編集長のつぶやき
夢と情熱とソロバンと

怒涛の一週間だった。ダイヤモンドダイニング松村厚久社長の「外食アワード」授賞祝賀パーティー、エムグラント井戸実社長の「ふくのかみ」浜松町店オープン、そして…
この一週間、休む暇がなかった。2月14日には“サードG”理事最年少で国分寺に「うさぎ亭」など3店舗を持つ小島直人さん(「なおと」と呼んでください、と本人)が初めて独立支援型でオープンした「猿吉(えてきち)」のレセプションに。既存店はどこも地元の常連で賑わう。「なおと」に初めて会ったとき、「もしかしたらコイツが居酒屋業界を将来変えるかもしれない」とピンときた。母親譲りらしい飲食人としての情熱とソロバンを兼ね備えている。方向性は楽グループの“宇野イズム”、それを受け継いだ上昇気流の“笹田マジック”を踏襲。「そこにしかない店のオーラ」をつくっていく。「なおと」はこれから都心に活躍の場を移すという。どこでどんな店をやるのか、いまから楽しみでならない。
18日はダイヤモンドダイニング松村厚久社長(“サードG”代表幹事)の「外食アワード2007」授賞祝賀パーティー。主催者側で、どのくらいの人がお祝いに来てくれるのか、ヒヤヒヤしながらこの日を迎えたが、あかげさまで大盛況。会場の銀座「砂漠の薔薇」は300名を超える方で溢れた。当の松村さんとは1号店の「バンパイアカフェ」からの付き合い。ちょうど『アリガット』編集長のときオープン、「面白い店をつくる奴だな」と思った。私が行くと、どこからか必ず挨拶に駆けつけてくれる。笑顔だが目が笑っていない。決して鋭いわけではないが、空を刺すような視線。その視線の先が読めなかった。しばらくブランクがあった後、5店舗目の「竹取百物語」をフジサンケイビジネスアイの連載で取材したとき再開。それから53店舗のここまで来るのにわずか3年。彼の視線の先にはこのビジネスモデルがあったのか。これから目標の100店舗達成を目指す。駅伝やマラソンにたとえれば“折り返し地点”。賞を取って浮かれている場合ではない。ここからが大変だ。それは本人が一番よくわかっているはず。“着せ替え業態”にならない本物の業態開発力が求められてくる。夢とソロバンとの葛藤が始まるに違いない。
19日はエムグラントフードサービス井戸実社長(“サードG幹事長”の新店「ふくのかみ」オープニングプレスレセプション。五反田でブレイクした博多水炊きの2号店だが、場所がユニーク。浜松町駅から大型オフィスビルの「東芝ビル」へ行く専用通路を通り、さらに歩いてやっとたどり着ける「シーバンス・アモール」。ここもNTT都市開発所有の大型オフィスビル。東芝ビルと合わせて2万人近いオフィスワーカーがいるという。飲食店はあくまでオフィスワーカーの胃袋を満たす機能でしかないエリアだ。夜は東芝ビルの一部の店を除いてどこも閑散としている。「ふくのかみ」も夜の営業が不振で撤退していった和食店の居抜きだ。40坪60席の高級感ただよう造作をわずかの資金で手に入れた。まさに“ハイエナ戦法”である。井戸さんは30歳、「外食で史上最年少最速最大売上げ達成」を目標とする。居抜きで繁盛店をつくることは容易ではない。しかし彼のソロバンの基準は繁盛店をつくるというより、損益分岐を徹底して低く設定すること。この店も「昼7割、夜3割でも利益を出すこと」。新しい発想の飲食人が出てきたものだ。
20日は創業33年、田町ドミナントで「酒蔵 駒八」を中心に20近くの店舗を運営する八百坂仁さんと「居酒屋経営塾」の打ち合わせを兼ねたインタビュー。常連客から“オヤジ”と慕われてきた八百坂さん、いまでも毎日必ず本店に立ち、笑顔で客を迎える。常連の中には30年前の開店日から平日は毎日通い、定年後のいまも週1回は通うという高島平在住の元サラリーマンもいるという、“恐るべき居酒屋”だ。創業時から板長がつくる新鮮素材の手作り料理を提供。この店から生まれた居酒屋定番メニューも多いという。八百坂さんの居酒屋哲学は“徹底した現場主義”、そして“人肌のようなサービス”。20店舗近くまで拡大しても、「企業ではなく家業に徹する」と言い切る八百坂さん、今年還暦を迎えるのを期に「業界に恩返ししたい」と3月から「居酒屋経営塾」を立ち上げる。6ヶ月単位でワンクール、毎月1回の講義には、ゼットン稲本健一社長、ホッピービバレッジ石渡美奈副社長、デザイナーの神谷利徳氏、ワタミファーム武内智社長など“八百坂ファン”のゲストが顔を出す。なぜか私がコーディネーター役をつとめることになったが、そう言えば、いつのまにか私も月に2〜3回は駒八に通っている常連の一人である。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。




