編集長のつぶやき
「なかめのてっぺん」と“飲食第3世代”

「てっぺん」元副社長の内山正宏さんが久々に店に立つというので、連休の谷間、彼の経営する「なかめのてっぺん」を覗いてきた。
「なかめのてっぺん」は昨年9月9日にオープンしてから順調に来ているようで、地元の常連客や同業者、業界関係者が通う店として定着している。内山さんはこの店を店長の平野敬さんに委ね、自らは京都でプロデュースし運営を任されてる「むげん」(烏丸店、寺町店)のほうに打ち込んでいる。そして京都への引越しも決まり、けじめとして5月1日と2日、感謝の気持ちを込めて自らお客さんをもてなしたいとカウンターに立ったのだろう。その心根がわかったので、私は迷わず予約を入れた。もちろんカウンター席を指定させてもらった。
私がカウンターに座るなり、内山氏は「久々で緊張しますね」と声をかけてきた。炭を扱う手さばきが職人然としている。黙々と仕事をしながらも、視線は客席の先々に注がれる。2004年1月、私がプロモーションを担当した自由ヶ丘「てっぺん」(1号店)を大嶋啓介氏とともに立ち上げ、成功に導いた。その後の「てっぺん」と大嶋氏は私の期待する方向とはまったく別の道を進んだ。店の現場に立ち、食材を選び、料理をつくる。目の前で客と接する。その原点に立ち返り、誰よりも早く独立したのが他ならぬ内山さんだった。
今年に入って、内山さんは「幸せの力カンパニー」という会社を設立。法人化を機に店舗展開も視野に入れ、京都を拠点に「むげん」運営と東京2号店出店に向けて動き出した。大嶋氏とは「お互い株式を10%ずつ持ち合って協力していこうということになっています」とのことだが、内山氏の元には京都、東京あわせて20名近い社員が集まった。さらに彼の周りには、30歳前後の若手経営者たちも集まっている。現場主義、調理技術、モチベーションよりもマネジメントとしての朝礼、本質を忘れない接客など、“内山イズム”を慕って人が集まるのだ。
私が「なかめのてっぺん」を訪ねたとき、カウンターの隣の席には、ロードサイドでステーキ&ハンバーグ店を展開するエムグラントフードサービスの井戸実社長(29歳)と千葉で居酒屋を展開する一家ダイニングプロジェクトの武長太郎社長(30歳)がいた。二人とも私と同じ動機で内山さんがカウンターに立つ姿を見に来ていた。この二人、5月10日にフードリンクの“セミナー祭り”で講演するという。このセミナーでゼットン・稲本健一社長と対談するダイヤモンドダイニング社長の松村厚久さんは、最近会うと必ず私にこう聞く。「次の世代の経営者で注目しているのは誰ですか?」。
私は、稲本さんやここ急成長をとげた松村さんたちの40代前後の世代を“飲食第2世代”と呼んでいる。“第1世代”は言うまでもなくグローバルダイニングの長谷川耕造さんや際コーポレーションの中島武さんたち。このつぶやきでもかつて私は「“第3世代”のリーダーたちの顔がまだ見えない」と書いたが、そろそろおぼろげながら姿を現しはじめたのかもしれない。内山さん(33歳)や彼の周辺にいる30歳前後の若手たちがその一つの塊になる日が来るのだろうか。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。




