編集長のつぶやき
いまこそ“エンタメ”としての外食産業の価値を見直せ!

ファミレスや大手居酒屋チェーンを代表とする外食産業は、少子化や人口減少でただでさえ客離れ現象が起きているのに、中国ギョーザ問題に食品偽装、さらにここにきてガソリン高騰、小麦粉やバター、食用油など原材料高が加わり、ついに“複合不況論”が台頭してきた。
実際、来店客数や売上高をみれば、このところの落ち込みは極めて激しいようだ。4月、5月のファミレス、居酒屋チェーンの前年同月比の数字は、軒並み92〜93%台。中には90%を切るところも散見されるとか。デニーズのように、いち早く店舗の大幅リストラを打ち出したところもあるが、腰が強いとされてきたワタミや大庄でさえ、この“複合不況”に足元を揺さぶられているようだ。しかも、本格的不況は今年下半期に襲ってくることは間違いない。おそらく後年になって、今年は“外食産業2008年ショック”と記録されるに違いない。そんなカタストロフィーの入り口に、いま外食業界は立たされているのではないだろうか。
そんな折、親しくしていたベンチャーリンクの編集者たちから、「長年つとめた会社を退職することにしました」と悲痛な想いをこめた挨拶メールが来た。業績悪化に伴う「150名の早期退職応募」に応じたのだという。ベンチャーリンクといえば、既存の大手チェーン店を超えるFCチェーンビジネスモデルとして一世を風靡した企業グループだ。このモデルから、様々な飲食ベンチャー上場によって一攫千金の夢を果たした起業家も少なくない。しかし、彼らを生んだビジネスモデルが“砂上の楼閣”でしかなかったことが証明された。カタストロフィーの嵐は、旧来型のチェーンモデルだけでなく、新興チェーンビジネスモデルも、あっという間に吹き飛ばしてしまったかのようだ。
そして、カタストロフィーの跡に残るのは何か。それは、ビジネスモデルではない、新しい生命の息吹である。新しい生命とは、ビジネスモデルを取り払った“原点”である。古くて新しい“価値”である。では、外食業界の“原点”“価値”とは何か。それは、お客さんを喜ばせることであり、働く者に生き甲斐を与えることである。決して、株主を喜ばせることではない。もうそろそろ、チェーンストア理論万能主義とともに、アングロサクソン型の株主価値の極大化主義から解放されるべきではないだろうか。そして、「外食=エンタメ産業」への止揚を目指すべき時代に入ったのではないだろうか。その点、“第二世代”の稲本健一氏の「外食は2時間をどう楽しませるか。映画や音楽がライバル」、松村厚久氏の「お客様歓喜主義、個店主義」といったスタンスが、新しい時代への可能性を感じさせてくれる。
※毎週木曜日に発行しているメルマガをぜひご購読ください。購読料は無料です。購読方法はメルマガ登録フォームから。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。




