編集長のつぶやき
「もつ鍋」ブームもそろそろピークか?

“もつ鍋ブーム”の火付け役となった「博多もつ鍋 蟻月」が3月19日、代官山に今度は「博多水炊き 蟻月」をオープン、話題を呼んでいる。
「蟻月」が恵比寿の辺鄙な場所で密かに産声を上げたのはもう3年以上前の2003年、クリスマスイブの日だった。博多ラーメン「一風堂」出身者たちが研究に研究を重ね、「白」「赤」「金」の独特のスープを揃えてデビュー。たちまち人気店となり、「芸能人御用達」「予約の取れない店」として、いまやもつ鍋界の“聖地”とさえ呼ばれる。2005年4月にはもつ鍋セットの通販事業にも進出、同年10月代官山に「HANARE」を、12月には心斎橋店を出している。
10数年前、地元博多から東京進出した「もつ鍋元気」が火をつけた“第一次もつ鍋ブーム”はわずか2年足らずで終わったため、今回の“第二次ブーム”もジンギスカンと同じようにそのうち終息すると見られていたものの、むしろ東京マーケットに根を張り、すっかり定着した感がある。“元祖”「もつ鍋元気」も六本木に復帰し、いまや地元からの東京進出組、東京スタイルのオリジナル組、ブームに便乗したキャッチアップ組と様々な店が入り乱れ、“仁義なき東京もつ鍋戦争”がヒートアップしている。
恵比寿エリアだけでも、「蟻月」のほか、「黄金屋」「もつ義」「たまや」「龍」などの人気店が“予約の難しい店”といわれている。3月6日にはゼットンの「チャミスル」が入ってたビルにリン・クルーが「もつ道」恵比寿店をオープンした。もつ鍋の人気の要因は、手頃な値段でにヘルシー鍋(コラーゲンたっぷり)を楽しめること、良質なモツの仕入れルート確保で味食感が格段にレベルアップしたこと、味噌、醤油、塩などをベースにしたスープに様々な特長を出して他店と差別化できること、そしてジンギスカンと違ってサイドメニューを揃えることによって鍋以外の食事も楽しめることなどだろう。
しかし、「蟻月」オープンから起算してブームがすでに3年も続くと、そろそろ“飽和感”が出てきてもおかしくない。すでに専門店でなくても、もつ鍋をメニューの一つに加える居酒屋や和食店が続出している。豚しゃぶブームと同じような定着と選別の波が待っているような気がする。「博多水炊き 蟻月」のオープンは、もつ鍋ブームを仕掛けた自らが“追随組”に嫌気がさし、“ふるい落とし”を狙ったに違いない。同店のホームページにはこうある。「…どうもブームに乗る、とにかく後追いで走り出す習性というのは…江戸時代前からの習性のようで…とにかく走り出すとみんな走り出す。そして徒党をなす」とブームに警鐘を鳴らし、「まあ、なかには冷静にフィールドを見回す漢(おとこ)がいて、たぶんそんなやつが次世の主流に…」と書いている。したたかにマーケットを読んでいるではないか。もつ鍋もそろそろピークということだろう。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、飲食店プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。





