編集長のつぶやき
ビジネス街で進化を遂げる「立ち飲み屋」

先週、「スペインバル」の増殖について書いたが、「立ち飲み屋」の進化も留まるところを知らない勢いだ。恵比寿エリアの“立ち飲み戦争”が一段落したかと思えば、いま神田、神保町、水道橋周辺のビジネス街で新たな戦いが始まろうとしている。
12月7日、神田神保町の路地裏立地で“ビジネス街の洋食屋”として親しまれてきた「キッチンジロー」が初の立ち飲み業態「キッチンジロー 神保町スタンド」をオープンする。既存店を完全リニューアルし、昼は従来のランチ営業を続けながら、夜の顔を新たに“串揚げとおでんの立ち呑み”として打ち出すことによって、いわば“夜ジロースタイル”をつくるのが狙いだ。ターゲットはもちろん近隣のビジネスマンだが、店舗デザインを立ち飲みブーム発信源となった渋谷「buchi」、恵比寿「buri」を設計した萩本雅泰氏に依頼することによって、周辺の出版社勤務のクリエーターやOL層も取り込める環境を演出した。
12月5日には、神田駅東口のガード下2階建ての元居酒屋が、“馬肉専門”の立ち呑み処「馬(U-ma)」に変身、新規オープンした。福岡のシステム会社がカナダ産馬肉の輸入ルート構築に成功し、良質で安価な馬肉料理を提供するためのアンテナ店舗である。新鮮な馬刺しやユッケ、タルタルステーキ、馬刺しを乗せた握り寿司などをカジュアルに提供するために、あえて立ち飲みスタイルを取り入れた。オープン日に店を覗いたが、霜降りの馬刺しが450円で出てくるし、タルタルステーキや自家製のくん製は赤ワインに良く合う。神田のサラリーマンを元気づけるために“立って馬肉を食べるスタイル”を提案したというわけである。
水道橋には10月19日、“天串専門”の立ち飲み屋「水道橋スタンド ヒーロー」がオープンした。“串揚げ”ならぬ串に刺した天婦羅料理に特化した。ネタはわかさぎ、きす、帆立、つぶ貝、穴子などの魚をはじめ、おくら、谷中生姜、プチトマトなどの野菜も各種あり、1本80円から楽しめる。オーナーの井上勝司さん(31歳)は、和食、割烹などで修行し、上野「たすいち」で立ち飲みを学び、店舗デザインは渋谷「たすいち」をプロデュースした松澤喜久氏(松風堂)に依頼、レトロモダンのイメージを演出した。また、昼は「うどん」「そば」の店に変身、「たすいち」同様に“二毛作”業態となっている。いま、ビジネス街では立ち飲み屋の進化、専門店化が始まっていると言えるだろう。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、飲食店プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。





