編集長のつぶやき

【VOICE FROM EDITOR】2008-10-09

「外食暗黒時代」を乗り切る法

「外食暗黒時代」を乗り切る法

今年もあと2ヶ月。この季節になると、メディアから「2009年の飲食トレンドを予測してほしい」という取材や講演依頼が多くなる。昨日も某トレンド系月刊誌の取材が入った。来年はどんな年になるのだろうか?

取材を受けるにあたって、私は以下のようなレジュメを用意した。書きなぐりながら、「来年は外食暗黒時代だな」と思わずつぶやいた。
・大波乱期に入る。2010年まで破綻、撤退、閉鎖、リストラなどが続く。
・首都圏では、オーバーストア状態にあり、5割の店舗が姿を消すかもしれない。
・3割の勝ち組が残り、負け組の受け皿となる。残りの2割は現状維持。
・大手チェーンも再編化。M&Aによってメガグループに集約される。
・不動産系、ファンド系、業態開発・運営力のスキルがない新規参入、新興企業が危ない。
・チェーンビジネスのモデルだけで多店舗した会社が危ない。
・“飲食の本来の価値観”が問われる。
・客単価でいえば、3,000円以下と10,000円以上が生き残る。
・しかし、金融危機が進めば、10,000円以上もパイが小さくなる。
・チェーン店の生き残る道は、マイクロ化、専門化。
・システムの時代から“職人”の時代へ。飲食の本質はアナログ。
・敗戦後の焼跡闇市時代に似ている。横丁が流行る。「食べることは生きること」。

これらは、日頃取材活動や自らプロデュースの仕事を通して、感じたこと、耳にしたこと、である。とくに、ここにきてすかいらーく、吉野家といった外食リーディングカンパニーのドラスティックな崩壊劇やリストラ策発表が相次ぎ、「5割の店舗が姿を消す」という意見でさえ、あながち穿った見方とも言えなくなってきた。「日経MJ」によると、日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査」から既存店に関する解説が消えたという。まるで、戦時中の大本営発表が敗戦色濃厚になってから、不利な戦況報告を消し去ったのと似ている。日本ショッピングセンター協会が月次マイナス報告を堂々とリリースしているのに比べ、あまりにもお粗末というか、いまや沈没寸前の戦艦大和状態に陥った大手外食企業、もっと言えば政府自民党農水省の恣意が働いているのではいかと思ってしまうのは私だけだろうか。

暗い話ばかりしてもしょうがない。では、大手外食企業が生き残る道はないのか?それは、上記のレジュメにも書いたように、「マイクロ化」「専門化」だ思う。二つの例がある。私が最近、注目している企業の新業態戦略だ。フォーシーズサザビーリーグの“ベタ業態”である。フォーシーズが新丸ビルで「ソバキチ」を出したときはあまり驚かなかったが、渋谷駅前「串かつでんがな」を出したときはビックリ仰天。「ここまでやるか!」と思った。そして、最近、ベタではないが渋谷マークシティにスペインバル「BikiNi TAPA」を出した。「いまさらスペインバル?」と思ってリサーチに行ったら、これがすごいMDだった。オペレーションや人材調達力に余裕があるだけに、業態開発に本気で取り組めばここまでのレベルになるのか、と正直脱帽させられた。

一方、サザビーリーグのベタ業態はあまり知られていないと思うが、串焼き業態の「手前みそ」がチェーン展開を始めている。1号店は銀座「miso bank」1階からスタート。2号店を御徒町に出し、3号店は新橋烏森口。そして、このほど4号店を五反田に出店した。どの店も、いつもサラリーマン客で混み合っている。さらに五反田店の2〜3階には新業態「三三八(さざや)」がオープン。今度は“魚炙り串”という業態である。魚といえば、いまや猫も杓子も“鮮魚居酒屋”“浜焼き”“漁師料理”である。しかし、もう魚介のショーケースに大漁旗は飽きた頃。さすがにサザビーリーグ、「ウチが魚をやればこれ!」という差別化、専門化を打ち出している。やはり、実力のある大手が真剣に、そしてちょっと遊びとエンタメを取り入れて業態開発に取り組めば、こんな繁盛店ができるという好例である。ところで、ワタミフードサービスも洋スタイルの新業態をスタートさせるそうだ。デザイナーも大御所たちを尻目にダイヤモンドダイニングの店舗デザインなどで活躍する若手が起用されたらしい。どんな新業態が飛び出すか、期待したい。

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【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、レストランビジネス・プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。日本ショッピングセンター協会発行の『SC JAPAN TODAY』4月号より「食のマーケット&トレンド」を連載開始。
2007年5月、有限会社カシェットから「フードスタジアム」を分社独立、渋谷区代々木にフードスタジアム株式会社を設立。業界トップのWEBニュースとして、現在月間PV600,000を超える東京レレストラン&グルメニュース「フードスタジアム」の拡大、全国展開に乗り出す。『ARIgATT』の復刊も模索中。
佐藤こうぞうブログ「つぶやき編集長の『毒にも薬にも…』」も開始。“裏つぶやき”として話題に。


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