編集長のつぶやき
“新宿三丁目戦争”を仕掛けたDDの野心

6月14日の地下鉄副都心線開通を控えて盛り上がる“新宿三丁目”エリア。ディープな飲食店が並ぶその中心の末広通りに、ダイヤモンドダイニング(DD)60店舗目が5月29日オープン。“三丁目戦争”が勃発した。
5月15日に品川駅港南口の飲食店街中心地1階に鉄板焼ビアホール「タイムシャワー ブリュワリー」をオープン、「大爆発しています!」(松村社長)と絶好調のDDが、今度は飲食業界の曲者たちが型破りの店を出してけんを競うディープなエリア“新宿三丁目”に殴りこんできた。場所は、“立飲みの聖地”といわれる「日本再生酒場」(9坪で月商1,500万円を売り上げる)、このエリアで7店舗展開しているワルツのワインバー「マルゴー」などがある末広通り。いまだ健在の寄席「末広亭」があることから通りの名がついた。出版社や新聞社などのマスコミ関係者がよく利用するエリアだ。
今回の店は“炉端バル”「野生の風」。地下の店だが、店内中央の炭場を囲んだロの字型のカウンターが印象的。炉端焼き料理のほか、珍しいダッチオーブンも登場、ドリンクは全国から集めた30種類の国産クラフトビール、安田久さんもびっくりの“47都道府県果実酒”、飲み口に塩を乗せたレモンサワーなど、マニアックなラインナップ。「三丁目に集まるディープな客を楽しませるには、マニアックな手法で」というわけか。200坪の立川や上野の大箱では既存の大手チェーンと真っ向から斬り結び、ここ30坪もない小さな穴倉のような箱では既存の地場飲食店とマニアックな戦いをする、その機動力、フレキシビリティーがいまのDDの真骨頂だろう。まるで戦いを楽しんでいるかのようだ。
この三丁目エリアは、業界では「チェーン店が出てきても失敗する」といわれてきた。しかし、最近異変が起きつつある。物件が少ないために家賃は高騰。物件が出ても出店できるのは体力のある大手ということになる。地元不動産関係者は「大手は入れたくない。この街の雰囲気が壊れるから」と頑張ってきたが、昨年出た1階物件にはハブの「82ALEHOUSE」が入った。そして、今年3月には大手牛丼チェーン店出身者が手掛けた浜焼き居酒屋「丸港水産」が堂々オープン。ネオサポートの浜倉好宣さんの創った「丸冨水産」の“そっくりさん”である。オリジナリティにこだわる編集者やライターが集まるこの三丁目で、「これはないんじゃない」といわれている店。「82ALEHOUSE」「丸港水産」も一見客が入っているようだが、これまでの三丁目の客層とは明らかに違う。「丸港水産」の呼び込みもこの街にはそぐわない光景だ。
つまり、いま新宿三丁目で何が起きているかというと、地下鉄新駅開通で来街客の増加を見込んだチェーン店系企業が参入、既存の地場系飲食店の聖地に殴り込みを掛けているという図式である。地場系も元気で、ワルツのワインバーやイタリアンも毎日満席を続け、再生酒場は夕暮れから終電近くまで店先に客がたむろしている。居酒屋の「呑者家」は2月に3店舗目となる立飲み「ありがとう」を出した。こうした地場対チェーン店の戦いに、“ニューチェーン”の旗手として頭角を現した“黒船”DDが参戦、果たしてこの“三丁目戦争”の行方やいかに?
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【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件(元社員の手記)」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。





