編集長のつぶやき

【VOICE FROM EDITOR】2006-09-28

変わりつつある「奥渋谷」「裏渋谷」

変わりつつある「奥渋谷」「裏渋谷」

「いま渋谷の奥が面白い!」というので、久しぶりに“猫のきもち”になってディープな渋谷の街を歩いてみた。ハチ公口からスクランブル交差点を越え、道玄坂、東急本店通り、井の頭通りの“奥”、センター街の“裏”の道玄坂上、円山町、宇田川町一帯、松涛、神泉までのエリアである。

筆者は2003年9月、東京商工会議所渋谷支部主催の「飲食・環境衛生分科会セミナー」で「レストラン2003年問題!勝ち残るのは商業施設か、街場の店か〜シブヤ地区飲食業の今後を占う〜」というテーマで講演した。同支部が六本木ヒルズ開業による渋谷エリアへの影響を恐れて、「渋谷の飲食業が勝ち残るノウハウを教えてほしい」という依頼だった。そのときは、「街場の飲食店は個性化することで生き残れる。渋谷は駅前よりも“周縁部”が面白い」と話した。そして「渋谷大人化計画に注目したい」と述べた。

渋谷の街は駅周辺を底に「すり鉢型」の地形で、人やエネルギーは底に溜まるが、それがアートや文化に転化、昇化していくのは周縁である。レストランもコンセプトや個性で勝負するなら「奥渋谷」「裏渋谷」が面白い。ただ、この街は猥雑すぎる。風俗、クラブ、ホテルなどの「俗エネルギー」の集積地であり、世代的には圧倒的にティーン及びF1、M1マーケットである。そのエネルギーに負けない、あるいはそれを飲み込む懐の深いパワーが必要だ。具体的に言えば、「チョー個性の店」と「マジ大人の店」ぐらいしか勝ち残れない(かなり極論だが)。

で、センター街が苦手の筆者は道玄坂上から回ってみた。「BUCHI」の下の路地を左に入ったところに最近オープンした「博多ぬくぬく家」。博多の「あ・うんグループ」東京初出店の店である。メインはもつ鍋だが、“博多炊き餃子”という新しいコンテンツが売り。ブームになり始めた“熊本産馬肉”も提供。道玄坂を下ると右手に関西から来たイタリアンたこ焼きの「SUPA たこ」。さらに下った道玄坂上交差点のビルでは際コーポレーションが既存店をリニューアル、「みぞれ」「うなぎ」などの“変わり鍋”の「ゆるり屋」をオープンした。

東急本店前からセンター街裏に出たら、新築飲食店ビルを発見。立呑み屋の前の瀟洒な福岡ビルに「Kawaraya」の3店目「お座敷ダイニング」がオープン。その通りを抜けたところにリン・クルーの「もつ道」が。井の頭通りに出て、左を奥に進むと際コーポレーションの店が集まる路地がある。そこにも、讃岐うどんブームを当て込んだ“勝谷誠彦公認”の「じゃぶかま」、大人の空間「KAPPO KAISEKI 縁賀和(えんがわ)」。横道に入るとジンギスカン「ゆきだるま」。その前の路地を抜けると宇田川町の奥の飲食店通りに出る。異彩を放つ「てっぺん女道場」の前に「てっぺん男道」が出来た。その先には立ち飲み「あばらや別館」がある。この通りは、再開発の真っ只中で抵抗するレジスタンスの匂いがする。

井の頭通りに戻ると景色は変わる。きれいに舗装し直されたバス通りには、アパレルブランドと消えゆく「西武グループ・堤家の権威」の残骸。渋谷西武、ロフト、パルコなどはどう再生すのだろうか。しかし、着実に新しい息吹が生まれつつある。その一角に上海から上陸したカフェ「一茶一坐」。スペイン坂奥には、なぜか元気のいいニュースタイルのカフェレストラン「FLAMES」が気を吐く。そのすく下には、10月下旬に本場スペインそのままのバル「CASA DE BUENO」がオープンする。地下100席を超える大箱で、渋谷になかった“大人の社交場”としてのスペインバルをつくるという。

渋谷駅に帰るセンター街に28日オープjンした中国最大の“火鍋レストラン”チェーン「小肥羊」。昼のオープニングレセプションには関係者が溢れていた。この街には通りはあっても、まとまった街づくりのベクトルがない。それゆえに猥雑なのだが、近未来には六本木ヒルズ並みの再開発が進むという見方もある。一足先に地下鉄の開通で駅前が再開発され、JR・東急電鉄中心の「エキマエ」が出来る。そうなれば「すり鉢」の底はなくなる。街のエネルギーはますます周縁部に拡散していくだろう。いずれにしても、その変わりゆく渋谷がいま、面白いことは間違いない。

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【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として取り上げられる。

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【VOICE FROM EDITOR】2006-09-21

“世代交代”と“価値観の変化”

“世代交代”と“価値観の変化”

安倍晋三新政権がスタートした。永田町は安倍総理より上の世代と下の世代との激烈な“世代間戦争”が始まることになる。上の世代は人脈や経験を振りかざし既得権確保に血眼になる。一方、下の若手たちは「俺たちの出番だ」と実力を省みず軽挙妄動に走る。

今回の世代交代のタイミングは、憲法問題にしろ教育問題にしろ、ちょうど時代の価値観の大転換期と重なっている。「金脈」や「人脈」をベースとした“義理人情政治”はもはや意味を成さず、「新しい日本(安部サン的には「美しい日本」」の背骨や軸となるような価値観の創造こそが政治を動かすギアになるに違いない。その点、安倍総理、彼の同世代、そして若手たちの真価が問われる局面である。

飲食業界での“世代交代”の波も激しい。また、「飲食店」をビジネスモデルとしてどう考えるかといった“価値観の変化”も急速に進みつつある。もはや東京レストランマーケットでは、一部FF・FR業態を除く既存のチェーン・オペレーション手法に基づく「一業態多店舗展開」は過去の価値観となった。「多業態少店舗化」が新しい価値観であり、若手経営者たちの中には「マルチコンセプト・マルチ業態で100店舗、200店舗を目指す」と語るトップも現れてきた。

あるいは「FL55%以下」「月坪売上30万以上」といった収益の方程式でさえ、「そんなものは昔の価値観だ。私はFL65でも70でもいい、利益率が10%割っても、お客が喜んでくれスタッフが生きがいを感じてくれればそれでいい」と言い放つ経営者もいる。言い方を替えれば「個性こそが価値観」ということである。オーナーが10人いれば10の考え方があっていい。それが成り立つ業界が飲食ビジネスなのである。食のビジネスは「一物多価」がベースである。それにならえば、「一店多価」の時代がやってきたということか。

【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として取り上げられる。

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【VOICE FROM EDITOR】2006-09-14

どんな目線で店をつくるか?

どんな目線で店をつくるか?

個性ある店には必ず必ずオーナーの店作りに対する強いイメージやポリシーがある。それが強すぎたり、客の方を向いていないと「居心地の悪い店」になってしまうが、その“目線”が徹底して顧客志向だと、とても「いい店」になる。

先日、ダイヤモンドダイニングの松村厚久社長とエイチ・ワイ・ジャパンの安田久社長の“師弟コンビ”と食事したとき、松村さんがポロリと言った。“朝礼伝道師”として今や業界の寵児に登りつめた「てっぺん」の大嶋啓介社長について議論していた折である。「僕は“女性目線”で店をつくっていますが、大嶋さんは“男性目線”でつくられているんじゃないですか」。なるほど、個性ある店をつくるオーナーたちは、明確な“目線”を持っている。その目線の先には客が楽しみ、喜ぶ姿が映し出されているに違いない。

松村さんや「芋蔵」のジェイプロジェクトの新田治郎社長など、ディスコ経営から成り上がったオーナーたちは「いかに女性客に喜んでもらえるか」といった“女性目線”で店をつくっている。ホールスタッフが客から呼ばれたときは、床に膝をついて客より下の目線で話す。優越感を感じた客は気持ちよく食事する。カップルや合コンの場合は、女性客が喜べば、連れてきた男性客も満足する。一方、“男目線”の店はあくまでベタな空気づくりにこだわる。「男は黙って…」(古過ぎ!)じゃないが、俯き加減でグラスを傾ける客には「お疲れさまっ」とボソッと声をかける。男はそれでホッとする。自分の場所がここにある、とばかり男たちはその店に通う。

今週は、フードスタジアム【INTERVIEW】の仕込みで、オザミワールドの丸山宏人社長、ケーズカラナリープランニングの越野健太郎社長にお会いした。「オザミデヴァン」の丸山さんは銀座7丁目のコリドー街近くに初の和食店「銀座大野」を開店したばかり、「匠Dining」ブランドで個性的な店を作ってきた越野さんは、赤坂に初の“個人投資家ファンド”による「MADOy」を開けたばかりである。丸山さんの店作りの要諦は「自分が行きたい店をイメージし、時間をかけて具現化していく」ことだ。スペインバルが流行るずっと前から構想していた「バニュルス」(銀座2丁目)も、5年前からやりたいと思っていたものの、イメージ通りの物件が見つからず開店までには時間がかかった。ようやくオープンに漕ぎ着けたら、たまたまスペインバルブームが…。大ヒットとなった。和食も4年前から構想を立て、イメージを固めてきてやっと実現。飲食店に対するそのこだわりの強さ、お客目線があるからこそ、これまでの店はすべて成功したのだろう。

ITベンチャー、ネット証券会社を渡り歩いてきた越野さんが飲食ビジネスに入ったのは、客として外食を重ねた結果である。「仕事が終わって夜中に食事するとき、六本木あたりのバーに行くしかなかったのですが、どんなバーに行っても食事がイマイチだった。雰囲気はいいし、酒は旨いけど、しっかりと食事できるバーがあってもいいんじゃないか」。その疑問がこの世界のへの扉を開いた。「僕は徹底して“客目線”で店をつくります。それが原点です」と言う。その彼が今度は個人投資家の出資を集めて飲食店をつくる「東京レストランファンド」を設立、その投資案件第1号が赤坂「MADOy」である。今度は“投資家目線”“オーナー目線”である。「自分がオーナーなら」といった目線で店をつくる。まったく新しい発想である。

「いい店」の基準は使う客それぞれによって違うことは言うまでもない。しかし、大事なのは「客観的」であるということだろう。客観的=客“看”的。お客さんを“看る”視線とポリシーが問われている。

【ご案内】
・9月21日(木)にフードスタジアム主催の「第1回レストラントレンド・セミナー」を行います。好評につき、参加定員を増やしました。まだ席に余裕がありますので、興味ある方はお申し込みください。詳細は以下のURLをご参照ください。
http://cachette.co.jp/pc/events/seminar.swf

・9月22日(金)に起業家養成スクール「ドリームゲート」の「ビジネストレンドセミナー」講師を私がつとめます。テーマは「レストラントレンドの先読み術」です。こちらもまだお席があるようですので、ぜひご参加ください。詳細は以下のURLをご覧下さい。
http://www.dreamgate.gr.jp/college/trend/index.html

【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として取り上げられる。



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【VOICE FROM EDITOR】2006-09-07

「飲食店は誰のものか?」―M&Aブームを憂う

「飲食店は誰のものか?」―M&Aブームを憂う

ライブドア問題や村上ファンド問題で株主の横暴が指摘され、「会社は誰のものか?」の論議が活発になったが、飲食業界でもM&Aや株式公開ブームが到来し、「キャピタリズム至上主義」が蔓延しかねない状況となってきた。

昨日、都内某所である飲食店のオープニング・プレスパーティが開かれた。数億円はかけたと思われる豪華な内装。高級なワインと料理。出席者の顔ぶれは、著名な雑誌の編集長やグルメ評論家の諸氏。IT企業がベンチャーキャピタルなどからの出資を含めて資本金4億円強を集めて設立した飲食ベンチャーの第1号店だ。「客のわがままをすべて聞く」コンセプトで差別化を図るという。どう考えても投資回収できる筈がないと思ってしまうのだが、それは蓋を開けてみなければわからない。

数日前も伸び盛りでIPO街道まっしぐらの若手経営者たちと食事した。話題は「一番早いのはゼットンのイナケン(稲本健一)らしい」「いやサダヒロ(貞廣一鑑)も早いんじゃないか」といった上場レースの下馬評である。飲食ベンチャーたちが一つの夢であるIPOを目指すのはもちろん悪いことではないが、それが“ゴール”だったら悲しいことである。「資本の力」は必要だが、それが自己目的化すると経営にモラルはなくなる。飲食店にとって本来の目標であるべき「顧客満足」が株式公開によって「株主満足」に変質を遂げてしまった企業がいかに多いことか!

それにしても、大量の投資マネーが飲食業界に流入し始めたことは間違いない。来年の大型商業施設オープンラッシュで“第二次レストランバブル”が到来しつつあることと無縁ではないだろう。飲食の場合、客観的な技術力やノウハウがなくても「コンセプト」と「物件取得力」だけで投資マネーが集まる時代になったということでもある。それに華やかな商業施設でのデビューというステージがディベロッパーと投資家の間のシナリオによって用意される。したたかなベンチャー経営者は「資本の力」と「デビューステージ」だけで勝者になれる業界であることを見抜き戦略を描いている。それはそれで結構なことだが、「飲食店は誰のものか?」といった原点は忘れないで欲しいものである。

【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として取り上げられる。


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