編集長のつぶやき
「スペインバル」増殖中!

「立ち飲み」の増殖が一段落したかと思ったら、今度は「スペインバル」が次々にオープンしている。最近の「スペインバル」は“本場スタイル”を売りにする店から、チェーン店の参入による大型店まで業態の広がりを見せている。
フードスタジアムTOP画面の右上にある「検索」で“スペインバル”を調べただけでも、20件も記事が出てくる。9月からの動向を追うと、恵比寿「BAR Guapos(ガポス)」(9月26日)、渋谷「CASA DEL BUENO(カサ デル ブエノ)」(10月24日)、恵比寿「BAR de ESPANA Ocho(バル・デ・エスパーニャ・オチョ)」(11月8日)、表参道「青山ワインホール」(11月22日)がオープンし、そして12月には、恵比寿「バル・アリエッタ・ダンジョウ」(12月4日)、小田急新宿ミロード「RADORINA(パラドリーナ)」(12月13日)と続く。
経営母体は様々だが、社員独立型チェーン店のムジャキフーズから、西麻布などでスノッビッシュな店を展開してきたグッドコック、さらには恵比寿の名店「ティオダンジョウ」プロデュース店と話題性は高い。また、サムカワフードプランニングやクリエイト・レストランツなどの大手企業も新しいビジネスモデルと位置付けて、ターミナル駅エリアや商業施設での展開を虎視眈々と狙って参入してきている。「魚がし日本一」のにっぱんも、スペインバル参入を図ったものの、あえて次のマーケットを読んでイタリアンバール「Wine&Tapas CON BRIO(ワイン&タパス コンブリオ)」(11月16日)に軌道修正した。
いずれにしろ、大手チェーン系や商業施設に強い企業がスペインバルに乗り出してきたということは、その業態に対する顧客ニーズもさることながら、食材・酒類調達、商品開発、店舗オペレーションの面からも、居酒屋やカフェレストランに代わるチェーンビジネスになり得ると考えられ始めたということだろう。昨年12月にニュートーキョーが六本木ヒルズ・メトロハットに60坪・75席のスペインバル「TAPEO(タペオ)」を出したとき、業界では意外性をもって迎えられたが、ちょうど1年経って、それは新業態開発や既存店リニューアルに頭を悩ます大手チェーン店のいいヒントになったと言えるかもしれない。この動きはますます拡大するのではないだろうか。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、飲食店プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。
飲食店が株式上場するということ

名証セントレックス上場を果たした「ゼットン」(社長・稲本健一氏)の株価が下げ止まらない。昨日22日は上場来最安値の61,200円を付けた(終値68,000円)。公開価格が92,000円、10月19日上場初値が100,000円ジャストだった。初値で買った投資家は1ヶ月で3割を超える含み損。売るに売れない状況だ。
レストランビジネス業界、同店のお客さんたちからの“ゼットン・稲本人気”は根強い。しかし、IPOデビューをすると投資家(株主)という新たなお客さんから常に厳しい目を注がれることになる。飲食店店のオーナーたちは、レストランの客のクレームには慣れていても、投資家からの容赦ない“ご意見”からは逃げられない。マスコミの目も厳しくなる。なかには勘違いする経営者も多く、IPO企業としてのデスクロージャー義務さえ避けて、我々ジャーナリストの取材を平気で拒否する新興レストランオーナーも多い。
誰も大きい声では言わないが、ゼットンが上場を急ぎすぎたことは明らかだ。名古屋テレビ塔、徳川園、東京ミッドタウンなど公共施設、商業施設出店に向けた経営戦略だったのはわかるが、投資家たちも指摘しているように、「前々期債務超過の会社がなぜ公開できるのか?」「セントレックスの市場関係者はちゃんと審査したのか?」という批判は残念ながら当を得ている。最近の稲本さんは名古屋財界やさまざまな講演会から引っ張りだこのようだが、株価回復の施策を早急に講じるべきだろう。東京進出以来、ずっとゼットンと稲本さんを見続け、書き続けてきたからこそ、敢えて苦言を呈したい。機会があれば、「なぜいま、公開だったのか?」その本心を聞いてみたい。
名古屋グループではゼットンのライバルである「ジェイプロジェクト」(社長・新田治郎氏)が11月30日、東証マザーズに上場する。公開価格は150,000円。こちらは幹事証券がみずほインベスターズとあって投資家の前人気は高く、初値200,000円とも250,000円とも言われている。新田さんはあまりマスコミに顔を出さない人だが、私は「フジサンケイビジネスアイ」でインタビューさせてもらったことがある。本格焼酎を強く打ち出した居酒屋の展開が当たった。
東京進出後も順調に店舗展開し、現在、居酒屋を18業態37店舗、レストラン等食事をメインとした店舗を7業態12店舗、計25業態49店舗を展開し、前2月期売上げは62億円、経常利益は2億円強。上場で得た資金は全額設備投資に充当するとのこと。ただ、投資家から「リリース内容が不十分だ」という要望が出ているように、IR広報体制が後手後手に回っている感は否めない。新田さんというトップの顔が見えてこないこと、銀行系証券主導にありがちな数字至上主義が、「飲食店」としての魅力を半減させてしまうのではないか、それが心配である。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、飲食店プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。
「東京ミッドタウン」にデビューするということ

昨日15日、六本木ヒルズ内の「アカデミーヒルズ」で、来春3月30日にグランドオープンする「東京ミッドタウン」の記者会見及び懇親パーティが行なわれたので顔を出した。記者会見では商業施設130店舗の全貌が明らかになった。さて、見所は…。
130テナント中、飲食施設は「レストラン&バー」が27店舗、「フード&カフェ」が33店舗の出店となる。東京ミッドタウンのコンセプトは、“都心の上質な日常”を提供すること。周辺地域の居住者、オフィスワーカー(ヤフーやUSENなどが入り20,000人になるという)をベーシックなターゲットとするが、今回、三井不動産があえて戦略的なターゲットとしてあげたのが「年齢にとらわれず、独自の感性で都心型ライフスタイルを確立している“ライフスタイル アーティスト”」(松藤哲哉・東京ミッドタウン事業部事業グループ統括)。要は、30代以上でもコンサバ志向にならない“艶男”“艶女”及び“チョイ悪オヤジ”予備軍たちである。
そうしたターゲット戦略だからだろうか、コンサバのイメージか強い寿司業態や純和食を持ってこなかったのが面白い。和食では、私が『アリガット』誌で初めて紹介したご縁のある神戸「NADAMAN DINNING」の山下春幸さんがHAL YAMASHITA 東京」で東京進出、人形町今半にいまトレンドの鉄板焼業態「鉄板焼ステーキ 喜扇亭」をやらせたのもビックリ。三菱地所の「新丸ビル」でも“老舗ブランド誘致”がテーマになっているようだが、新業態にこだわったのはいい選択だろう。また、“日本初出店”としてひらまつが銀座とほぼ同時にデビューさせるコンランレストランの「Botenica」やワンダーテーブル久々の勝負ライセンスレストラン、「Union Square Tokyo」(NY)も注目されるところだ。
ベンチャー・トレンド系では株式公開したばかりのゼットンがフレンチ・シャンパンバー「オランジェ」、グラナダが蕎麦「江戸切庵」、表参道ビルズ次ぐ出店になる「暗闇坂 宮下」グループがアートディレクターの佐藤可士和を起用した「可不可」、西麻布のバーシーンを創り、最近セブンシーズホールディングス入りしたシンクロニシティ・角章さんが60坪の巨大バー「YOL(ヨル)」を、渋谷「SUS」復活に加え、株式上場準備に入ったカフェカンパニーが和バール「247 GARDEN/HOUSE」などを出店、そして話題は何と言っても井上盛夫・ソルトコンソーシアムが250坪のフードコート「OKAWARI.JP」を出店することだ。三井不動産側からのオファーで出店を決めたという。
記者発表の後の懇親パーティは、「出店者とプレスとの懇親」が主旨だった。当然、テナントのトップたちが顔を揃えていると思ってパーティ会場に入ると、上場したばかりのゼットン・稲本健一さん、ソルトコンソーシアム・井上盛夫さん、スティルフーズ・鈴木成和さん、ワンダーテーブル・林祥隆さんたちの顔が見えないのはガッカリだった。一方、宮下大輔さん、角章さん、カフェカンパニーの楠本修二郎さん、グラナダの下山雄司さんは出席。ベンチャー系にとって、東京有数の商業施設に出店することは大きな社運を賭けた投資であり挑戦だろう。六本木ヒルズのソーホーズの例を今さら持ち出したくはないが、デベロッパー側にとってもハイリスクである。いわば運命共同体だが、それだけにこうした場に顔を見せなかったトップたちはとても残念だったと言わざるを得ない。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として取り上げられる。
2007年の飲食トレンドを読むキーワード(2)

『日経トレンディ』12月号の特集「2007年ヒット予測ランキング」14位に“ピンポイント郷土居酒屋”が取り上げられた。筆者が来年のトレンド・キーワードとして挙げた「新ベタコテ」「地方活性化」のいわば“合体系”である。
例としては、筆者が推薦した、安田久・エイチワイシステムの「あまくさ」、佐藤裕久・バルニバービの「本家 かのや」など、「地域をピンポイントに絞ることで強い個性を出し、他店との差別化に成功している」(同誌)店が紹介されている。たしかに、いま「居酒屋」が個性を打ち出す切り口として、「地域」「郷土」を取り入れることは、新しい“売り”になっており、このトレンドはまさに来年ヒートアップしそうである。
昨日訪ねた、渋谷・桜ヶ丘にひっそりとオープンした「SSO(ササオ)」の“売り”もまさにピンポイントの郷土料理だ。ここは中目黒の知る人ぞ知る“看板のない店”「元旦」の新店である。10月16日に開いたばかりだが、もう予約が取りにくい。「SSO」オーナーの笹尾一純さんは、「今度は身近なおでんバーをやりましたが、〆に群馬県の桐生名物“ソースカツ丼”を出してみました。ランチはこのカツ丼一本です」と言う。笹尾さんの出身地ではないが、先輩から薦められ食べに行って一発で惚れ込んだという。マイナーコンテンツだが、それ故にエッヂが効いている。
さて、筆者が来年のキーワードとして挙げた「新ベタコテ」「地方活性化」に続く「大人の社交場」「健美長寿」についてもコメントしておこう。まずは「大人の社交場」。自分の趣味嗜好には投資を惜しまない“ニューラグジュアリー消費”の現象が日本でも顕著になってきているが、このニーズをつかんだのが「大人の社交場」としてのレストランやバーである。看板のない店、会員制、メール予約しかできない店など、“店が客を選ぶ”スタイルが来年は流行るに違いない。SNSの「mixi」のコミュニティブームとも無縁ではない。「選ばれた者の快感」と「好きな仲間だけの時間」を共有できる飲食空間。食目的というより社交目的で使う。もちろん料理は美味しいに越したことはない。来年は第二、第三の「タワシタ」(東麻布)が出てくるだろう。
最後に「健美長寿」である。健康、美容、長寿に効く料理。これは絶対に強いコンテンツである。ただ、もう氾濫し過ぎているだけに、打ち出し方や絞り込み方がポイントになる。「オーガニック」「デトックス」「アンチエイジング」というコピーは陳腐化してしまっており、できれば使いたくない。それよりも、ストレートに「不老長寿鍋」とか「コラーゲン入りサワー」と言ったほうがインパクトがある。“とうがらし料理”の「赤ちり亭」のドリンクは参考になる。「マリンコラーゲン酎ハイ」「白桃コエンザイムQ10酎ハイ」「ウコン入りシークワーサー酎ハイ」「アロエこんにゃく酎ハイ」「青汁カテキン酎ハイ」「もろみ酢酎ハイ」etc。“団塊リタイア元年”の2007年は、“日本型医食同源”の元年でもある。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として取り上げられる。
“飲食支援事業”と“FCビジネス”の行方

FCマーケットの成熟とともに“ベンチャーリンク神話”が崩壊し、新たに「ライセンス販売ビジネス」や「外食支援プラットフォーム」「WEBマッチングビジネス」など、様々なビジネスモデルが登場してきたが、どこが勝ち残っていくのだろうか。
30兆円あった外食産業の市場が24兆円まで減少し、その危機感を煽る人たちが増えているが、日本におけるオフィシャルな外食マーケットの市場規模は、あくまで「日本フードサービス協会」加盟のいわゆるチェーン店ビジネスの数字が表に出るだけで、それがレストランビジネスの実態を映しているとは思わない。協会加盟のファミリーレストランやファーストフードがコンビニや中食マーケットに市場を侵食されているのは時代の流れであり、協会がいまだに「パブレストラン/居酒屋」「ディナーレストラン」(古い言葉だ!)と括る部分も、旧来型のチェーンスタイルが廃れ、半面トレンドを捉えた新業態が成長しているなど、市場の底流で起きている本質的な構造変化は統計数字に表われてこない。協会に加盟していない新興チェーン勢力や3〜10店舗ぐらいの成長企業、あるいは魅力的な個店はこの4〜5年で確実に増えており、なにも悲観するにあたらないと、筆者は考えている。
フードスタジアムはそうした「外食産業」の隙間で伸びている飲食店・レストランにスポットライトを当てることをコンセプトにしている。毎日、街をリサーチし、ヘッドラインの編集をしていると、「外食不況」の感覚はまったくない。それはともかく、新たなチェーン店成長ビジネスモデルが“ベンチャーリンク神話”崩壊以来、描かれてこなかったことも事実だ。しかし、ここにきて様々な外食支援ビジネスが登場し、中には“大化け”し始めた企業も出てきた。ビジネスモデルは“弁証法”によって進化することで成長するという。Aというモデルが成長しピークアウトすると、それをアンチテーゼとしたBというモデルが登場する。しかしそれもほどなく成熟し、今度は新たにAとBの失敗を教訓にCという成長モデルが誕生するというわけだ。
筆者がいま注目している“Cタイプ”モデルはいくつかある。資本力を背景に確実に支援事業を伸ばしている「テレウェイヴリンクス」、中小酒卸店が集まった「日本ジェノスグループ」がつくった「AQSHNET」、独立開業支援のための「コマーシャルラボ」展開を始めた新感覚派デザインチーム「スタジオナガレ」、新たに投資活動を活発化する一方で「テンポス情報館」という飲食支援ポータルサイトの構築を目指す「テンポスバスターズ」、求人情報誌「グルメキャリー」が始めたライセンス販売事業の「ネオサーポート」などだ。これらはビジネスモデルのためのモデルに終わらず、NPO法人のような偽善的ボランティア要素もいまのところ感じられない。今後、どう育っていくのか楽しみである。それから、新興企業で注目したいのは株式会社フーディーズである。同社の久保田恭章社長は、創業から株式上場まで店舗流通ネット(現TRNコーポレーション)の幹部だったが、2年半前にフーディーズを設立、時の居酒屋「刻」のチェーン展開を始めた。
「刻」の特長は居抜き物件を再生していく久保田社長曰く「リノベーション・コンサルティング(RC)」スタイル。「従来のFCビジネスの短所であった高い加盟金、長い物件待ちを解消しました」と言うように、彼が考えたのはまず50万円で出店コンサルティング契約し、契約をもって“出店順位”を保証し、物件契約後300万円のライセンス料を取る。さらに居抜き物件を低コストでリメイクすることによって初期投資を坪40〜50万円に抑える。ベンチャーリンク系FCの場合、加盟金を払って契約してもエリア内に物件が出ないと出店できず、投資も50坪で6,000〜7,000万円ほどかかっていたが、RCシステムを使うと出店スピードが早く投資も3,000万円以下に抑えられるというわけだ。しかも、店舗流通ネット時代に物件開発担当だった彼のもとには、最新の物件情報が必ず入る。その結果、わずか2年半で「刻」は25店舗にまで急成長した。業界で話題に上る物件には必ず絡んでくる勢いである。近くオープンする新宿3丁目店は1〜2階で80坪、160席の大型店となる。FCビジネスの次は「店舗流通ネットを超えるビジネスモデルをつくる」と久保田氏。「RCを私は“外食成功支援事業”と呼んでいます。24兆円の下げ止まりを成し遂げ、社会に貢献したい」と締めくくった。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として取り上げられる。




