編集長のつぶやき

【VOICE FROM EDITOR】2006-01-25

芸能界、スポーツ界はなぜ飲食を目指すか

芸能界、スポーツ界はなぜ飲食を目指すか

ここにきて、あきらかにスポーツ界や芸能界で活躍しているタレントたちが飲食店を始めるケースが増えている。

その成功例の一つといえるのが、現在「チャンコダイニング若」を10店舗、焼肉「66亭(ロクロクてい)」1店舗を展開する元横綱の花田勝氏である。2003年に六本木に初出店、出だしのペースはきわめてゆっくりとしたものだった。周辺からは「若さんはさすがに余裕があるなぁ」と見られていた。目だった宣伝広告も打たず、取材もほとんど受けなかった。それは、「ちゃんこ鍋をダイニングスタイルで提供する」という業態がともすると気を衒ったと見られかねないし、宣伝して話題になったとしても一時的な流行に終わりかねないと考え、会社側としては口コミを中心にじっくりと育てていく手段を選んだのだのだろう。

結果としては、新宿店のオープンと相前後して巻き起こった「若貴騒動」の報道が、「若」を運営するドリームアークという会社の存在を世間に喧伝し、一躍全国的にこの店が有名になってしまったのである。タレントと飲食店。タレントが話題になれば、飲食店にもそれが波及し、店側が望むのとは別の角度からスポットライトを浴びることになる。今回の「若」への話題集中は幸いにも、「へえ、そんな新しいちゃんこのスタイルがあったの?行ってみたいな」「ぜひフランチャイジーになりたい」といった前向きな反響を呼ぶことができたといえよう。それも六本木店をじっくり仕上げ、業態の完成度を高めていたからプラスに作用したのである。「若」は10月7日の大宮店が10店舗目、年内にあと1店舗出店し、今後2年間で25店舗の展開を計画している。花田氏も企画に関わり、オープンにかぎらず小まめに店に顔を出というから、もう立派な飲食店企業のオーナーである。

他では、まだ個店レベルだが、北海道出身の極楽とんぼの加藤浩次氏が中目黒にジンギスカン「ふじや」を出店して、まずまず繁盛している。彼もよく店に顔を出しているようだ。青山のラ・ポルト地下1階には現役プロゴルファー、片山晋吾氏プロデュースのスポーツカフェ「BIGSEA45」がある。石焼カレーが名物となっており、秘密の扉を開けるとYIPルームのあるユニークな店舗が話題になっている。六本木には夏木マリがプロデュースしたうどん店「つるとんたん」がある。開店当初ぎこちなかったオペレーションもレベルアップし、11月11日には丸の内「東京ビル」に東京2号店を出店する。近く、天現寺には関西芸人の大物、島田紳助氏がお好み焼き店を出す予定だ。

なぜ、このようなタレントプロデュースの店が急増しているのか。それは彼らが自ら様々な店を食べ歩き、「自分ならこんな店を出す」といったクリエーター的視点で飲食店をとらえるようになったからだろう。それだけ、最近の飲食店がアパレルやITベンチャー、さらに不動産ファンドなどの「アウトサイダーたち」の手によって創造的変化を遂げ、まるで映画や音楽、舞台づくりとおなじような魅力的な分野になってきているということでもある。そして、神宮前で「アスリートカフェ」を経営するスカンヂナビアがビジネスモデルとしているような「アスリートたちのリタイア後のビジネス」としての位置づけもある。38歳のキングKAZUが4回目の海外遠征に出るが、美談の裏には旬を過ぎたアスリートたちの痛々しい現実がある。アスリートの第二の人生として飲食店経営へ進む人たちが増えてくるのは間違いあるまい。

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