に秘めた想い

フルスピードで出店のアクセルを踏み続けているダイヤモンドダイニングが“上野一の大箱”でまた勝負に出た。松村厚久社長、「渾身の作」である。

2月1日オープンの「しのばず屋別邸」は260坪、4店舗4業態、総席数441という超大箱である。江戸時代は“黒門町”と呼ばれ、浅草の旦那衆や芸姑が優雅な遊びを愉しんだ一郭。その華美を極めた風情を現代に再現しようという、ダイヤモンドダイニングらしいコンセプトだ。麦とろ・はしり割烹の「京個室 辻が花」、お茶屋BARの「逢瀬の刻」、炉端焼の「鬼吉」、そして同社初のビュッフェスタイル「大地の贈り物」の4業態。デザインはジェリーフィッシュ・貞廣一鑑氏の渋谷「おはし」を手掛けたベイリーフの前田太郎氏(MD出身)である。

1月30日に開催されたレセプションにはプレス、同社関係者、松村社長と交友のある業界人など300人を超える招待客が集まった。入り口に立つ松村さんは、いつもと表情が違う。一人ひとりに、この「渾身の作」を一所懸命に説く姿があった。今回はOLやサラリーマン対象というより、「浅草や上野界隈の老舗関係者や食通の方々にもぜひ足を運んでいただきたい」(松村さん)という想いが強いのだ。同じビルには「今半」「梅の花」などがある。それらと戦えるかどうか、高い客層の取り込みという狙いもあるようだ。

かつて、このコラムで「二人の上場予備軍」という原稿を書いた。ダイヤモンドダイニングが池袋にやはり4業態500席という大箱を出店したときだ。同じビルに先に出店していた名古屋出身の「ジェイプロジェクト」の新田治郎社長と松村さんは同世代、共にディスコ出身でよく似たコースを辿っていた。「株式上場」という目標も一緒だった。その新田さんは昨年12月にマザーズ上場を果たし、松村さんはまたしても先を越されてしまった。最新、松村さんは「上場の話題」については黙して語らない。株価で二人が競う日も近いのだろうか。

※この原稿を公表直後、株式会社ダイヤモンドダイニング・公式ホームページ上で、「大証ヘラクレス上場への承認が得られた」と発表がありました。


【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、飲食店プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。

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