編集長のつぶやき
「バブルへGO!!」と「大衆グルメ社会」

「バブル時代」をテーマにした映画「バブルへGO!!」が封切られ、人気を集めているという。あの時代の“残り火”がいまなぜか甦り始めた。
「外食」の本質は“エピキュリアニズム=快楽至上主義”である。かつて、日本にもその快楽主義が解放された時代があった。それが「バブル期」1986〜91年のわずか5年間である。その時代にタイムスリップし、思いっきり当時のバブルライフを懐古させてくれる映画「バブルでGO!!」が話題になっている。筆者もその時代、“サラリーマン編集者”としてピーク・パラダイスを謳歌した。その後のジェットコースターの急降下のような“バブル崩壊”も体験した。
映画配給のフジテレビの思惑はわからないが、製作がバブル時代にキーマン集団の一つだった「ホイチョイ・プロダクションズ」というのは、当時もそうだったように、かなり綿密な“流行マーケティング”分析に基づいたカルチャー発信の仕掛けなのだろう。景気回復の最後の“寄る辺”は「バブルの残り火」に油を注ぐことしかないという深慮遠謀であろう。それが“隠された国策”であることを暴露している。格差社会への傾斜を正当化する文脈さえ感じる。
バブル時代、外食といえば、「鉄人」「イタ飯」「ディスコ」「ディープブルー」。ホイチョイが著した『東京いい店やれる店』はベストセラーになった。20年を経て、いまや「グルメ大衆社会」である。ネットで検索すれば、食べたいもの、行きたい店が溢れている。「いい店やれる店」も巷に氾濫している。こうした“大衆化”したグルメ社会はもう飽き飽き。「バブルへGO!!」は、それと一線を画す“再バブル”を求める新富裕層の心理を、果たしてくすぐることができるのだろうか。あのバブルは、私には「巨大なテーマパーク」でしかないと思えるのだが…。
【筆者プロフィール】
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』編集者を経て独立。1997年の金融不祥事発覚の突破口となった「野村證券総会屋利益供与事件」をスクープした『月刊BOSS』(編集長代理)など、数々の雑誌創刊に関わった後、2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長をつとめる。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2002年10月、フジTVと提携し『MENUマガジン』を創刊、vol.3までエディトラルアドバイザー。2004年1月より「週刊フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、レストラン・フードビジネス専門のプロデュース&プロモーション会社の有限会社カシェットを運営。2004年 10月から日刊紙の「フジサンケイビジネスアイ」日曜版で「行列 のできる店 仕掛人」シリーズ連載執筆。その他、日本ショッピングセンター協会、東京商工会議所渋谷支部で「商業施設における魅力ある飲食テナント誘致」等のテーマで講演。『月刊店舗』2005年8月号から06年1月号まで「食トレンドの先読み術」連載。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で“隠れ家レストランの仕掛け人”として、プロデュースした神楽坂「art et vin HAP(アール・エ・ヴァン ハプ)」が取り上げられる。日本で初めて「レストランビジネス・ジャーナリズム」分野の開拓を目指す傍ら、飲食店プロデューサーとして「レストラントレンド」をテーマに講演・執筆を重ねている。




