編集長のつぶやき
「ラゾーナ川崎プラザ」と「アーバンドックららぽーと豊洲」

9月28日の「ラゾーナ川崎プラザ」に続き、今日10月5日に豊洲に「アーバンドックららぽーと豊洲」がオープンする。2週連続の三井不動産によるニュータウン型巨大商業施設の開業である。
両方の施設内飲食ゾーンを歩いてみて、率直に感じたことを記そう。「ラゾーナ川崎プラザ」は駅と直結するだけあって、地域密着型の日常使いの業態と外からの客も狙った非日常志向のレストランがバランス良く配置されていた。“非日常”型が「南国酒家」とグレース六本木にも出店したルビーカフェグループ(株式会社フェアネスクリエーション)の「RISTORANTE RUBY Sopraffino」というのが少し物足りない。しかし、その代わりに“日常”でも“非日常”でも使える4階広場側に面したゲタ履きの飲食店群が面白い。
中央に向き合う形で並ぶスティルフーズの新業態「鉄板焼S」とダイヤモンドダイニングの新業態(新規出店は常に新業態だが)の「ベルギービール&カフェ Patrasche」が見所、行き所、旬の業態である。それらと両側に並ぶのが「柿安 三尺三寸箸」「Tasty Thai Dining ティーヌーン」「妻家房」「ろくまる 五元豚」「波照間」のオーガニックバイキング、タイ料理、韓国家庭料理、豚しゃぶ、沖縄料理のいまではお馴染みになった“トレンドアウト”(トレンドとして成長後半期にある業態=筆者命名)。できれば“トレンドイン”(成長前半期)の業態をもってきて欲しかった。
一方、「アーバンドックららぽーと豊洲」はどうか。はっきり言って、こちらは湾岸新住民(団塊ジュニア・ニューファミリー層)を狙ったコンセプトが明確だ。住友の晴海トリトンが“ノーキッズ”のDINKSを狙いすぎて外したのと対照的に、あるいはお台場のアクアシティ、デックス、ヴィーナスフォートなどの観光目当ての空洞化リスク(土日はいいが平日最悪)をヘッジしたかなり計算されたMDではないかと感じた。要は、“巨大な新ファミレス&新ファーストフード”の集積である。もちろん「キッザニア」に代表される、教育問題という現代の政治的社会的課題解決をディズニーランド的切り口で提案する“子供目線”のMDは言うに及ばす、すべてがエンタメ性を含んだ「新しいFR、FF」である。
そのコンセプトずばりの店がダイヤモンドダイニングの「ファミレスキャンディ」である。WDI出身の住谷栄之資氏が手がけた「キッザ二ア」の前にはWDIのババ・ガンプがあるのも分かりやすいが、マルハレストランプロデュースのフードコート「フードサーカス」は意外性があった。ただ環境と料理・サービスがマッチングできるのか見守りたい。明らかにクリエイトレストランツのベンチマーク店である。三井には出にくいクリエイツの岡本社長は苦虫を噛み潰しているに違いない。すかいらーくグループの新業態「グランブッフェハワイアンアイランド」は柿安の「八尺八寸箸」のハワイアン版、まさに進化したファミレスと言えないだろうか。ほかに、目を引いたのは豊田の「豊洲漁港 寿し常 市場内店」。今流行りの「魚屋スタイル」だが、これも質が伴っていない。でも、子供たちには新鮮な体験だろう。“新しい回転寿司”とでも言おうか。
その他、トレンドインの「鉄板ダイニング Kirara 風月」はワインや日本酒とのマッチングを提案しているし、グッドコックの「餃子の福包」、いま旬の「韓国スンドゥブ ポジャンマチャ」も面白い。ちょっとがっかりは際コーポレーションの2店舗。すでに最新の商業施設に出店すべき業態開発テーマがあると言えるのだろうか。いずれにしても、川崎、豊洲のライフスタイル提案型開発の三井不動産に対して、来年ラッシュを迎える三菱地所がラグジュアリースタイル提案型開発でどう対抗するのか、この巨頭の戦いも見ものである。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として取り上げられる。




