編集長のつぶやき
“二人の業界デビュー”と「伝説への扉」

東京ミッドタウン開業に話題が集中しているが、その膝元の街場で二人の飲食人が“業界デビュー”している。その現場に立ち会った。
一人は、大阪の未知インターナショナルを率いる水本弥知秀さん。4月10日、六本木ヒルズからすぐの西麻布3丁目に“和田アキ子の店”「お菜屋 わだ家」をオープンする(一般オープン11日)。経営は和田さんが関係する製作会社だが、物件探しからコンセプト作り、メニュー開発、キャスティング、オープン後の運営まですべてプロデュースした。昨日、水本さんにオープン前の「わだ家」でお会いし取材した。詳しくはヘッドラインを参照していただきたいが、単なるタレントの店ではない。和田さん側から「飲食店をやりたい」と企画を持ち込まれたのは1年半前。ようやく和田さん誕生日の4月10日オープンに漕ぎ着けた。
和田さん当人もメニューから器、空間、音楽、トイレまですべてに細かくこだわったという。「とにかくみんなに喜んでもらう、楽しんでもらうと気持ちすごく強く、料理は一品1,000円を超えてはいけないとか、トイレは1回ごとに掃除しなさいとか、細かいチェックが入りました」。あの“アキ子節”がお客さん代表の視点でビシバシと飛んでくるのだ。それを現場に落とし込み、しかもこの業態をパッケージ化し、FC展開しようという試みである。タレントを冠した店舗展開で成功している例としては、「ちゃんこダイニング若」「つるとんたん」などがあるが、それに続くヒットとなるかどうか。大きな話題を呼ぶことは間違いない。
もう一人は、まさにミッドタウンのすぐ近くでワインの店「BANQUE(バンク)」をオープンした横川毅さん(【INTERVIEW】参照)。「ぼちぼち」「紅とん」などを傘下に収め拡大一途のヴィア・ホールディングス社長の横川紀夫氏(すかいらーく創業4兄弟の4男)の次男である。兄は「ディーン&デルーカ」立ち上げにも関わり、家具・雑貨ショップを展開しているジョージズ・ファニチュアの横川正紀社長である。すかいらーく創業家のファミリーは社是ですかいらーくには入れない。しかし、フードビジネス創業者のDNAは毅氏の中に強く存在する。「美味しい物、本物をゆっくりと味わい、楽しんでいただく。それがフードサービスの原点です。私はそのことに徹底してこだわりたい。それを分かっていただけるお客さんに通ってもらいたい」と熱く語る口調が印象的だった。
水本さんは30代後半、横川さんはまだ30代前半。こうした若い世代の新しい才能が、閉塞した飲食業界に風穴を開けるかも知れない。そういえば、飲食業界マッチングサイトを運営するアクシュネット(代表・島田明彦氏)が、“飲食店チャレンジャー発掘企画”として「伝説への扉」を打ち上げる。企画の合格者には最大1億円を投資するという。中島武さん、西川りゅうじんさんに加えて、最近業界で“M&A旋風”を巻き起こしているユニマットグループでレストラン事業を統括する業態開発と事業再生のプロフェッショナル、ユニマットキャラバン取締役の金井伸作さんが発起人をつとめる。筆者が2000年、『アリガット』を創刊したときのブレーンが中島さん、西川さんだった。“時代は回る”というが、また業界が新たなステージに入ったということか。「伝説への扉」がその舞台回しの役割の一端を担うことができるかどうか…。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。





