編集長のつぶやき

【VOICE FROM EDITOR】2007-05-24

「最大公約数」から「最少公倍数」的発想へ

「最大公約数」から「最少公倍数」的発想へ

先週のメルマガ「編集前記」に書いたレインズインターナショナル「温野菜」の記事が話題を呼んだようだ。「同ブランドのチェーン展開」を批判したわけではないのだが…

私はレインズが展開している「温野菜」の新メニュー“二色鍋”を評価し、“和の火鍋”として新業態化してもおかしくないということが言いたかった。FC展開を前提としたチェーン店の商品(メニュー)をあまりに高度化、複雑化するのはジーにとって負担が大きすぎるし、本部の思い込み、新しい押し付け販売ではないかと思ったのだ。FCチェーン展開が悪いわけではないし、ましてや上場企業においては株価を維持するためにはハイスピードな出店拡大が求められるのは仕方がない。

その後、ある人にこう言われた。「最近上場したゼットンダイヤモンドダイニングさんの株価が低迷しているのは単一ブランド、マルチブランドにこだわるあまり、展開に限界があるからだ。投資家にとっては急速なチェーン展開ができるビジネスモデルでないとリスクが大きい」と。“単一ブランドのチェーン展開”と“マルチブランドの多店舗展開”のどちらがリスクがあるか。この議論は、これからの飲食店経営の戦略を考える上で、重要なテーマになるだろう。上場を視野に入れている企業にとっては特に大きな問題だ。

その議論をする上で欠かせない前提は、マーケッティングである。折りしも数々のTV番組やヒット曲の仕掛け人である作詞家の秋元康さんの話を聞く機会があった。彼の話のポイントは、今の時代は“最大公約数”的発想は意味がなくなった。これからは“最小公倍数”的アプローチでないとヒットは作れない、ということ。TVで言えば、ゴールデンタイムに万人にウケるような番組はもう作れないという。なぜならば、いまや家族が揃ってその時間にTVを観る時代ではない。個々がバラバラな生活スタイルを送っているからで、その個々の関心に“ササる”企画こそが求められていると言うのである。最初は3人にウケる企画でいい。それがクチコミで6人になり12人になり36人になり…と最少公倍数的に増えていけばいい。

まさに、今の飲食マーケットもこうした“最少公倍数”的な仕掛けが求められているのではないか。誰もが満足するような“最大公約数”的な業態、メニューをつくり、単一ブランドでチェーン展開することのほうが、リスクが高いかもしれないことを示唆している。しかし企業の収益極大化を目指すためにはチェーン展開、多店舗展開は必要だ。では、業態を陳腐化させないでチェーン展開を図る方法はないのか?これまでのFC展開の矛盾と限界を“止揚”できるような解決法はないか?それが今こそ問われている。

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【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。
日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、飲食店プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。日本ショッピングセンター協会発行の『SC JAPAN TODAY』4月号より「食のマーケット&トレンド」を連載開始。
2007年5月、有限会社カシェットから「フードスタジアム」を分社独立、渋谷区代々木にフードスタジアム株式会社を設立。業界トップのWEBニュースとして、現在月間PV600,000を超える東京レレストラン&グルメニュース「フードスタジアム」の拡大、全国展開に乗り出す。『ARIgATT』の復刊も模索中。

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