編集長のつぶやき

【VOICE FROM EDITOR】2007-09-13

“物件至上主義”批判

“物件至上主義”批判

飲食店経営の難しいところは、人気エリア、好立地に店を出したからといって、必ずしも成功しないということである。“物件至上主義”を唱える業界人が増えているが、肝心なことはエリアや物件に依存しない覚悟をもつことではないか。

毎日、新規オープンの個人開業店がやたらと増えているが、中には「こんないいエリアのこんないい場所によく出店できたな?」と感心するケースもある。しかし、よくよく話しを聞くと、店舗サブリース会社や店舗オークション会社から融資付きで話しを持ち込まれ、居抜きをそのまま借りてしまい、余裕資金もないままスタートしたものの、なかなか損益分岐に届かないで悩んでいたりする。「物件」に一目惚れし、安易に開業に走った失敗例だ。以前、つぶやきで「居抜きで業態をつくることは相当難しい」と書いた。もちろん、中には成功例もあるが、よほど“業態開発力”やオーナー、シェフの“発信力”がないと好スタートは難しい。

昨日は“物件よりも開発力”という成功例を2店歩いた。まず、19時に予約を入れていた「京橋BRICKS」の鉄板カウンターの前に座る。12坪18席の小さな店はたちまち満席になった。ここも半年前にオープン、フードスタジアムのヘッドラインで“業界発信”した店だが、場所柄すぐには火が付かなかった。しかし、キハチ出身の実力派シェフ3人組が、探しに探してやっと見つけた物件、「ここで勝負するしかない!」と覚悟で臨んだ“鉄板焼バル”業態。いまや土曜日も2回転、平日は予約を取るのが難しいほど繁盛している。BRICKSで千葉県浅野ファームのイタリア野菜と岩手産SFP豚の鉄板焼き料理を堪能したあと、やはり21時に予約していた八丁堀「maru3階」に向かった。伝説のスペインバル「maru」がやはり昨年新規で出した“鉄板焼ワインバー”である。

「maru」は1階が酒屋兼立ち飲み、2階がスペインバル、そして同じビルの3階に鉄板焼バーがある。水曜日の21時。1階も2階もいつもの通り超満席。3階も同じように空席がない。本当にこの店は“お化け”と言うしかない。なぜ、この場所で、こんなに流行るのか。肝心の鉄板料理はちょっとがっかりしたが、“鉄板”という新しいフックを利用して、店舗を拡張したに過ぎないことがわかった。次は“寿司”とかをフックにして「maru4階」が誕生するかもしれない。わずか10坪足らずの“角打ち”からスタートした「maru」。物件至上主義がナンセンスであることを思い知らされる成功例である。

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【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、レストランビジネス・プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。日本ショッピングセンター協会発行の『SC JAPAN TODAY』4月号より「食のマーケット&トレンド」を連載開始。
2007年5月、有限会社カシェットから「フードスタジアム」を分社独立、渋谷区代々木にフードスタジアム株式会社を設立。業界トップのWEBニュースとして、現在月間PV600,000を超える東京レレストラン&グルメニュース「フードスタジアム」の拡大、全国展開に乗り出す。『ARIgATT』の復刊も模索中。

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