編集長のつぶやき
飲食ビジネスへの新規参入ラッシュ

このところ、話題を呼んでいる新規オープンのレストランの中には、異業種からの新規参入のケースが増えている。かつてはIT業界やアパレル業界からの参入が多かったが、最近の特徴は音楽業界や広告業界からの進出である。
音楽業界ではavexが骨董通りにオープンしたラグジュアリーなレストラン「Alux(アリュックス)」に人気が集まっている。日本初のアルマーニのコスチュームや女優ケリー・チャンによる壁面デザインなど話題づくりには事欠かない。料理も「カメレオン」の萩原シェフを起用するなど、ツボを外していない。レストランを「集客装置」として捉えるならば、彼らの「観客動員力」は既存のレストランを凌ぐパワーがあると言わざる得ない。
9月には音楽業界に強い広告代理店、オゾンネットワークが「日本初のダンジネスクラブ・レストラン」に挑戦する。店名の「チャイニーズ・ロック」にあるように、大人が“ロック感覚”で気軽に遊べる食空間を創るのが狙い。飲食ビジネス参入にあたって、料理もオンリーワンを追究した結果、日本ではまだほとんど知られていないダンジネスクラブに目をつけた。逆にいえば、輸入ルートの問題や原価率を考えると、既存の飲食ビジネスの発想ではなかなか生み出せないアイデアである。それをやってしまう「ブレークスルー」の発想が面白い。
かつて「デザイナーズレストラン革命」が起きたときも、大手チェーン店を代表とする旧来の業界人は「客はデザインを食べにいくわけではない。内装にカネかけても仕方がない」と笑っていた。飲食業界が「食」だけでなくライフスタイルビジネスの領域に進化を遂げつつあることを見抜けなかったからだ。それと同じことが、今業界の水面下で起きているのかも知れない。既存の業界人が発想しえないようなニューコンテンツは音楽業界や広告業界など新規参入者たちからもたらされるのかも知れない。
言いかえれば「プロデューサーズレストラン革命」が起きつつあるのではないか。飲食ビジネスがクリエイティブになればなるほど、プロデューサー的な「演出力」が求められるからだ。大手チェーン店は今頃になって「デザイン」に目覚め内装をお洒落にしたりロゴを変えたりしている。あまりにもお粗末ではないか。ネクストスタンダードは「演出力」である。そのための「人材調達力」こそが今後の勝敗を決めるのではないだろうか。
もう一つ、新しい主役として見逃せないのはベンチャーキャピタルや飲食支援ビジネスモデルの台頭である。これらはまた次の機会に論じるとして、ベンチャーファンド業界でいま注目されているのが「三井ベンチャーズ」。運営会社は三井物産の子会社「MVC」だが、「ダズル」で勝負に出た話題の新川義弘さんのHugeに投資、同社の44.4%をもつ筆頭株主に躍り出た。リンク・ワンはこれによって連結対象会社から外れた。Hugeの役員には新たにカーディナスグループの創業者、中村文裕氏(ADエモーション代表取締役)が就任している。飲食ビジネスへの投資に積極的なVCといえば、ジャフコと日本アジア投資だが、新たに登場してきた三井ベンチャーズから目が離せない。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として取り上げられる。





