編集長のつぶやき

【VOICE FROM EDITOR】2006-08-24

映画「UDON」公開に想う

映画「UDON」公開に想う

今週26日から讃岐うどんをテーマにした映画「UDON」が公開される。讃岐人、しかも「香川WEST」生まれの筆者としては、放ってはおけない話題だ。とはいえ、レストランマーケットではもはや讃岐うどんブームは過去のもの。「再ブーム来たる?」……そんなに甘くないのが飲食業界である。

ブームとは恐いものである。『恐るべきさぬきうどん』(田尾和俊著)という香川発の本からヒットに火がついた讃岐うどんブーム。瞬く間に東京マーケットを席巻し、「はなまるうどん」を代表とするセルフサービスFF業態まで産み落としたものの、ブームが去ってみれば撤退・廃業の山である。生き残ったのは資本力のある一部のFCチェーン(M&Aのおかげだが)や特徴のある個店たちである。人気コンテンツとされている「製麺所系」にしても、決して地に足がついた業態とはいえない。

そんなときに映画「UDON」の公開である。麺通団を創設した田尾氏の遊び心と地元出身の本広克行監督の思い入れが映画化の動機だと聞くが、讃岐うどんが地元ではどんな存在であるかということを知る材料としては参考になるのではないか。讃岐うどん店(うどんや)は地元では「食堂」であり「カフェ」であり「キッチン」ある。“うどん職人”だけがつくるものではなく、そこかしこの“おばちゃん”“おっちゃん”がそれぞれ自分の味をもっている。香川最西端の海の近くで育った筆者にとっては「いりこ出汁のきいたかけうどん。具は薄焼き卵、なると(いまはほとんど無いが)、三角の小さな油揚げの3点セット」がうどんであり、ぶっかけや釜玉などは他所のうどんである。

話が横道にそれたが、讃岐うどんに限らず、郷土料理やご当地料理はいまもの凄い勢いで東京マーケットに結集し、新業態開発やメニュー開発の重要なテーマにもなっている。しかし、恐いのはブームが来たときだ。そこで浮き足立って流行を追うと怪我をしかねない。実は昨日も「ジンギスカン」を開業したものの、拡大を急いだあまり窮地に陥ってしまった経営者と話をした。

ジンギスカンにも北海道スタイルをそのまま持ち込んだ「北海道ジンギスカン」と肉の仕入れや調理スタイルを東京人に合わせた「東京ジンギスカン」に分かれる。そのどちらかに特化し、コンセプトとターゲットを明確にする必要がある。スタートはマイナーコンテンツである。マスに広げていくためには緻密な戦術が必要だ。時間をかけて「小さく生んで大きく育てる」我慢も要る。それを極め「スタイルを確立できた店」が生き残る。それにしても「恐るべきはブーム」である。

【筆者プロフィール】

(佐藤  こうぞう)
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として取り上げられる。

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