編集長のつぶやき

【VOICE FROM EDITOR】2006-10-12

2007年の飲食トレンドを読むキーワード(1)

2007年の飲食トレンドを読むキーワード(1)

最近、「飲食トレンド」について取材を受けたり、ビジネストレンドをテーマとした講演の講師に呼ばれることが多い。この時期になると、業界人の関心は「来年は何が来るのか?」に集まるからだろう。

11月15日にも、テンポスパスターズ主催のセミナーで、「飲食店トレンドを読み抜く」というテーマで話をする。その講演レジュメの下書きとして、いま筆者が考えているトレンドについて少しまとめてみよう。キーワードとして頭の中を駆け巡っているのが次の四つ。「新ベタコテ」「地方活性化」「大人の社交場」「健美長寿」である。昨年の今頃、『月刊店舗』誌上で発表した「2006年の注目コンセプトと新業態」とベースはそれほど変わってはいないのだが、“キャラ立ち”とでも言うのか、大手、中小、個人に関わらず実に店が個性化してきたといえる。

まずは「新ベタコテ」。昨年は、「ベタおしゃれ市場」が活性化した。その主役になったのが恵比寿「buri」などの立ち飲みブームをはじめ、もつ鍋、関西系粉もの、鉄板焼き、スペインバル、和韓料理などである。今年に入って、これらの業態が進化、個性の極めて強い「キャラベタ」「キャラコテ」が現れてきた。とくに「火元料理、客前提供」の鍋と鉄板の進化は激しく、様々な業態が登場した。中目黒の「ハレノヒ」のコラーゲン鍋、とうがらし料理「赤ちり亭」などがブレイク、鉄板も「kirara風月」「銀もん」などが人気となったが、来年もこの“変わり鍋”“くずし鉄板”のブームは続くだろう。

それに炭火系でいえば「ホルモンは強し」である。恵比寿「焼肉チャンピョン」のスタイルで各部位を提供、モクモクした空間ですべてのホルモンを食べ尽くす“元気系”は根強い人気だ。新宿歌舞伎町に現れた「スタミナホルモン 東京はなけん」などはその典型だろう。さらに、急ブレイクしているのが「漁師料理」。発信源は門前仲町の「山憲」だが、トロ函や平ケース、大漁旗を店頭にディスプレイし、鮮魚をワイルドに七輪で炙って食べさせる店が増えている。また、このコラムでも紹介した茅場町「和光」の貝づくしの店も現れてきたようだ。最近オープンした神田「丸富水産」、乃木坂「魚真」などが参考になろう。

「地方活性化」については、すでに“マネーの虎”ことHYジャパンの安田久氏が仕掛けているが、おそらく2007年の最大のトレンドになるかもしれない。筆者は昨年来“新郷土料理”が新しいトレンドとして注目されると言い続けていたが、それが現実になり始めたわけだ。10月10日、銀座に相次いで地方発を売りにする飲食店がオープンした。一つは北海道の十勝産食材を提供する「お取り寄せダイニング 十勝屋」。経営は十勝毎日新聞社と北海道ホテルが共同出資した子会社のグリーンストーリー(北海道帯広市、代表取締役・林浩史氏)。

背景には大手商社系飲食支援会社や有名コンサルタントが関わっているらしいが、その力だろうか、200社近い申し込みがあったといわれるコリドー街の好立地に物件を取得、“情報発信基地”としては最高のスタートを切ったと言えるだろう。一方、モックが運営する「フードアパートメント日比谷」の7・8階には、石川県の郷土料理をコンセプトとする「金沢近江町市場 らくまつ」がオープンした。地元石川県の協力によって、地の物の食材仕入れルートを確保したという。

こうした「地方コンテンツの東京進出」が飲食の新しいビジネスモデルになりつつあるわけだが、懸念されるのは食材流通や観光化などビジネスに走るあまり飲食の本質(まず顧客ありき!)から外れてしまうことだ。通販、物流業者の仕掛け、サプライサイドの論理が勝ちすぎると、顧客心理は冷めてしまう。“地方発”を真剣に考えるならば、その地方の食材のみならず、歴史や伝統、習俗まで研究し、新しい文化として育てる覚悟がなければ長続きしないだろう。ジンギスカンのように、一時的にブームにはなっても、ニュージーランドの牧場の羊までが枯渇するような状況になると、本末転倒というしかあるまい。
(つづく)

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【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として取り上げられる。

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